NECパーソナルコンピュータ(以下、NECPC)の「LAVIE NEXTREME Carbon」(以下、NEXTREME Carbon)第1弾として登場したのは、14型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルの14型ノートPCだ。

LAVIEのノートPCで処理能力と携帯性を重視したラインナップとして、「LAVIE Pro Mobile」シリーズを引き継ぎ2月1日に発表された。

  • LAVIE NEXTREME Carbonの最上位モデルとなるXC950/DAG

    LAVIE NEXTREME Carbonの最上位モデルとなるXC950/DAG

NEXTREME Carbonは、搭載するCPUとシステムメモリ容量の違いで上位構成と下位構成に分かれ、さらに、上位構成はSIMスロットの有無で2モデルに分かれる。

今回は最上構成となる「XC950/DAG」を評価する。NECPCのニュースリリースでNEXTREME Carbonの店頭予想価格は23,0780円からとなっているが、XC950/DAGの店頭価格は3月9日の時点で251,780円前後が大勢だ。

「ふわっと」軽い印象の14型ノートPC

NECPCはNEXTREME Carbonの特徴として、「13.3型ディスプレイ搭載ノートPCに相当するサイズの小型軽量ボディに14型ディスプレイを搭載」「カーボン素材を採用したボディの堅牢性」を訴求している。

NEXTREME CarbonのボディサイズはW313×D218×H17.5mmで、これは、13.3型ディスプレイを搭載するモバイルノートPCLAVIE Pro MobileのW307.2×D216×H16.7mmからW4.8×D2×H0.8mmの増加にとどまっている。

また、本体の重さを、XC950/DAGと同様にnanoSIMスロットを備えるNECPCの13.3型モバイルPC「PM950/BAL」と比較すると、XC950/DAGが約937g、PM950/BALが約972gと35g軽くなった。

  • 評価用機材の重さは実測で910gだった

  • 底面前端両端をこのようにカットすることで見た目の薄さを演出している

NEXTREME Carbonはボディカラーが明るいペールゴールドということもあって、数値としてのボディサイズは確かに13.3型ディスプレイ搭載ノートPCと同等程度に収まっているが、単体で机に置いてあると、数値以上に膨張して見える。

にもかかわらず本体の重さは1キロを切るほど軽いので、NEXTREME Carbonを持ち上げると感覚が“バグって”ふわっと空気のように軽く感じてしまうから面白い(持ち上げるときに“見た目のサイズ感”から必要以上に力を入れてしまうからだろう)。

  • ボディカラーが明るいペールゴールド

正直に告白すると、持ち上げたときにふわりと感じるぐらいに軽いNEXTREME Carbonだけに、手にした第一印象では華奢で丁寧に扱わないと壊れてしまいそうな先入観があったのは事実だ。実際、ボディのディスプレイ側で隅をつかむと他の薄型ノートPCと同様、グニグニとゆがむ。しかし、キーボード側のボディは剛性もあってたわみことはない。

NECPCでは、ボディに“人工衛星やF1マシンにも使われている最高品質の炭素繊維をベースに新規開発”した素材の採用に加えて、工場出荷時に米国防総省調達基準で定めたMIL-STD-810Hに準拠した試験や、メーカー独自に耐衝撃性能試験、対加圧試験の実施を訴求する。

常に持ち出して使うデバイス、特にNEXTREME Carbonのように軽量薄型なデバイスは、どうしても扱いが雑になってしまいがちだ。

そういう条件でも安心して使うために、客観的数値で堅牢性を表現できるMIL-STD-810H準拠という指標は安心感を与えてくれる(とはいいつつ、NECPCに限らずPCメーカー側は必ず「動作を保証するものではありません」という文言を付け加えてくるが)。

eSIMとSIMスロット搭載、直販は5Gモデルも

搭載インタフェースでは、LAVIE ProMobileで載せていなかったThunderbolt 4(USB4 Gen3 Type-C)を2基備えた。データ転送速度は最大40GbpsでDisplayPort出力機能に対応する。このほか、USB 3.2 Gen2 Type-AにHDMI出力端子、ヘッドフォンマイクコンボジャック、microSDメモリーカードスロットを載せている。

加えて、今回評価したXC950/DAGではnanoSIMスロットを用意して4G LTEによるデータ通信も利用できる。4G LTEデータ通信ではeSIMにも対応している(ただし、NECPCでは、eSIMの契約にあたってXC950/DAGで利用できるか購入前に各通信事業者に確認することを求めている)。

無線LANではIEEE802.11axまでカバーするWi-Fi 6とBluetooth Ver.5が利用できる。Thunderbolt 4によるDisplayPort出力や本体搭載のHDMI出力、そして、4G LTEによるデータ通信が利用できるなど、搭載インタフェースは充実しているといえる。なお、NEC Dircet直販のカスタマイズモデルでは5G対応モデルも用意している。

  • 左側面にはThunderbolt 4(USB 4.0 Type-C)が2基にmicroSDスロットを備える

  • 右側面ではヘッドホン&マイク端子にUSB 3.2 Type-A、HDMI出力を用意する

  • 正面。ディスプレイ側ユニット前面に見えるのは全周対応の内蔵ステレオマイク

  • 背面には排気スリットの左わきにnanoSIMスロットが確認できる

  • nanoSIMを引き出したところ。XC950/DAGはeSIMにも対応する

  • NEXTREMEはLAVIEノートPCの最上位ブランドとして新たに登場した

  • ディスプレイは180度まで開ける

  • 背面にクーラーユニットの排出スリットを設けているが、ディスプレイを開くとこのようにディスプレイ面を熱気が上がっていく形状になっている

  • 底面のスリットはクーラーの給気用だ。排気スリットとディスプレイで仕切られているので常に冷えた外気を取り込めて冷却効率を維持できる

より高画質な映像でビデオ会議に出られる

最近のノートPCではオンライン会議に向けた機能も重要になってきた。NEXTREME Carbonの本体搭載Webカメラは有効画素約200万画素で1080pに対応する。LAVIE Pro Mobileでは有効画素92万画素の720pまでだったので、より高精細な映像でビデオ会議に臨めるようになった。

音響周りでは、従来のLAVIE Pro Mobileと同様に「ミーティング機能」や「ノイズサプレッサー」、そして「ルームエコー抑制」を継承した。ミーティング機能ではスピーカー再生音量を相手の環境を問わずに均一にそろえるとともに、スピーカーの再生音を単独、周囲にいるグループ全体、ヘッドホンとこちらの状況に合わせて最適化できる。

ノイズサプレッサーは、周囲の雑音を、ルームエコー抑制では残響音をそれぞれ抑えて相手の音声を聞き取りやすくする。

  • 1080pに対応したWebカメラ(カバーが開いた状態)。ディスプレイ上側面にはステレオマイクが見える

  • ハードウェアカバーも備えるが色が目立たないのでついうっかりカバーをかけたままということも起こりやすい(カバーを閉じた状態)

安定した打ち心地のリフトアップ機構が◎

キーボードは、キーピッチが約19.4ミリ(キートップサイズは実測で15ミリ)、キーストロークが約1.5ミリを、それぞれ確保している。他のLAVIEラインナップと同様にNEXTREME Carbonもリフトアップ機構を備えており、ディスプレイを90度以上開くとキーボード側本体奥が浮き上がって実測で2.5度の傾斜がかかってキーボードがタイプしやすくなる。

リフトアップ機構でキーボード側本体を浮かせるノートPCでありがちなのが「キーボードをタイプすると打鍵音が響いてうるさい」という症状だが、NEXTREME Carbonはキーボード側本体の剛性が十分なおかげで打鍵音が抑えられている。タイプした指の力もしっかりと、それでいてソフトに支えてくれるのでタイプして疲れないし安定したタイピングだ。

  • キーボードは中央がわずかにくぼんだシリンドリカル形状を採用する

  • 上位構成はキーボードにバックライトを組み込んでいる

  • リフトアップ機構を備えていてディスプレイを開くとキーボードにタイプしやすい角度が付く

キートップの刻印は中央に大きくアルファベットが置かれ、カナは右下に小さく添えられている。NEXTREME Carbonを含めた上位構成モデルはキーボードのバックライトを備えて、オンとオフ、そして、周囲の光量に合わせて輝度を自動で変えるAutoモードに切り替えられる。

中央に大きく刻印されたアルファベットはとにかく見やすい。しかし、キートップに指を載せるとアルファベットの刻印が完全に隠れてしまうので、キートップの刻印を視認しながらタイプをするユーザーには意外と使いにくい。

英語圏で作ったキーボードであっても多くの製品でアルファベットが左上に刻印されているのはこのようなユーザーに配慮しているためだが、デザインを優先する、もしくは、ブラインドタッチを習得しているユーザーならNEXTREME Carbonのキーボードデザインは評価できるだろう。

  • キーストロークは1.5ミリとこのタイプのノートPCとしては深めに確保している

ディスプレイは14型を採用する。解像度は1,920×1,200ドットと縦方向に長い。その分情報量が多くなるとともに、同じ14型でも1,920×1,080ドットのパネルと比べて横方向を短くできる。このことは、ディスプレイサイズの影響が大きい本体サイズ、特に本体幅の縮小を可能にする。

ただし、その一方でDPIが小さくなる。例えばフォント当たりのサイズも小さくなって、同じズーム設定なら視認性が悪くなるといった“副作用”も起きる。

  • 解像度は1,920×1,200ドットと縦方向に長い 

グラフィックスが良好。ベンチマーク結果は?

今回評価したXC950/DAGはNEXTREME Carbonの最上位構成にあたり、CPUはCore i7-1195G7を採用する。Core i7-1195G7は、“Tiger Lake”こと第11世代Coreプロセッサだ。

プロセスルールを前世代モデルから改良した10ナノメートル SuperFinとしたほか、統合グラフィックスコアでは新世代のIris Xe Graphicsを採用したことで、前世代(Ice Lakeこと第10世代)の同クラスモデルと比べてCPUの処理能力は2割増し、グラフィックス処理能力は2倍増しとインテルは訴求している。

LAVIE N14が搭載するCore i7-1195G7は、4コア8スレッド対応。動作クロックは基本で2.9GHz、バーストクロックは最大で5GHzとなる。L3キャッシュ容量は合計で12MBだ。

このほか、XC950/DAGの処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR4X-4266 SDRAMを採用していた。容量は16GBでデュアルチャネル構成だ。ユーザーによる増設はできない。

ストレージは容量512GBのSSDで試用機にはサムスン電子のMZVL2512HCJQ-00BL7を搭載していた。接続バスはNVM Express 1.3(PCI Express 4.0 x4)だ。

LAVIE NEXTREME Carbon XC950/DAG(試用機)の概要

製品名 LAVIE NEXTREME Carbon XC950
CPU Core i7-1195G7 (4コア8スレッド、動作クロック2.9GHz/5GHz、L3キャッシュ容量12MB)
メモリ 16GB (LPDDR4 4266)
ストレージ SSD 512GB(PCIe 4.0 x4 NVMe、MZVL2512HCJQ-00BL7)
光学ドライブ なし
グラフィックス Iris Xe Graphics (CPU統合)
ディスプレイ 14型 (1,920×1,200ドット)非光沢
ネットワーク IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5
サイズ / 重量 W313×D218×H17.5mm / 約975g
OS Windows 11 Home 64bit

Core i7-1195G7を搭載したNEXTREME Carbonの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施した。

なお、比較対象としてCPUにRyzen 5 PRO 4650U(6コア12スレッド、動作クロック2.1GHz/4GHz、L3キャッシュ容量8MB、統合グラフィックスコア Radeon Graphics)を搭載し、ディスプレイ解像度が1,920×1,080ドット、システムメモリがDDR4-3200 8GB、ストレージがSSD 256GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

ベンチマークテスト NEXTREME Carbon 比較対象ノートPC
PCMark 10 4666 4542
PCMark 10 Essential 9756 8649
PCMark 10 Productivity 6025 6712
PCMark 10 Digital Content Creation 4692 4383
CINEBENCH R23 CPU 3545 6086
CINEBENCH R23 CPU(single) 1326 1158
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Read 6822.98 3590.85
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Write 4845.03 2347.96
3DMark Night Raid 13039 10635
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) 3346「やや快適」 2348「普通」

PCMark10において、ともにCPU処理能力のウェイトが高いEssentialとProductivityのスコアでは、EssentialでNEXTREME Carbonが優勢ながらProductivityで下回った。

また、グラフィックス処理のウェイトが高いDigital Content CreationのスコアではIris Xe Graphicsを組み込んだNEXTREME Carbonが、Radeon Graphicsを統合したRyzen 5 PRO 4650U搭載モデルを上回った。

CINEBENCH R23では、12スレッド対応のRyzen 5 PRO 4650U搭載モデルが上回るものの、シングルスレッド測定では動作クロックで優れるCore i7-1195G7を搭載するNEXTREME Carbonが高い値を示した。

また、ゲームベンチマークテストの3DMark、ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズのスコアはいずれもNEXTREME Carbonが明らかに上回っている。

加えて、ストレージの転送速度を評価するCrystalDiskMark 8.0.4 x64では、PCI Express 4.0 x4に対応したNEXTREME Carbonがシーケンシャルリードでもシーケンシャルライトでも圧倒的な差で上回った。

なお、NECPCの公式データでは、NEXTREME Carbonのバッテリー駆動時間はJEITA 2.0の測定条件で約12時間となっている。内蔵するバッテリーの容量はPCMark 10のSystem informationで検出した値で52,920mAhだった。

バッテリー駆動時間を評価する、PCMark 10 Battery Life benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは8時間36分(Performance 7069)となった(ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定)。

  • 標準で65ワット出力のACアダプタが付属する

「次世代の働き方」に応えられる有力なノートPCの1つ

デザインの側面はひとまず置いておいて、PCとしての実力を評価したとき、NEXTREME Carbonは、13.3型ディスプレイ搭載ノートPC相当のボディに1,920×1,200ドットと表示量を増やした14型ディスプレイを搭載し、重さを900g台に抑えたことで、LAVIE Pro Mobile以上の使い勝手を実現したといえる。

その上で、オンライン会議関連機能の更なる向上とnano SIMスロットなど、場所を選ばない“次世代の働き方”にも十分に応えられるモバイルノートPCの有力な選択肢となりえるだろう。