iPadを仕事や学業に役立てているユーザーが増えています。春から始まる新生活に備えて、iPadの新規購入や買い替え、買い増しを検討されている人に、現行iPadの中から自分にふさわしいモデルを見つけるためのヒントを紹介したいと思います。
カメラやディスプレイなど、機種ごとの詳しい仕様を横並びで比べながら検討したい時には、アップル公式サイトのiPad比較ページが役立ちます。過去に発売されたモデルと比べることもできるので、いま自分が使っている旧型のiPadよりも、最新機種はどこが強化されるのかもよく分かります。
本稿では、2022年2月上旬現在販売されている以下の「iPad現行モデル」を取り上げます。
シリーズ名 | 画面サイズ | Apple Storeでの価格 |
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iPad Pro 12.9インチ(第5世代) | 12.9インチ | 129,800円~ |
iPad Pro 11インチ(第3世代) | 11インチ | 94,800円~ |
iPad Air(第4世代) | 10.9インチ | 69,080円~ |
iPad(第9世代) | 10.2インチ | 39,800円~ |
iPad mini(第6世代) | 8.9インチ | 59,800円~ |
エンタメやクリエイティブワークには「最強のPro」がおすすめ
iPhoneに比べると多様性に富んでいるiPad、フラグシップとなるのがiPad Proです。パネルサイズの違いで12.9インチと11インチのモデルがありますが、いずれも高性能なApple M1チップの搭載、5G通信への対応、メインのデュアルレンズカメラの採用などを共通の特徴としています。
ディスプレイはサイズの違いだけではありません。もっとも大きな12.9インチモデルには、新開発のミニLEDバックライトシステムを搭載するLiquid Retina XDRディスプレイが採用されています。Apple TV+の動画配信サービスに公開されているHDR対応の映画やドラマ、iPhone 13シリーズで撮影したHDRビデオがより高画質に楽しめます。
iPad Proは、4基のスピーカーユニットにより構成される高音質なオーディオシステムを内蔵しています。Apple TV+やApple Musicで配信されている「空間オーディオ」に対応するコンテンツの再生も、外付けスピーカーを使わなくてもiPad Proのスピーカーだけで迫力満点です。
本体に内蔵するマイクも、iPad Proだけがスタジオグレードの高音質です。ビデオ会議にiPadを活用したい方には、通話音声を最もクリアに伝えられる“Pro”がおすすめです。
iPadシリーズでは、iPad Proのディスプレイだけが120Hz駆動のProMotionテクノロジーに対応しています。動きの多い動画コンテンツ、Webページのスクロール表示が滑らかに見られて目に優しいだけでなく、Apple Pencilによる手書きの筆記がとても滑らかに感じられます。筆者の友人のイラストレーターやデザイナーも、すべてのiPadを比較して「やっぱりiPad Proの手書き感が一番自然だった」だと口をそろえます。Apple Pencilを使ったクリエイティブワークにiPadを多用したい人は、iPad Proが向いていると思います。
とはいえ、iPad Proはやはり高価なデバイスです。加えて、画面のロック解除やApp Storeでのアプリ購入の際はFace IDによる顔画像認識を使うため、屋外でマスクを装着している時は不便に感じます。ただ、Face IDを搭載するiPhoneは、次期バージョンのiOS 15.4でマスクを装着したままロック解除が行えるようになるので、同じ機能をiPad Proのユーザーにも提供してもらえることを期待したいです。
初めてのiPadにも最適な「オールラウンダーのAir」
第4世代のiPad Airは、サイズと機能、価格のバランスがハイレベルに整う良質なスタンダードモデルです。第2世代のApple PencilやMagic Keyboard、Smart Keyboard Folioなどアップル純正のiPad専用アクセサリーにも幅広く対応します。iPad Airにしかない魅力としては、全5色の鮮やかなカラーバリエーションが揃うことが挙げられます。
第9世代iPadと比べると、Wi-Fiモデル、Wi-Fi+Cellularモデルともに価格は約3万円の開きがあります。とはいえ、Apple Pencilによる心地よい書き味が得られることや、アクセサリーによる機能の拡張性が高いことなどを考えれば、初めてのiPadとして「Air」を買うのも十分アリでしょう。
ただ一方で、発売から約1年半が経つ第4世代のiPad Airは、まだ十分に実用性が高いものの、セルラー通信機能が4G止まりで5G対応ではなかったり、最大ストレージ容量が256GBまでに限られるのが気になるポイント。将来性を考えると、やや迷うところです。
フロントカメラのセンサー解像度が第9世代のiPadよりも低いため、FaceTimeなどビデオ通話アプリの使用中に被写体の人物が常時フレームの真ん中に映る「センターフレーム」も非搭載です。少し奮発して上位の11インチiPad Proを狙う道もアリでしょう。
最先端のデジタル文具でもある「広々画面のmini」
第6世代のiPad miniは、現行iPadの中ではもっとも発売から間がない新製品です。iPhone 13シリーズと同じ高性能なA15 Bionicチップや、本体側面のホームボタンに埋め込んだTouch IDを第4世代のiPad Airに続いて搭載しました。
第2世代のApple Pencilに対応し、オールスクリーンのデザインになったことから、デジタル版のアジェンダやスケッチブックのような“文具っぽい”使い方もできます。いつもバッグの中に入れて出かけやすい、スリムで軽いサイズ感も活きてくるでしょう。
8.9インチのLiquid Retinaディスプレイを横向きに構えて動画を再生すると、パーソナルサイズのエンタメスクリーンとして意外なほど広々として感じられます。Apple Arcadeのゲームを遊んだり、Apple TV+の空間オーディオに対応する映画やドラマの視聴を、移動中などさまざまな場所で楽しむのにも最適です。
他のiPadにはあり、iPad miniに不足しているものといえば、アップル純正のキーボードです。もし、ノートPCの代わりになるサブマシンとして、テキストタイピングを中心に使い倒せるiPadを探しているのであれば、あらかじめの充電やBluetoothペアリングが要らないアップル純正のSmart Keyboardに対応する、第9世代のiPadも選択肢に入ります。iPadなら、セルラー通信機能を付けても、Wi-Fi専用モデルのiPad miniよりも約3,000円ほど安く買えます。
ただ、スタンド付きカバーやワイヤレスキーボードなど、良質なサードパーティーのアクセサリーで周囲を固めれば、iPad miniでもかなりノートPCっぽい仕事環境が構築できます。iPad miniと第9世代のiPadでは、どちらが自分の使い道に合っているのか、購入前のシミュレーションを練る時間もまた楽しいものです。
7万円でペンとキーボードが揃う「iPad」の原点
オンライン授業ができる体制を整えた学校や学生にも普及している、最もスタンダードなiPadは第9世代を迎えました。Apple Pencil、Smart Keyboardへの対応を徐々に広げ、2019年に今の10.2インチのディスプレイサイズになりました。本体ディスプレイ側のベゼル(縁)にTouch IDを内蔵するホームボタンがあり、Lightning端子を搭載する伝統スタイルのiPadは、本シリーズを残すのみとなりました。
先にも触れた通り、iPad miniに対するアドバンテージはアップル純正のキーボードが使え、テキストのタイピングの作業がしやすいことと、64GBのWi-Fi専用モデルならばApple PencilとSmart Keyboardを揃えても約7万円でバリバリ作業できる環境が整うことにあります。
反面、Apple Pencilまわりの性能はワンランク劣ります。本機が対応する初代のApple Pencilは第2世代よりもわずかに重く、またカバーガラスとタッチセンサー、液晶をほぼ一体化したフルラミネーションディスプレイを採用するPro/Airに比べると、ペン先が追従してくる感覚も少し違います。店頭展示のデモ機などで、Apple PencilやSmart Keyboardの手応えをしっかりと確かめてから購入を検討することをおすすめします。
ほかのタブレットにはないiPadならではの価値については、App Storeに多様なカテゴリーの優れたアプリがそろっていること、サードパーティの製品も含めたアクセサリーが充実していることも大事なポイントに挙げられます。もし、ほかのOSを搭載する安価なタブレットと、第9世代のiPadのどちらを買うべきか悩んでいるのであれば、iPadの充実したエコシステムのことや、既に多くいるiPadユーザーと使い方の知識を共有しやすいタブレットであることについても思いを巡らせるべきかもしれません。