ギター好きはデジモノ好きというかガジェット好きというか、とにかく何やら面白そうなグッズを探し回ってしまう悲しい習性がある。筆者もその一人で、新しいエフェクターやら、見知らぬグッズが出ると試したくてうずうずしてしまう。今回はそんなワクワクさせてくれるアイテムの中でも特に気になっていたBOSS「WAZA-AIR」に触れる機会をいただいたので早速レビューしてみたいと思う。

練習したくてもできない君へ

ギターという楽器はけっこう難しくて、思い通りに弾こうと思ったらそれなりの修練が必要になる。自分が出している音をしっかり聴き、運指は正しいのか、ピッキングとタイミングは合っているか等々、チェック事項は多い。特にエレキギターの場合は、ちゃんとアンプを通していないと実際の出音が分からないから厄介だ。必要だとは思っていても、家の事情でなかなか音が出せないという人は意外と多い。マンションタイプの人は常に気を使って練習していることが多いだろうし、夜間になれば戸建てだって隣近所に気を使う。音が出したくても出せないケースは日常的にギタリストのジレンマといえる。

これを回避するには、いつものセッティングでマルチ・エフェクターやアンプにヘッドホンをつなぐか、身軽さを優先するならペチペチと生音で弾くといった割と極端な解決方法しかなかったように思う。そんな日本の宅地事情を鑑みて、それならと思い切ったアイテムを開発してくれたのが、我らがBOSS。そして2019年末に発売してくれた製品というのが「WAZA-AIR」だ。

なんとヘッドホンひとつで思い通りのギターサウンドを作ることができ、さらにはアーティストのアルバムをスマホなどから流しながら練習できるという優れものだ。しかもギターの出力は付属のトランスミッター(送信機)から本体に内蔵されたレシーバー(受信機)へ直に送れて、ケーブルレスで使えてしまうというから驚きだ。発売から約2年が経とうとしているものの、なかなか目にする機会がなくてここまで来てしまったが、今回はメーカーのご好意でお借りすることができたというわけだ。

  • BOSSの人気製品「WAZA-AIR」

    BOSSの人気製品「WAZA-AIR」

独特の臨場感がGood!

さて、実際に届いたWAZA-AIRを見てみると、「技」と書かれたブランドロゴ以外、通常の密閉型ヘッドホンとさほど違いは見受けられない。若干サイズは大き目かな、とも思えるが、中にはBOSSのテクノロジーが入っているのだから、多少オーバーサイズになるのは仕方がないところだし、弾き手の体力にもよるが、自分はサイズや重さがあまり気になる方ではなかった。

かけ心地はすこぶるよくて、耳に直接触れるパッドは柔軟性に富んでいるうえに、可動域が広いので多少ずれても痛くなるようなことはない。長時間の使用を見込んで設計されたのだろうが、このあたりの設計のよさはさすがの一言だ。

音色の変更はヘッドホンの右側にある2つのボタンでおこない、6つまで切り替えることができる。順番をまたいでの指定はできないが、ボタンを使ってアップダウンさせるだけなので、かえってシンプルに考えることができる。もちろん、6つの音色は自分好みにエディットすることだってできる。搭載されているサウンドはBOSSのエフェクター群そのものなので、ファンなら思い通りのサウンドメイキングが楽しめるはずだ。

  • 上が使用する場合のヘッド位置で下が最もコンパクトに折りたたんだ場合のフォルム。可動域が広いことが分かる

とりあえず、デフォルトで入っているクリーントーンで弾いてみる。艶やかで伸びのある音色でギターのボリュームやトーンを変化させても狙ったとおりに追従してくれる。

歪んでいるサウンドも入っているのでそちらを試してみると、こちらはド迫力で低音が強く、ディレイとリバーブが効いた今風の味付けだ。好みによってはドライブが強すぎるように感じるが、ピッキングレスポンスが心地よくてなんだか勝手に上達したように感じてしまう(あとで自分のセットで弾いてみたらいつも通りだった(涙))。

全体のボリュームコントロールは本体右側のシルバー色のダイヤルでおこなえるので、これも直感的で分かりやすい。そして驚くのはジャイロセンサーを利用した立体音響テクノロジーだ。例えば、「STATIC」を選んでいると前方からアンプの音が聞こえ、首を振ったり体の向きを変えたりするとそれに追従するように音が斜め前方から聞こえる。「STAGE」はその逆で後方から音が出てくるのでライブハウスやスタジオで弾いているような感覚になれるのだ。このセッティングは後述する専用アプリでおこなうので、「WAZA-AIR」を買ったらすぐにダウンロードしておくことをおすすめしておく。

  • ふたつ並んだ黒い四角ボタンがパッチの切り替え用。銀色のダイヤルがメインボリュームだ。プレイ中に触るのはここぐらいなので扱いはとてもシンプル

  • 大型ドライバを採用しているので音質はかなりいい。密閉度も非常に高いので周囲の雑音はほとんど気にならない

この立体音響の効果は抜群でこれがもう楽しくて、ぐいぐい動きたくなる(笑)。臨場感があるのでギターを弾くのが単純に楽しくなるのだ。先ほども少しふれたが、Bluetoothでスマートフォンやタブレットと連携できるので、お好みの曲と合わせながら弾いているとついつい時間が経つのを忘れてしまう。「STAGE」でこれをやると後ろから選んだ楽曲と自分のサウンドが動きに合わせてやってくるのでワクワクが止まらなくなる(笑)。余計な雑音も入ってこないので、高い没入感と共にいまだ経験したことがない楽しい時間が過ごせるぞ。

  • 「BOSS TONE STUDIO」の立体音響コントロール画面

ただし、音の定位が意思と反していると感じてしまう人もいると思うので、酔いやすい人は注意が必要かも知れない。そんなときはアプリにある「GYRO LOCK」をオンにすれば向きによる音像移動を無しにできる。また「SURROUND」を選択すれば、スタジオでアンプを鳴らしているかのような広がりのあるサウンドで演奏することも可能だ。

まさにAIR感覚でギターが楽しめる

好みの音作りはスマホアプリの「BOSS TONE STUDIO」でおこなう。エフェクターを選んでパラメーターを変えるだけなので、慣れてしまえばすぐにできるはず。面倒な人は、ある程度のおすすめプリセットも用意されているので、そこから自分なりに音作りするのが手っ取り早い。作ったパッチを本体へエクスポートすれば「WAZA-AIR」で実際に聞くことができるぞ。

  • アンプセッティングコントロール画面。ゲイン、ボリューム、イコライザーのセット

  • エフェクターのパラメーター変更画面。ここでは「BLUES DRIVE」を選択中

  • ライブラリにはBOSSオススメのパッチもある

  • 手順に従ってWAZA-AIR本体へエクスポートすればすぐにサウンドが楽しめる

アプリの操作もそうだが、本体とスマホ、そしてギターとこれらはすべてケーブルレスで連動している。ギターとアンプにワイヤレスを使うことはあるが、基本的には練習環境ではケーブルに縛られるのが日常だという人が圧倒的に多いはずだ。それと比較すれば、超軽量セッティングであり、オールワイヤレスの自由さを一度味わってしまうと、ケーブルを引き回すのが嫌になってしまう。練習なんだからこの方がいいじゃん!と、ある意味、新しい世界が開けてしまう感じすらある。やばい、戻れなくなりそう(笑)。

ちなみに本体、トランスミッターともにUSB経由での充電方式を採用している。付属のケーブルを使って指定の位置へ差し込むだけなので迷うことはないと思う。充電中のステータスはLEDで知らせてくれる仕組みだ。スペック上、本体は約5時間連続使用できるらしい。少なくともレビューしている間に切れることはなかった。ただ、バッテリーの持ち時間に関しては使い方によるので一概にはいえないが、練習し終わったら軽く充電しておけば、次に使ったときについノリノリになっても安心なのでこまめなメンテナンスは大切だと思うぞ。

さて、ギター弾きのよき相棒として魅力たっぷりの機能を持ったBOSS「WAZA-AIR」。市場想定価格は4万5,000円前後となっている。やや高価に感じるが、これだけの機能とテクノロジーが詰まっているのだからコストパフォーマンスは十分あると思う。ギター好きなら誰しも感じる練習不足。「WAZA-AIR」があれば、そもそも弾くのが楽しくなるのだから、そんなジレンマとはすぐにお別れできることを約束しよう。また、ベース専用の「WAZA-AIR BASS」も昨年10月に発売されている。筆者的にこのアイテムはまさに買い! いや、必携の逸品と言い切っておきたいと思う。