サンリオとNTT東日本は、「ハローキティロボット」を8月18日から法人向けに販売開始すると発表しました。NTT東日本の音声認識・合成機能「ロボコネクト」に対応し、ハローキティの声で自然に発話します。関係者は「プレゼン、各種案内などに活用してもらえたら」とアピールしています。

  • 「ハローキティロボット」を抱えてガッツポーズを見せるハローキティ(中央)。左がサンリオ 執行役員 ライセンス営業本部 統括部長の門本洋一郎氏、右が東日本電信電話(NTT東日本) ビジネス開発本部 第三部門 部門長の増澤俊也氏

あのハローキティが「自然に対話できるロボット」に!

ハローキティロボットは、高さ約33cm、横幅約15cm、重さ約1,190gというサイズ感。人と同じように身振り手振りで双方向コミュニケーションができるのが特徴です。リース契約、契約期間5年の場合の月額料金は75,900円から。提供エリアは日本全国です。

  • リボンにマイク、右目にカメラ、台座に人感センサーを搭載。首、肩、胴体を動かしながらしゃべる。背面にはUSB端子や電源端子などを搭載(写真は開発中のもの)

想定される利用シーンは、プレゼンテーション、各種案内(施設案内、観光案内など)、AI検温、オフィスの受付、介護向け・子ども向けレクリエーション、プログラミング学習など。利用シーンに合わせて、企業側でカスタマイズできるのが強みです。報道関係者向けの発表会では、ハローキティちゃんがみずからアンベールを行ったあと、各種デモンストレーションが披露されました。

  • ホテルの受付をイメージしたデモ展示

  • ハローキティロボットの6つの機能。子ども向けのレクリエーションや、プログラミング学習への活用も見込む

実機を目にして、とても親しみやすいロボットであると感じました。あのキティちゃんが、あのキティちゃんの声でこちらの質問に回答してくれている――。筆者でさえそう感じたのですから、キティラー(ハローキティの愛好者)にとってはロボットに接する心理的なハードルが相当下がるのではないか、と思った次第です。

どうしゃべる? 「ハローキティロボット」デモ体験の様子

一番のポイントはキティちゃんの「声」

新製品発表会に登壇したサンリオの門本洋一郎氏は、同社ではソーシャルコミュニケーションビジネスを60年間続けてきた、としたうえで「これからの時代、コミュニケーションツールはよりエンタメ性の高いものが求められる。それは何か、考えたところロボットという結論になった。そこで本格的にロボットをやるにはどうしたら良いか、模索しました。そして2021年、NTT東日本のSota(ソータ)を知ったんです」と経緯を説明。サンリオから働きかけて、今回のコラボが実現したことを明かしました。

「ハローキティロボットのイチバンのポイントは声にあると思います。ロボットというと無機質なイメージがありますが、ハローキティロボットは声を忠実に再現できている。聞き慣れた声が出てくるので、皆さんを笑顔にする、和ませる効果があると感じています」(門本氏)。

  • 新製品発表会では、サンリオの門本氏(左)とNTT東日本の増澤氏(右)が、ハローキティロボットの特徴を説明した

  • 左がハローキティロボット、右がNTT東日本のコミュニケーションロボット「Sota」(ソータ)

NTT東日本の増澤俊也氏は、ハローキティロボットが搭載する3つの特徴を説明しました。ひとつめは「声」。NTTグループのAI関連技術「corevo」のひとつであるAI音声合成技術を用いており、まるで人間の声のような自然な音声を実現、さらに場面や文言に応じた感情表現にも対応している、とアピールします。少量の音声データから再現性の高い音声合成を作成できる、というのも大きなメリット。従来なら数日は要していた収録時間が、たった2時間に短縮できたというから驚きです。

  • 特徴のひとつがハローキティの「声」。NTTのAI音声合成技術を活かし、忠実に再現した

また、ハローキティロボットはユーザー(契約した法人)が発話内容、対話シナリオを自由にカスタマイズ可能な設計を採用。従来型の、収録済みの音声で決められたセリフしか話せなかったロボットとは大きな違いです。

  • ハローキティロボットの発話内容や対話シナリオは自由にカスタマイズできる

そしてハローキティロボットでは、人との会話で得た情報を蓄積、内容をスタッフが分析する(適宜、コンテンツを追加する)ことで、利便性を向上していけると説明します。あらかじめロボットが用意している対話シナリオは数が限られていますが、アップデートすることで、より現場のニーズに即した会話が可能になるわけです。実際、Sotaはサービス開始時に対話シナリオを5,000用意していましたが、アップデートを繰り返した結果、現在は15,000まで拡充できたといいます。

増澤氏は最後に「サンリオと一緒になり、お客様に新しい体験価値を提供していきたい」と結びました。

  • 人との会話で得た情報を蓄積し、分析してニーズに合ったコンテンツを追加することで「進化」する

プログラミング教育への抵抗もなくなる?

発表会では、サンリオの門本氏とNTT東日本の増澤氏が報道陣の質問に応じました。

Sotaとハローキティロボットの棲み分けについて聞かれた増澤氏は、「キティちゃんは、あらゆる世代に圧倒的な認知度があり、愛されています。私たちもSotaを活用して受付業務、介護施設におけるレクリエーションの補助、プログラミング学習の支援などをしてきましたが、キティちゃんとご一緒することで、よりファンが広がることを期待しています」と回答。

なおプログラミング教育に関しては東京都品川区、北海道旭川市が積極的だとしたうえで「ロボットを使うと、子どもの反応がすごく良いんです。Sotaはデザイン的に男の子キャラですが、今後、ハローキティロボットを使えば女の子にも受けが良く、プログラミング学習にも抵抗なく入っていけるのではないでしょうか」と説明しました。

  • ハローキティロボットとSotaの背面。どちらも本体下部の基板はほぼ共通のものを用いているとのこと

ちなみに少量の音声データから再現性の高い音声合成を作成できる、という特徴については前述の通り。増澤氏は、Sotaではその特徴を充分に活かしきれていなかった、としたうえで「(オリジナリティのある声を持つ)ハローキティとコラボすることで、初めて技術力の高さを皆さんにお示しできる」と嬉しそうに話していました。

販売台数の目標について、サンリオの門本氏は「初年度100台を目標にしていきます」と答えました。また、個人向けに販売する可能性については「これから高齢化社会を迎えるにあたり、家庭に1台、癒やし系ロボットの需要もあるのでは。そうなると、料金体系も考えていく必要があるかと思います。ぜひ、そんなタイプのロボットも開発していければ」と前向きな回答でした。

ハローキティロボットの対応言語は、現時点では日本語のみですが、海外でもハローキティには人気があり、門本氏は「対応言語は増やしていければ良いかなと考えています」とコメントしました。