離れて暮らす親の健康が気になる今日この頃。iOS 15の新機能「ヘルスケア共有」は、見守りの手段としてどの程度実用的なのでしょうか。少し離れた場所に住む筆者の母にApple Watchを持たせ、ヘルスケア共有を設定して試してみました。

今日も変わりないかな? の確認に最適

前回ご紹介したように、筆者が母の元を訪問し、Apple Watchのセットアップとヘルスケア共有の設定を行ってきました。これで、筆者のiPhoneから母のヘルスケアデータを確認できるようになりました。

  • 「ヘルスケア」アプリの[共有]タブに、母のiPhoneから共有されたデータが表示されます

それから2週間。「ヘルスケア」の「共有」タブを時々のぞいてみると、日々データが更新されていることがわかります。日頃連絡を取る機会が少ないので、こうした形でリアルタイムに様子がわかるのは安心です。一番のポイントは、お互いに面倒な作業を増やすことなく、毎日普通に生活する中で意識せず情報共有ができることです。

ただ、少し気になったのがアップデートのタイムラグにムラが大きいことです。比較的最近の情報が表示されることもあれば、3〜4時間更新されないのはザラで、1日以上更新がないこともありました。

  • [共有]タブを開いてみても、前日から更新されていない状態が時々発生。情報をPullするような機能は見当たりません

その時は別件でLINEのやりとりがあったので問題ないことは把握していたものの、もし連絡が取れなかったらかなり焦ったのではないでしょうか。共有された側からの情報Pullはぜひ追加してほしい機能です。

健康状態「見える化」の効果

一方で、母にとってはヘルスケア共有は意識せずに行われているものであり、通常の生活には影響ありません。影響があったのはApple Watchの方でした。特に「アクティビティ」で自分がどれだけ動いたのか(動いていないのか)が視覚的にわかることは、毎日Apple Watchを使うモチベーションになっているようです。

といっても、母が指標にしているのはリングの完成よりも「歩数」や「ウォーキング+ランニングの距離」です。「家の中にいたのに午前中だけで1km歩いた!」などと、家事や仕事(自営業)の成果を自慢げに話す母でした。

  • ゴミ捨てや掃除など、(置きっぱなしの)iPhoneでは計測されない家事などの歩数までカウントされるのが気に入っている様子

そんな感じで「ムーブ」は大体達成しているのですが、課題は「エクササイズ」です。ある程度運動強度の高い運動をした方が認知症のリスクを減らせる可能性があるんだって、とやんわり煽ってみたものの、「そうなのよ」と反応もやんわり。「だから気がついた時に早歩きをするんだけど、すぐ元の歩き方に戻っちゃうの」とのことでした。

これは一度エクササイズの目標値をグッと低くして、完成の達成感を味わってもらうのがいいのか。あるいは「ワークアウト」を使ってもらったほうが効果的か。もしくは、デバイスの機能による解決を試みない方がいい問題なのか…。

無理強いした結果モチベーションを下げてしまうことは避けたいので、ひとまず今は現状維持としました。

  • それでも時々は達成できている日がある様子。継続するうちに体力がついたりして、何か変わってくるかもしれません

「スタンド」も比較的よく達成できているようです。初回設定の際に通知はほとんどオフにしましたが、1時間ごとの「スタンドリマインダー」は残しておきました。基本室内生活なので、少しでも座りっぱなしを防ぐことがフレイル予防になればと思います。

通知に関してはもう一つ、「LINE」も通知が届くよう設定しておきました。母は家にいる間だいたいiPhoneをテーブルの上に置きっぱなしなので、通知に気づかないことがよくあります。Apple Watchに通知が届くとすぐ気づいてくれるため、返信が早くなったと妹たちにも好評です。

共有項目はカスタマイズが必須

前回母のiPhoneからヘルスケア共有を設定する際、共有項目の選択に「提案されたトピックを表示」を使用しました。基本的な項目はこの方法でカバーできます。

  • 「提案されたトピックを表示」を使用した場合。「通知」「アクティビティと歩行」「心臓の健康」「その他」の4つのカテゴリから項目を選択します。なお、データの入っていない項目は提案候補に表示されない場合があります

今回、これに「体温」を追加することにしました。以前から「時々微熱が続く」という話を聞いていたので、記録を取ってみてはどうかと提案したのです。具体的には、スマホ連携の体温計を購入し、専用アプリで記録できるよう設定を行なってきました。母に試してもらったところ簡単に使えたので、これなら大丈夫そうです。

  • オムロンのスマホ連携体温計と、専用の記録アプリ。Bluetoothかと思ったら音波でデータを送信する仕組みでした。ペアリングが切れた、みたいなトラブルで呼び出される心配がないのはありがたいです

これまでも熱が続く時には体温計で測ってはメモを取ったりしていたようですが、紙に数字だけ書き出してもなかなか把握しづらいのが難点です。しかしアプリなら手軽に正しく記録でき、自動的にグラフ化してくれるので、病院へ行った際にも「時々」「微熱」「続く」が実際にどの程度なのか、感覚でなく数値で伝えることができます。

そして、このアプリは「ヘルスケア」と連携が可能です。連携を設定した後、「ヘルスケア共有」の共有項目に「体温」を追加すれば、筆者のiPhoneからも体温の記録を確認できるようになります。

  • 「ヘルスケア共有」の項目は後からカスタマイズが可能。ただし、共有元のiPhoneからでないと変更できないので、帰省時にセッティングを予定している方はご注意ください

持病の管理や健康観察のために、親御さんが体重・血圧・血糖値などを計測している場合もあるでしょう。スマホ連携の計測機器を使えば、医師の診察時に状態を正確に伝えられるし、遠隔で状況を見守ることもできます。使う方の状況に応じて共有項目をカスタマイズして活用するのがおすすめです。

最後に

日頃、筆者と母とのやりとりは必要事項程度に限られていましたが、ヘルスケア共有とApple Watchのおかげで少しコミュニケーションの頻度が上がりました。本人にとっても、見える化された数字で自分の状態を知ることができるのは、良い体験になっているようです。お互いに気遣いなく健康状態をチェックするにはちょうど良い仕組みになるのではないでしょうか。

また筆者自身の体験から、長期的に計測を続けることで変わってくることもあると思われます(例えば、1日平均の歩行距離は2018年に6.8kmだったものが、2020年に7.9kmになりました)。母にも何か影響が現れてくるのかどうか、しばらく見守りたいと思います。