バルミューダは2月10日、2021年12月期決算説明会をオンラインで開催。業績は堅調で売上高・営業利益は2021年の2月や5月の予想を上回りました。しかし、原価率や販管費が増えたことなどから、営業利益率は2.2ポイントのマイナスとなったほか、2022年度は厳しい見通しを立てています。2022年12月期は、スマホのBALMUDA Phoneが属する「BALMUDA Technologies」カテゴリーへの挑戦を続けていく考えです。

  • 計画の約2倍というペースで販売が推移している、2021年10月に発売したオープンドリップ式コーヒーメーカー「BALMUDA The Brew

決算説明に入る前にバルミューダの寺尾社長は、社外取締役が株式市場を騒がせた件や、1月には一週間にわたるBALMUDA Phoneの一時販売停止が発生したことについて、関係各位やバルミューダのユーザーに多大な心配と迷惑をかけたとして陳謝しました。

  • この3カ月は予想外のことが非常に多かったと語る寺尾玄社長

バルミューダの2021年12月期決算(連結)は、売上高が183.7億円(対前年比+46.0%)、営業利益が15.1億円(同+15.3%)に。この数値はバルミューダにとって過去最高です。

売上原価率は60.2%(同+3.5%)、販管費率は31.6%(同-1.3%)、営業利益率は8.3%(同-2.2%)となり、営業利益率以外は手堅い結果となりました。

  • 2021年12月期、主要指標の前年比較。販管費率の前年対比は-1.3ポイントとなっていますが、この数値は減るほうが好ましいため、表中では白抜きの三角で表記されています(これはバルミューダが便宜上行っているもので、会計上の規則で定められた表記ではありません)

寺尾社長は「健全な範囲内の数字であり、バルミューダらしい姿」と形容したうえで、「世界的なサプライチェーンの混乱や円安の影響はあるものの、コストコントロールにより収益面においても計画を達成できた。将来の成長に向けて新たな投資を積極的に行っていく」と述べました。

売上原価は世界的に上がっており、バルミューダに限らずほぼすべてのメーカーが厳しい状況を余儀なくされています。そんな中で効率化によってコスト圧縮を図った自社技術開発陣について、寺尾社長は「誇りに思う」と表現しました。

また、バルミューダは2021年2月に公表した業績予想を5月に上方修正していますが、その業績予想と比較すると、販管費率以外はさらに上回る好調だったことが見て取れます。

  • 2021年12月期、主要指標の業績予想比較

好調の背景は、売上高を製品カテゴリー別に分解することで見えてきます。空調関連が33.4億円(対業績予想+9.9%)で構成比は18.2%。キッチン関連が96.3億円(同+8.0%)で構成比は52.4%。携帯端末関連が28.4億円(同+5.6)で構成比は15.5%。その他が25.4億円(同-25.8%)で構成比は13.5%となっています。

キッチン関連を押し上げたのは10月に発売したコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」で、計画の2倍という高水準で販売が推移しているそうです。

そのほか計画に及ばなかったのは2020年11月に発売したコードレスクリーナー「BALMUDA The Cleaner」でした。クリーナー市場はプレイヤーが多く、新規参入の難しさは指摘されていましたが、壁の高さは予想以上だったと言えそうです。

  • 2021年12月期、製品カテゴリー別売上高の内訳

  • 「BALMUDA The Cleaner(バルミューダ ザ・クリーナー)」

売上高を地域別で見ると、日本が135.1億円(対業績予想+1.2%)で構成比は73.5%。海外全体では48.6億円(同+2.6%)で構成比は26.5%。海外のうち、韓国が33.1%(同+11.6%)で構成比は18.0%、北米が4.4%(同-19.9%)で構成比は2.4%、その他が11.0%(同-9.1%)で構成比は6.0%となっています。

北米とその他がマイナスになったのは、新型コロナウイルス感染症の影響によって、欧米でのブランディングが計画よりかなり遅れたためです。今期は遅れの挽回に注力していくとのことでした。

  • 2021年12月期、地域別売上高の内訳

おもな販管費では、広告宣伝費と試験研究費の数値が5月時の予想よりも改善して着地。これは「おもに製品開発上のリスクに対応する施策の結果」と説明しています。

  • 2021年12月期、おもな販管費の内訳。広告宣伝費と試験研究費の対業績予想の白抜き△も、マイナスによって業績がプラスに働く数値です(これはバルミューダが便宜上行っているもので、会計上の規則で定められた表記ではありません)

続いて2022年12月期の業績予想です。主要指標を見ると、売上高こそ対前年比で+0.2%の184.1億円を掲げていますが、営業利益は-47.3%となる8.0億円を予想。販管費率と営業利益率が低下すると見込んでいます。

  • 2022年12月期、業績予想。主要指標の前年比較

製品カテゴリー別売上高での予測値では、携帯端末関連が-61.9%の10.8億円となり、ボトルネックとなっている構造が見て取れます。現状、携帯端末関連は「BALMUDA Technologies」というブランドの数字。BALMUDA Phoneだけでなく、アプリケーションを含めた、さまざまなテクノロジー製品のリリース計画を表明しています。

しかし、その多くはまだ予算組みに入れられない研究開発中のプロダクトとのこと。寺尾社長は「このままにするつもりはないが、今日の段階ではこの数値とさせてほしい」と訴えました。経営戦略上はともかく、会計上はやや水物の扱いになりつつある印象も拭えません。

  • 2022年12月期、業績予想。製品カテゴリー別売上高

地域別売上高では国内売上の対前年比率が下がるものの、海外は伸びを期待しています。特に北米は市場進出から2年間で10億円の売上を見込んでいたものが、コロナ禍で大きく足を引っ張られ、3年目となる2022年12月期の予想も7.5億円にとどまります。寺尾社長は「この数字には大変不満を持っている」と述べました。

  • 2022年12月期、業績予想。地域別売上高

販売管理費は、人件費と広告宣伝費の対前年比は増加し、試験研究費は対前年比で39.6%の減少を見込んでいます。人件費に関しては、「BALMUDA Technologiesを軌道に乗せるため、旺盛に人材を募集している。会社がいま一番にやるべき投資は人材」と指摘し、いまだけ切り取って見るとバランスが悪く見えるものの、長い目で見れば最善の措置だとしました。

  • 2022年12月期、業績予想。おもな販管費

今後に向けた取り組みについて、寺尾社長は「売上高は、重点地域である日本、北米、韓国への製品展開を加速することで対応。原価高については製造パートナーと一体になったさらなる原価低減と部材調達力の向上、製品開発プロセスの効率化、および一部製品の値上げなどで対応する」と説明。BALMUDA Phoneの継続的な価値向上と新商品投入の加速という形で、Technologiesカテゴリーへの挑戦を続けていきたいとしました。

一部製品の値上げについては、具体的な製品名や時期、値上げ幅などは公表できないとしながらも、「春ごろには行わなければならないのではないかと考えている」とのこと。

BALMUDA Phoneの継続的な価値向上は、アプリケーションのこまめなアップデートによる新しい体験の提供を続けていくこと、新端末のリリースは2年や3年というサイクルは遅すぎると考えていることなども明らかにしました。

BALMUDA Phoneの発売当時、メディアやネットの反応について、寺尾社長は「予想外のものが多く、この反応の理由を理解することに苦労したが、良い経験になった」と振り返りました。ソフトバンクの直営店限定でBALMUDA Phoneを値下げ販売することについては、「個人的には発売時の価格はもっと下げたいと考えていた。顧客満足度は高く、もっと多くのユーザーに触れてもらいたいので良い施策だと考えている」と述べました。