final STOREが移転することについて、ネット上では「秋葉原からなくなって残念」という声が多かった一方で、川崎への移転を楽しみにしていた人も少なくなかったようです。秋葉原にあった頃は、イヤホン/ヘッドホン専門店や家電量販店を巡ったついでに足を延ばす……ということもできましたが、川崎の新店舗はふらっと訪れるというよりも、「明確にfinalを目指して訪れる」人が増えると思われます。そういった“濃いファン“に向けた、ちょっと違った体験、居心地のよさを提供したい、と森氏は話していました。

また、製品購入後のアフターサービスの強化にも期待できそうです。本社とストアが同じビル内に入ったことで、修理等のサポート対応をスムーズに案内できるようになるとのこと。オープン時点ではビル1階の受付はクローズしていますが、ゆくゆくはここで修理受付や修理品の受け渡しなどを行うことも考えているようです。

さらに、finalで初となる自社製カスタムイヤホンのための、耳型採取などの新サービスを将来的に提供することも予定しており、森氏によれば「1年以内の実現を目指している」といいます。“自分だけの音と装着感”を突き詰めたfinal純正のカスタムイヤホンが、川崎のストアでいち早く手に入るようになるかもしれません。

3Dオーディオ研究用の13.2chサラウンドシステムを初公開

そして今回、一般の来場者には公開していない、エンジニアが製品開発の過程で試聴するための“実験室”(試聴室)を特別に見せてもらえました。

  • 新社屋内の試聴室の前にやってきた

ここでは昨今盛り上がりを見せている「3Dオーディオ」の研究のために、プロ向けのGENELECモニタースピーカーとサブウーファーを複数台用意し、13.2ch構成のサラウンドシステムを組んでいます。

  • 3Dオーディオの研究のための13.2chサラウンドシステム

  • GENELECモニタースピーカーを上下に13個設置

  • 両脇のサブウーファーもGENELEC製

finalでは以前から九州大学と音響に関する共同研究を行っており、VRやバイノーラル音声向けに開発した有線イヤホン「E500」を使った研究などを実施。その中で「E500の音響設計は学習用にも良いのでは?」という発見が、学習専用イヤホン「STUDY 1」(2月10日発売/2,980円)の商品化に結びついたとのこと。

これまでは別のスタジオなどを間借りするかたちで実験することもありましたが、こういった施設を自社で設けたのは初めてで、「九大で本格的な実験を行う前の、予備実験を行うための自前の設備を持ちたかった。現場ではトラブルが起きることもあるので、(自社施設で)予備実験できると助かる」(森氏)。将来的には22.2chまで拡張することも予定しているといいます。

  • STUDY 1

  • finalが手がけた、VRやバイノーラル音声向けの有線イヤホン製品たち

同社では、アコースティックな手法がモノをいう振動板などのアナログ部分だけでなく、デジタル信号処理技術の研究も行い、完全ワイヤレスイヤホンなどの製品開発に活かしていくとのこと。

具体的な計画は明らかにしていませんが、finalは今後も「ZEシリーズ」の完全ワイヤレスイヤホンのバリエーションを増やすことを検討している模様です。同社はクアルコムのワイヤレスイヤホン向け新技術「Snapdragon Sound」を採用した製品を市場投入予定で、上位製品の登場に期待できそうです。逆に、もっと手ごろな製品を投入してくる可能性もあるかもしれません。

final STOREのこれからの展開と、final・ag両ブランドの今後の新製品に注目です。

  • 新社屋には、finalらしさが感じられる風景がそこかしこにある。これは1階エントランスの床に描かれている、案内用の導線

  • フロア表示の書体にも、どことなくfinal製品のパッケージの印字に近い雰囲気がある