家電メーカーのバルミューダがスマートフォン事業に参入。新ブランド「BALMUDA Technologies」を立ち上げ、その第1弾として5Gスマホ「BALMUDA Phone」を発表しました。家電製品でも独自路線を歩むバルミューダを率いる寺尾玄社長が、「世の中のスマートフォンがあまりにも画一的」という不満から生み出したスマートフォンとして注目が集まっています。発表会&体験会から、実機のファーストインプレッションをお届けします。

  • バルミューダの製品が展示された東京・青山「BALMUDA The Store Aoyama」において、BALMUDA Phoneに触れることができます

「曲線しかない」スマートフォン

BALMUDA Phoneは、スペックとしてはコンパクトなミドルクラスのスマートフォンです。本体サイズは高さ123×幅69×厚さ13.7mm、約138g。例えばiPhone 13 miniが131.5×64.2×7.65mm・140g、iPhone SE(第2世代)が138.4×67.3×7.3mm・148gなので、そうしたスマートフォンに比べて縦が短く横幅と厚みが大きい、コロッとしたスタイルです。

  • コンパクトなデザインのBALMUDA Phone

  • 本体カラーはブラックとホワイトの2色

  • 本体背面

  • 右側がカメラ。左は指紋センサーが一体となった電源ボタン。中央にあるのはスピーカー。ちなみに、背面が外れて電池交換ができそうなデザインですが、カバーではないので取り外しはできません

  • 背面はややザラザラした感触。使えば使うほどこの塗装がはげて、それが味になるといいます

  • 背面のカーブが手のひらにフィット

  • 側面。SIMスロットもわずかに膨らみがあるように、曲線が使われています

  • 底面にあるのはUSB Type-Cとマイク

画面サイズはiPhone 13 miniの5.4インチよりさらに小さい4.9インチ。逆にiPhone SE2は4.7インチなので、BALMUDA Phoneのほうが少し大きくなっています。寺尾社長いわく、4.5インチから5.5インチまで0.1インチ刻みで最良のサイズを検証し、4.8インチに落ち着いたそうです。ただ、開発後半に5G対応とするためデザインを変更したことで、4.8インチでは収まらず、4.9インチになったとのこと。

  • 実際に持ってみると、軽量で持ちやすいデザイン

実機を手にすると、なんとなく「久しぶり」という印象のサイズ感。IS03のようなスマートフォン黎明期から、たびたびこうしたスタイルのスマートフォンは登場してきました。手のひらにフィットする背面のカーブを備えたスマートフォンは、今までもいくつか登場しています。

  • 曲線は手になじみます

BALMUDA Phoneは曲線を重視していて、むしろ「直線がない」としています。ディスプレイ自体は平面ですが、ディスプレイ周囲のベゼルはわずかにカーブ。ディスプレイを下にしてテーブルに置くとすき間ができて、爪を入れることで持ち上げやすくしています。

  • テーブルに置くと曲線がよく分かります

  • 平面に置くとわずかにすき間が生まれます

曲線をふんだんに使ったBALMUDA Phoneのデザインは、他社の現行モデルを見渡しても多くはありません。特に画面サイズを4.9インチに抑えているので、ワイシャツの胸ポケットにも収まりが良いのはポイントでしょう。

  • ワイシャツのポケットにすっぽり

BALMUDA Phoneは、画面サイズを重視せず、小さいボディのスマートフォンが欲しいという人にはぴったり。画面サイズと持ちやすさがトレードオフなのは間違いなく、小さいほうが可搬性には優れます。ただ、そうなると大画面を使った写真、動画、ゲーム、電子書籍といったコンテンツを楽しむには不利が生じます。

  • SIMスロット。eSIMだけにしてスロットをなくす、というのはさすがに時期尚早でしょうか

  • SIMスロットはシングル

1台ですませようと画面が大きくなるのですが、それをタブレットやPCに任せて、スマートフォンはコンパクトに、という考え方もあるでしょう。そうした意味では、BALMUDA Phoneにはメリットがありそうです。

BALMUDA Phoneはハイエンドではありませんが、Snapdragon 765、6GBメモリ、128GBストレージ、5G、ワイヤレス充電、FeliCaと、日常遣いに十分なスペックは備えています。実際に触ってみても、比較的サクサクと動作しています。オリジナルアプリのメモやスケジューラのピンチイン・アウトに多少の引っかかりは感じますが、動き自体は滑らかでした。

複数のスマホを持ち歩く人が、必要な機能を使い分けるという使い方でも良さそうです。そうしたニーズに対応できる端末を、今後提供できるかどうかでも評価が変わってきそうです。

オリジナルアプリを順次拡大、今後のサービスにも期待

懐かしさはありますが、一目で分かる独自性は感じられるデザイン。とはいえ、スマートフォンはハードウェアだけが重要なわけではありません。ホーム画面で独自性やカスタマイズ性を高めていることに加え、独自アプリも搭載している点が特徴です。

  • ホーム画面をさまざまにカスタマイズして、個人的なデザインにできるとしています

寺尾社長が「基本アプリ」と表現している、スケジューラ、メモ、ウォッチ、計算機という4つがオリジナルアプリです。BALMUDA Phone専用として、Google Playでも配布しないとのことで、BALMUDA Phoneユーザーだけが使えるアプリ群です。

  • ホーム画面以外のUIは比較的Android標準に近いものですが、オリジナルのアプリをいくつか搭載。ソフトバンク版は、ソフトバンクのアプリがいくつかプリインストールされているそうです

デザインと使いやすさを重視したということで、随所に工夫が盛り込まれています。スケジューラは、カレンダーのような月間表示7×5コマというUIではなく、縦に日付、横に時間が並ぶスタイル。ピンチイン・アウトをすることで、1日表示、1年表示まで拡大縮小できます。

  • オリジナルデザインのカレンダー。こちらはウィジェット

  • アプリではピンチイン・アウトで拡大縮小

ウォッチはタイマーやアラームなどの機能を備え、使い勝手や見た目の工夫を凝らしています。計算機では「億万」ボタンを押すことで、日本風の「1億800万」といった表示が可能。また、そのときのレートによる為替の変換機能も搭載しています。

  • 機能は標準的ですが、UIやデザインに配慮したウォッチ

  • 億万ボタンや為替変換が特徴の計算機

カメラアプリもオリジナル。BALMUDA Phoneのメインカメラはシングルレンズで、有効4,800万画素のセンサーから4画素を1画素として扱って1,200万画素で記録します。レンズのF値はF1.8です。なお、シャッター音は消せないそうですが、シャッター音もオリジナルの音を採用しています。

  • カメラアプリは、標準的な撮影に加え、特に「料理」モードに力を入れたようです。明るく暖色寄りの補正によって、シズル感を生かした写真が撮れるとしています

  • 料理モードではないですが、作例のひとつ。描写は一般的でしょうか

今後も、こうした独自アプリやサービスを追加していく、と寺尾社長。詳細は明らかにされていませんが、発表会のスライドでは「あ」のアイコンがあり、これは日本語入力かもしれません。いずれにしても、こうしたアプリやサービスは、BALMUDA Phoneをはじめとした「BALMUDA Technologies」ブランドの製品で重要な役割を果たすのでしょう。

  • 今後開発されるアプリが下段にあります

すでに、第2号機として大画面の「スマートフォンと呼ばれないもの」(寺尾社長)の開発もスタートしているそうです。恐らくタブレット的な製品だと思われますが、BALMUDA Technologiesブランドを構成する製品は、ハードウェアだけでなく、アプリやサービスを含めたトータルの世界観を考えています。

  • BALMUDA Technologiesの第1弾となる「BALMUDA Phone」を発表した寺尾社長

その意味でも、今回のBALMUDA Phoneだけでなく、継続的に製品を投入することが重要です。寺尾社長は、新たな製品を投入していく「覚悟も準備もしている」と話しました。

BALMUDA Phoneは、純粋なスペックに対して価格が104,800円と高めです。できればもう少しハイエンドに振って欲しい価格ですが(もしくはこのスペックならもっと安く)、もともとバルミューダの白物家電も単純なスペックでは図れない「体験」「価値」「値付け」を持っているので、ブランド戦略という意味では一貫しているでしょう。コスト的には、特にソフトウェアの開発費が「想定以上だった」(寺尾社長)としています。

ただ、ソフトウェアの開発費をきちんとかけて、「使い心地のいい」(寺尾社長)ハードウェアとソフトウェアを開発し続けることで、一定の評価は得られるかもしれません。もともと、寺尾社長も幅広いターゲットを想定しているわけではないようで、長く続けられるかどうかに注目したいところです。