日本HPは1月20日、2022年の事業戦略についてメディア向けの説明会をオンラインで実施しました。2021年も堅調な成長を果たしたと報告し、2022年も成長を牽引する5つの分野に注力していくとしています。

  • 日本HPの岡戸伸樹 代表取締役社長 執行役員。手にしているのは、同社の個人向けPCに同梱して配布している、日本HPの環境保護への取り組みについてまとめた小冊子

日本HPの第二創業期と思って果敢に挑戦

冒頭に登壇したのは、2021年11月1日に新たに代表取締役社長執行役員に就任した、岡戸伸樹(おかど のぶき)氏です。岡戸氏はEコマース、個人向けPC、デジタル印刷などの戦略分野を牽引してきた人物で、社長としての抱負について「社会に逆風が吹くような時期だからこそ、リスクを恐れずに果敢に挑戦していきたい。日本HPの第二創業期と思って新しい日本HPを作り上げたい」と述べました。なお、前社長の岡隆史氏は会長に就任しています。

岡戸氏はまずHPグループの2021年の業績から説明。ワールドワイドでの売上は約7.3兆円で、対前年比では12.1%のプラス。PC事業、プリンター事業ともに2桁伸長を達成しています。営業利益は約6,600億円、対前年比では42%の高い成長となりました。

  • HPグループのワールドワイドの2021年業績

この成長を牽引したのは、ゲーミングPC、ペリフェラル(周辺機器)、ワークフォースソリューション、個人向けサブスクリプション、デジタル印刷&3Dプリンティングという5つの分野です。ペリフェラルでは、キングストンテクノロジーのゲーミング部門「HyperX」を買収するなど、今後もゲーミングPCとその周辺機器に注力していくことを示しました。岡戸社長は、この5つの分野は2022年も注力していくとしています。

HPの売上で約7割を占めるPCの市場は、今後も成長を見込んでいます。PCを含めたパーソナルシステムズの市場は、今後の数年間は3%前後の安定成長を続けると見ています。2024年には、市場規模が64.4兆円規模に達すると分析。これは新型コロナが流行する前の2019年にHPが予測した2024年の市場規模と比べ、約1.5倍も大きなものになっています。

岡戸社長は「グローバルで見ても日本は注力カントリーであり、日本のユーザーのニーズをしっかり理解して、ベストな顧客体験を提供することで成長していきたい」と語りました。

  • パーソナルシステム市場が堅調に伸びていくと分析しています

続いて日本HPの事業紹介へと移ります。日本では、後述する「ハイブリッドワーク」と「ゲーミング」のパーソナルシステムズ事業によって、プレミアム体験と付加価値を提供。「デジタルプレス」と「3Dプリンティング」というプリンティング事業によって、業界のデジタル化を加速していく考えです。

日本HPではデジタルプレスの「アナログ to デジタル」を実現する新製品を2020年から次々と投入しており、導入企業の実績も着実に増えているそうです。

  • 日本HPは、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ印刷」という国内オンデマンド印刷の業界を多様な製品で牽引しています

デジタルプレスの保守サービスとして、新形態の「HP xRServices」にも触れました。2021年11月に発表した「HP xRServices」は、Microsoft HoloLens 2を活用して、トラブルシューティングにVRで対応する保守サービスです。ヘッドセットを装着して「HP xRServices」を利用すると、仮想コーチが視界の中で解決手順を説明してくれます。問題を突き止める手順を示したり、交換の必要な部品の位置や姿を見せたりして、具体的で分かりやすいトラブルシューティングが期待できます。現在はベータ版として提供中で、正式な提供開始は5月1日を予定しています。

  • デジタルプレスの新しい保守サービス「HP xRServices」

3Dプリンティングでは、HP Jet Fusionによるパール製造が2021年9月に累計1億個を達成。アメリカの3Dプリンター業界のレポート「Wohlers Report」にて、最も費用対効果の高い産業用3Dプリンターであると評価されたと紹介しました。

拡大するゲーミング市場、若年層にとってゲームはコミュニケーション

ゲーミング市場では、国内のゲーミング人口が5,000万人を超えたことや、ゲーミングPCが過去2年間で84%も増加したことに触れました。ゲーミングはライフスタイルにも取り入れられつつあり、調査によればゲームをプレイする人の過半数でプレイ時間が増えていて、76%は今後もプレイ時間を減らしたくないとの結果。また、ゲーミングが若い世代ではコミュニケーションの手段になってきているとも指摘しています。

  • 日本のゲーミング市場の動向

ゲーミング市場の動向を見据えて、ゲーミングソリューションを拡大。2021年9月にはゲーミングPCブランドとして、エンスージアストまで対象とする「OMEN」に加え、メインストリームからカジュアルを対象とする「VICTUS」を起ち上げています。

岡戸社長は「家庭用ゲームを楽しむユーザーに、PCゲームの魅力をもっと伝えていきたい」と語りました。

  • 周辺機器ではHYPER Xブランドを手中にし、ソフトウェアではウォッチパーティ用アプリ「OMEN OASIS」をリリース

  • HPのゲーミングポートフォリオ。1月20日付けで、高い没入感を持つ27型曲面ディスプレイ「OMEN 27c QHD」もリリース。3月末までに、OMEN16やVictus16などの販売も予定しています

セキュリティポリシーと生産性を両立させていく

パーソナルシステムズ事業において、プレミアム体験と付加価値を提供するとしていた「ハイブリッドワーク」。これを支えるテクノロジーとソリューションについて、日本HPの九嶋俊一氏が説明しました。

まず、ハイブリッドワークとは何か補足しておくと、従来のオフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方のこと。日本HPでは「働く場所の多様化を受け、いつでもどこからでも働ける環境」をハイブリッドワークであると定義し、環境構築や運用を支援していく考えです。

  • 日本HP 専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 九嶋俊一氏

「現在のIT部門では、分散したデバイスのセキュリティやマネジメントをどうやって滞りなく進めるかが課題になっており、これまでの仕組みの中では安全に稼働させ続けることが困難になってきている」(九嶋氏)

たとえばテレワーク経験者を対象に調査すると、自分の生産性を重視してセキュリティポリシーを軽視した人が多くいたことが分かったそうです。ポリシーで従業員の行動を厳格に制限することは不可能であり、ポリシーを守ることが生産性低下につながる状況は、改善しなくてはなりません。それこそがハイブリッドワークが解決すべき課題となっているのです。

  • セキュリティポリシーを守ると生産性が落ちてしまう状況をどう解消するかが、ハイブリッドワークには不可欠

九島氏は日本HPがハイブリッドワークを支援するテクノロジーとして、「シームレスなコラボレーション」「自動化されたエンドポイント管理」「生産性を阻害しないエンドポイントセキュリティ」の3つを挙げます。いずれも既存のPCに組み込まれている仕組みだけでなく、新たな仕組みを導入し、すべてのユーザーが利用できるようにしていくとしました。そのためにもセキュリティのポートフォリオを拡充し、セキュリティと生産性の両立に向けた提案をしていくと述べました。

  • 日本HPはテクノロジーでハイブリッドワークを支援