キオクシアの個人向けブランド「EXCERIA」から、新たなNVMe SSDシリーズが登場した。PCI Express 4.0 x4対応のフラグシップモデル「EXCERIA PRO SSD」、3.0 x4対応のハイエンドモデル「EXCERIA PLUS G2 SSD」、3.0 x4対応のエントリーモデル「EXCERIA G2 SSD」だ。今回はそれぞれ1TBモデルを用意、前モデルの「EXCERIA SSD」も含めて実直をチェックした。

キオクシア待望の新世代NVMe SSD

「EXCERIA PRO SSD」は、キオクシアの個人向けとしては初のPCI Express 4.0 x4対応NVMe SSDだ。2021年11月に発売がスタートと4.0 x4対応としては後発と言えるが、2TB/1TBモデルとも公称シーケンシャルリードが7,300MB/秒、シーケンシャルライトが6,400MB/秒と現役最速クラス。とくに1TBモデルでシーケンシャルライトが6,400MB/秒は、ほかのハイエンドモデルでもみられないほどの速度。このあたりは後発の強みと言えるだろう。“ゲームの読み込み、動画編集、グラフィックレンダリングの高速化を追求”とした用途を選ばないフラグシップモデルだ。

  • キオクシアのPCI Express 4.0 x4対応NVMe SSD「EXCERIA PRO SSD」

    キオクシアのPCI Express 4.0 x4対応NVMe SSD「EXCERIA PRO SSD」

  • コントローラはキオクシアのロゴ入り。詳細は公表されていない

「EXCERIA PLUS G2 SSD」は、PCI Express 3.0 x4対応のハイエンドモデル。「EXCERIA PLUS SSD」のマイナーチェンジと言えるモデルで、500GB版が高速化されていることが主な変更点である。これにより2TB/1TB/500GBモデルとも公称シーケンシャルリード3,400MB/秒、シーケンシャルライト3,200MB/秒となった。3.0 x4対応としては最速クラスと言ってよいだろう。

  • キオクシアのPCI Express 3.0 x4対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G2 SSD」

  • コントローラは同じくキオクシアのロゴ入り。こちらも詳細は公表されていない

「EXCERIA G2 SSD」は、PCI Express 3.0 x4対応のエントリーモデル。1TBモデルで実売価格11,500円前後とNVMe SSDとしては手頃な価格なのが強み。「EXCERIA SSD」のバージョンアップ版と言えるもので、1TBモデルの公称シーケンシャルリードは1,700MB/秒から2,100MB/秒、シーケンシャルライトは1,600MB/秒から1,700MB/秒にアップしている。

  • キオクシアのPCI Express 3.0 x4対応NVMe SSD「EXCERIA G2 SSD」

  • こちらもコントローラはキオクシアのロゴ入り。詳細は不明だ

そのほかスペックは下記の表にまとめたので合わせて確認してほしい。

■EXCERIA PRO SSD
容量 1TB 2TB
実売価格 22,000円前後 43,000円前後
フォームファクタ M.2 2280
インタフェース PCI Express 4.0 x4
プロトコル NVMe 1.4
NANDフラッシュメモリ BiCS FLASH TLC
コントローラ キオクシア製コントローラ
シーケンシャルリード 7,300MB/秒
シーケンシャルライト 6,400MB/秒
総書き込み容量(TBW) 400TB 800TB
保証期間 5年
■EXCERIA PLUS G2 SSD
容量 500GB 1TB 2TB
実売価格 7,500円前後 12,500円前後 35,000円前後
フォームファクタ M.2 2280
インタフェース PCI Express 3.0 x4
プロトコル NVMe 1.3c
NANDフラッシュメモリ BiCS FLASH TLC
コントローラ キオクシア製コントローラ
シーケンシャルリード 3,400MB/秒
シーケンシャルライト 3,200MB/秒
総書き込み容量(TBW) 200TB 400TB 800TB
保証期間 5年
■EXCERIA G2 SSD
容量 1TB 2TB
実売価格 11,500円前後 27,000円前後
フォームファクタ M.2 2280
インタフェース PCI Express 3.0 x4
プロトコル NVMe 1.3c
NANDフラッシュメモリ BiCS FLASH TLC
コントローラ キオクシア製コントローラ
シーケンシャルリード 2,100MB/秒
シーケンシャルライト 1,700MB/秒
総書き込み容量(TBW) 400TB 800TB
保証期間 5年

期待を超える高性能? 実性能をベンチマークテスト

まずは、CrystalDiskMark 8.0.4で最大性能をチェックしてみたい。用意したのは、それぞれ1TB版、比較対象として旧モデル「EXCERIA SSD」の1TB版も加えた。テスト環境は以下の通りだ。

■テスト環境
CPU AMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボード MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
メモリ Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2)※DDR4-3200で動作
ビデオカード NVIDIA GeForce RTX 3070
システムSSD Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB)
OS Windows 10 Pro 64bit
  • CrystalDiskMark 8.0.4の結果

やはり注目は4.0 x4対応のEXCERIA PRO SSDだ。シーケンシャルリード、ライトとも公称を超える速度を出している。動画編集などで大容量ファイルを扱う用途では、かなりの強みになるだろう。すでにPCI Express 4.0 x4のインタフェース限界が見える速度に到達していることには驚かされる。EXCERIA PLUS G2 SSDもシーケンシャルリードが3,400MB/秒以上、ライトが3,200MB/秒以上と3.0 x4対応としては最速クラスの結果だ。こちらもインタフェースの限界が見える速度が出ている。EXCERIA G2 SSDは、エントリークラスらしい速度だ。

次は、実際のアプリケーションを使用するPCMark 10のStorageテストを実行する。ゲーム、クリエイティブ系、Office系と多様なアプリでの処理を実行と、使用感のよさを確かめられるテストだ。

  • PCMark 10 Storageテストの結果

EXCERIA PRO SSDは最大性能だけではなく、実アプリによるテストでも高スコアを叩き出した。用途を選ばず優秀なSSDと言える。また、注目はエントリークラスのEXCERIA G2 SSDだ。最大速度はそれほど高くないが、実アプリベースのテストではEXCERIA PLUS G2 SSDに迫っている。価格と考えるとコストパフォーマンスはかなり良好と言える結果だ。

次は3DMarkのStorage Testだ。これは2021年11月に3DMark向けのDLCとして公開されたストレージ向けのベンチマーク。ゲームの起動やロード、プレイしながらの録画、ゲームがインストールされているフォルダのコピーなど、ゲーム関連のさまざまなテストを行ってスコアを出す。

  • 3DMark Storage Testの結果

当然ではあるが、EXCERIA PRO SSDがここでも強い。総合的に優秀であることが裏付けられている。PCMark 10 StorageではEXCERIA G2 SSDに並ばれたEXCERIA PLUS G2 SSDだが、3DMark Storage Testでは差を付けた。ゲーム用途では、EXCERIA PLUS G2 SSDは悪くない選択肢と言えるだろう。

ほとんどのNVMe SSDは、容量の一部をSLCキャッシュとして使い高速化する機能を備えている。ここでは、HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、そのSLCキャッシュ容量とキャッシュが切れた時の速度をチェックする。

  • EXCERIA PRO SSDのHD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

  • EXCERIA PLUS G2 SSDのHD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

  • EXCERIA G2 SSDのHD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

それぞれ200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを実行した結果だ。青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込み。SLCキャッシュは書き込み時に利用されるのでオレンジ色のラインに注目してほしい。EXCERIA PRO SSDは105GB付近でキャッシュが切れ、約1,200MB/秒まで速度が落ちた。EXCERIA PLUS G2 SSDは40GB付近でキャッシュ切れとなったが、切れて後も約1,400MB/秒を維持。キャッシュ容量は少ないが、その分高い速度を維持できる作りと言える。EXCERIA G2 SSDは25GB付近でキャッシュ切れ、切れた後は約750MB/秒まで落ちる。それでもSerial ATA接続のSSDよりも高速だ。

最後に温度をチェックしたい。TxBENCHでシーケンシャルライト(データサイズ32GB)を5分間連続して実行した時の温度とデータ転送速度の推移をHWiNFO64で測定している。今回のテストで使用しているマザーボード、MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFIのM.2スロットに搭載されてるヒートシンクを装着した状態で測定を実施した。なお、ケースに組み込んでいないバラック状態でテストを行っている。

  • マザーボードのヒートシンクを装着した状態で温度とデータ転送速度を測定した

  • 温度変化

それぞれのSSDの最高速度近くで連続書き込みと非常に負荷の高いテストだが、EXCERIA PRO SSDでも最大で69℃と問題のない温度。PCI Express 4.0 x4接続のハイエンドモデルとしては低い温度と言ってよいだろう。EXCERIA PLUS G2 SSDは最大57℃、EXCERIA G2 SSDは最大56℃と心配不要の温度だ。すべてのSSDで速度を落とすことで発熱を抑えるサーマルスロットリングの発生は見られなかった。

テストの結果から、EXCERIA PRO SSDはどの処理も得意な万能選手、EXCERIA PLUS G2 SSDはゲームのテストがよかったことからゲームのインストール用途にオススメしやすく、EXCERIA G2 SSDはエントリークラスだけに最大速度は高くないが実アプリのテストに優れることからアプリのインストール先に使いやすいと、それぞれ個性が出た。ユーザーは予算と目的に合わせて、自分にマッチしたものを選んでほしい。