IT管理ソリューションを提供するドイツのLansweeperが興味深いレポートを発表した。Lansweeper製品の顧客組織が利用している約1,000万台のWindows PCを対象にした調査によれば、Windows 11の採用率はわずか1.44%だった。

下図はレポートから抜粋したものだが、Windows 10が80.34%と圧倒的。Windows 11の採用率は、サポートが終了したWindows XPの1.71%や、Windows 7の4.70%を下回る。Lansweeperは「Windows 7のような古いOSは、バグフィックスやセキュリティパッチ、新機能が提供されないため、サイバーセキュリティの危険性があり、個人・企業を問わず、あらゆるユーザーがマルウェアの攻撃を受けやすくなる」(Esben Dochy氏)と警鐘を鳴らしている。

  • LansweeperのOSシェアレポート

筆者もDochy氏の意見と同様だ。LansweeperはWindows 11への移行が進まない理由の一つが、Windows 11の厳しいシステム要件にあると見ている。ご存じの読者諸氏も多いと思うが、Windows 11は特定世代以降のCPUやTPM(トラステッドプラットフォームモジュール)2.0、セキュアブートへの対応が求められる。このシステム要件を満たしているWindows PCは、約6万組織が利用する約3,000万台中の44.4%。残りは対象外だ。TPM 2.0の有無を見ると52.55%が要件を満たし、28.19%はTPM 1.4未満か無効になっているという。

  • Windows 11のアップグレード要件合格率

さらにLansweeperはTPM 2.0に焦点を当て、物理PCと仮想PCの差異もつまびらかにした。VMwareやHyper-Vは、TPMを仮想化して仮想PCに利用させるTPMパススルー(vTPM)機能を備えているが、vTPMを有効にした仮想PCはわずか0.23%。おそらくWindows 10以前のOSが仮想PC上で稼動しているのだろう。

  • 物理PCおよび仮想PCのTPM有効化状態

Lansweeperのレポートは、あくまでも一企業の調査結果であり、個人・法人を含めたPC市場のシェアと同等とはいいがたい。だが、同種のレポートは米Riverbed Technologyも発表している。こちらは法人企業に限定した調査結果だが、「現在使用中しているデバイスの3分の1以上が、Windows 11へのアップグレード準備ができていない。23%はWindows 11にアップグレード可能だが、12%はTPM 2.0が主な理由で不可能である」と報告した。ここでも課題になるのはWindows 11のシステム要件である。

  • 古いCPUではWindows 11アップグレードのシステム要件を満たせない

Windows 7やWindows 8.1からWindows 10への移行が比較的スムーズに進んだのは、無償アップグレード施策もさることながら、利用中のPCがシステム要件を満たしていたからだろう。セキュリティ強化を実現するための厳しいシステム要件を施すのは、今後も続くであろうコロナ禍や普及しつつあるリモートワークを踏まえると必要なのは確か。その点においてMicrosoftの判断は正しい。だが、その結果としてWindows 11への移行を阻む要因になっているのは皮肉だ。