10月7日に発売された「BALMUDA The Brew」。6年もの歳月をかけ、紆余曲折を経てバルミューダが世に送り出したコーヒーメーカーです。

  • バルミューダのコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」

    バルミューダ渾身の新製品「BALMUDA The Brew」

低価格の製品も多いコーヒーメーカーですが、BALMUDA The Brewのお値段は5万9,400円。決して安くない価格設定や独自のコーヒー抽出方法が注目を集めています。発売に先駆けてバルミューダから試用機をお借りして、自宅でじっくり使ってみました。

黒×シルバーの本体は、ハンドドリップと同じ構造

バルミューダの製品といえば、デザイン性の高さは多くの人が認めるところでしょう。BALMUDA The Brewの本体は落ち着いたマットブラックの樹脂。そこに、サーバー(ポット)のステンレスと同じシルバーのパーツが絶妙なバランスで配置され、クラシカルな上品さとクールなカッコよさを醸し出しています。

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    横から見た本体。手前側(写真右側)がドリップ部で、一番上にドリップ用のノズル、その下にドリッパー、サーバー(ポット)の順に重ねた構造はハンドドリップと同じ。奥側(写真左側)には取り外し可能な水タンク,

シルバー部分は反射を抑えた質感にすることで、周囲が映りこみにくく、デザイン上のノイズになりにくい工夫はさすが。少し反骨的で硬派なロック感もあるデザインに、バルミューダらしさを感じます。

見た目以上にユニークなのは操作性。コーヒーメーカーなのでもちろん電動式なのですが、上から順に注湯口、ドリッパー、サーバーといったように、ハンドドリップと同じ構成です。コーヒーのハンドドリップを見たりやったりした経験があれば、直観的に使い方がわかると思います。

手順もハンドドリップと同様。まずはドリッパーにペーパーフィルターを敷いて、その中にコーヒー粉を淹れたい分量だけ入れて、サーバー(ポット)の上にセット。

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  • ドリッパーは、中央のスタンドに差しこんでセット。奥まで差しこんでから、ドリッパーの足元とドリッパースタンドにあるマークが合うように、左右どちらかに90°回転させて取りつけます。正しく装着できていないと、スタートボタンを押したときエラー表示に

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    ドリッパーの下にサーバーをセット

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    ドリッパー裏面。抽出したコーヒーが落ちる穴のある部分にはバネが仕込まれ、サーバーをセットしたり、取り出したりすると上下に動く仕組み

水は背面にあるタンクに注いでセットするだけ。タンク背面の溝が本体の突起とかみ合うように設計されているため、間違わずにセットできるのは秀逸です。

タンクの側面には水量の目盛りがあり、直接注ぐ、あるいは計量カップなどを使って水を入れるのもとてもわかりやすくなっています。細かなところですが、配慮が行き届いている点に感心しました。

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    給水用のタンクは上に引き抜いて、本体から取り外します

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    タンクの裏側と本体には、しっかりかみ合うように溝と突起が設けられています

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    中に水を注ぐときは、タンク上のフタを取り外します

操作部は本体の天面に集約。抽出モード、1~3杯から抽出したい量を選ぶボタン、そしてスタート/ストップボタンのみ。迷いようがないほど、いたってシンプルです。

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    天面の操作部。左から、電源、モード選択、杯数選択ボタン、スタート/停止ボタン

抽出モードは、「REGULAR」、「STRONG」、「ICED」の3パターンあり、それぞれ抽出方法が異なります。バルミューダの説明によると、「REGULAR」は濃い目にコーヒーを抽出し、最後はサーバーに直接お湯を注いでちょうど良い濃さのコーヒーに調整するもの。

「STRONG」は、最後までドリッパーでコーヒーを抽出するモードで、お湯の継ぎ足しは行いません。「ICED」は、通常は1杯約120mlで抽出するところを、最後に氷で冷やすことで適度な濃さになるように、約75mlと少量のお湯で濃く抽出しているとのことです。

バルミューダでは、この独特な抽出方法を「Clear Brewing Method(クリア ブリューイング メソッド)」と呼び、特許を出願中とのこと。さまざまな検証を重ねた開発担当者が、抽出後半にドリップされる液体には、コーヒーの香り・味・コクよりも雑味・エグ味が強く出ることを発見。雑味が強くなる前にコーヒーを濃い目に抽出し、お湯を足すことで、スッキリとした後味のコーヒーを淹れる仕組みを考えついたそうです。

0.2ml単位でお湯を注ぐ緻密さ、音と光の演出も健在

BALMUDA The Brewは運転をスタートすると、抽出したコーヒーを冷めにくくするために、まずはサーバー内に100℃のスチームを噴きつけて温めます。

構造として特徴的なのは、お湯の注ぎ口がドリップ用とサーバー用に2つ設けられていること。本体の中ほどに、サーバー内に直接お湯やスチームを抽出する注湯口を備えています。

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    写真右側の上部にある丸い部分がドリップ用のノズル(赤丸)。ドリッパー用のスタンド下には、バイパス注湯口というサーバー用の注湯口を備えた独自の構造(黄丸)

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    ドリップ用の湯口。五角形状に配備された5つの小さな穴からお湯やスチームが出ます

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    バイパス注湯口のアップ。ドリッパーのスタンド部分とサーバー受けの間にある、穴の開いた小さな突起が注湯口

ドリップの工程に移ると、最初は高温の熱湯を粉コーヒーに少し吹きかけて蒸らします。その後は湯温を徐々に低くしながら、0.2mlという細かな単位で間欠的にお湯を注いでいく流れです。このようにして、3つのモードそれぞれに適したコーヒー液をサーバーに抽出していき、「REGULAR」モードでは最後にお湯を継ぎ足すことで濃度を調節します。

BALMUDA The Brewの魅力は、美味しいコーヒーの抽出過程を眺められること。前述の通りドリッパーが外側に出ているオープン構造のため、コーヒー粉の上に蒸気やお湯が注がれ、コーヒー粉が膨らんだり凹んだりする様子やその間に漂う香りを、臨場感たっぷりに楽しめるのです。

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    ドリッパーの上が完全に露出したオープンドリップ構造

コーン型ドリッパーを採用したところにもこだわりを感じます。多くの家庭用コーヒーメーカーは台形型を採用していますが、台形型より底の穴が大きいコーン型ドリッパーのほうが、コーヒーを抽出したときに雑味やエグ味が出にくいのは、プロやコーヒー通の間ではよく知られています。

ただし、コーン型ドリッパーは穴が大きいぶんお湯の通過が早いため、お湯を注ぐ量やタイミングが難しく、扱いにはテクニックが必要。BALMUDA The Brewは、単にコーヒーメーカーと呼ぶよりも、プロのテクニックを機械によって再現したマシンと言ったほうが的確かもしれません。

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    ドリッパーはコーン型を採用。サーバーとつなぐ突起を下に備えた独特の形状で、コーヒー粉をセットしやすいよう、専用のドリッパースタンドと計量スプーンも付属

もう1つ、バルミューダらしいユニークな要素といえば「音と光による演出」です。電源をオンにするとメロディアスな起動音を奏で、操作部の穏やかなオレンジLEDが灯ります。

スタートボタンを押すと、チックタック、チックタクと、時を刻む振り子時計のような音が流れ、完了はシンセサイザーの音でお知らせします。

【動画】REGULARモード(2杯)で抽出中の様子。スイッチオンから約5分で抽出が完了しました。ドリップの様子を外側から確認できるため、ハンドドリップのお手本を見ているようにも思えます
(音声が流れます。ご注意ください)

この音を実現するために、バルミューダはコーヒーメーカーにもスピーカーを仕込んだということです。美味しいコーヒーを舌で味わうだけでなく、視覚、嗅覚、聴覚にまで作用するように、さまざまな仕掛けを1台のコーヒーメーカーに盛り込むメーカーはなかなかないと思います。

コーヒーメーカーにはサーバーを加熱するヒーターがついている物も多いですが、BALMUDA The Brewには淹れたコーヒーを加熱して保温する機能はありません。その代わり、抽出したコーヒーを受け止めるサーバーは真空二重構造のステンレス製で、ドリップから約1時間は保温できます。

バルミューダによれば、加熱によってコーヒーが煮詰まって味が変わったり、香りが飛んでしまったりするのを避けるために、あえてサーバーの下にヒーターを搭載しなかったとか。1~3杯という抽出容量も、短時間で飲み切ることを前提にしているからです。

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    加熱によるコーヒーの風味の変質を避けるためにヒーターは非搭載。代わりに、1時間ほど保温できるように、真空二重構造のステンレス製サーバーを採用

単機能で約6万円、BALMUDA The Brewの「価値」を考える

BALMUDA The Brewの発表時、ミル機能を搭載していないことに少々驚きました。というのも、一般的に高価格帯のコーヒーメーカーといえば、ミル機能から抽出、保温、お手入れまで全自動・多機能が主流だからです。そんな中、約6万円の高価格ながらドリップ機能のみというのは、なかなかの思い切りだなと感じました。

ですが、よく考えてみるとコーヒーメーカーにとってミル機能は必ずしも不可欠な要素ではなく、すでに挽いてある粉コーヒーのほうが、実は手に入りやすかったりもします。また、筆者もその1人ですが、すでにコーヒーミルを所有している人にとってミル機能は不要で、本体を大きくしてしまう要素でもあります。

BALMUDA The Brewは、ドリップ機能に絞ったことでコンパクトな本体を実現しているのも事実。本体サイズは横幅約14cm、奥行29.7cm、高さ37.9cmとスリムで、一般家庭のキッチンやダイニング、リビングの片隅に設置するのにちょうどいいサイズ感です。

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    横幅約14cmと、正面からのたたずまいはとてもスリム

淹れたコーヒー味に関しては、用いる豆(粉)、ブレンド、焙煎方法、挽き方によって異なり、好みが大きいところですが、共通してどのモードもレベルが高いのは確か。どのモードでも雑味やエグ味がなく、後味がクリアなため、コーヒー豆やブレンドの違いがはっきりとわかりやすいのも特徴です。1杯で香りもコクも味わいもしっかりと感じられます。

個人的に、お酒をはじめ嗜好品は中途半端な味だと満足できず、過度に摂取してしまいがちというのが持論。BALMUDA The Brewで淹れたコーヒーには、コーヒーの美味しさがギュッと濃縮されているので、少量でも十分に満足感が得られました。

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    うたい文句通りのクリアな後味でした

本体価格が約6万円と、決してお安くはないBALMUDA The Brew。とはいえ、これだけのクオリティでコーヒーを自宅で気軽に飲めることを考えれば、コーヒー豆の価格を差し引いても、あくまで個人的な感覚ですが半年くらいでモトを取れる印象です。

また、インテリア性やパフォーマンス、コンパクトさ、メンテナンス性と、いずれの要素もハイレベル。コーヒーメーカーには数十万円もする高級機もあることを思えば、検討の余地がある価格帯とも感じます。

五感を刺激するコーヒーメーカー、気になる人は一度「体験」を

これまで個人的ナンバーワンだった「BALMUDA The Speaker」を上回り、バルミューダが手がけた製品の中では最もワクワクさせられた製品でした。

コーヒーの美味しさだけでなく、音や光でクスッと笑わせられたり、突然立ち込める蒸気に驚かされたり、雨のしずくのように滴るお湯の様子に癒やされたり、何よりその香りと味で感動させられたりと、五感を刺激された初めてのコーヒーメーカーです。

ちなみに、試用機を返却したあと、BALMUDA The Brewのドリップ方法をお手本に、ハンドドリップで淹れてみました。確かに雑味が少なく、クリアな後味がBALMUDA The Brewに近づき、ハンドドリップのスキルアップができました(と思っています)。ハンドドリップで毎回同じような作法を行うのは手間と時間がかかるものですが、それを全自動で淹れられるBALMUDA The Brewの魅力を再認識しました。

単にモノを売るだけでなく「体験」を売る家電メーカーというのがバルミューダの企業アイデンティティー。BALMUDA The Brewが気になる人は、ぜひ試飲してみることをおすすめします。その味に満足したら、デザインやパフォーマンス(演出)も含め、自身の暮らしの中で調和するかをイメージして、価格に見合った体験かどうかを検討してみてください。