総再生回数は1,150万回突破、動画発信の可能性を実感

BUZZ MAFFはさまざまな切り口から2年間で約650本の動画を発信。多く発信しているからこその発見や改善点も見えてきているとそうです。

「他のYouTuberさんも同じかもしれませんが、YouTubeでは人生をかけて、面白い動画を作るよりも、面白い取り組みや話題になる取り組みをできているかが、大きく問われると思います。中身がない政策紹介や目的があやふやな面白いだけのものは、動画としては面白くても閲覧数はあまり伸びません。『こういう風にしたい』『こんな政策を伝えたい』など、中身があった上で面白いものが爆発していると感じます」(安川氏)

農林水産省は長引くコロナ禍で牛乳や乳製品の消費が低迷し、影響を受けている酪農家を救うため、牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する「プラスワンプロジェクト」を実施。動画発信開始から約2年で総再生回数1,150万回を超えているBUZZ MAFFは「プラスワンプロジェクト」についても発信しました。

「プラスワンプロジェクト」について、安川氏は次のように語っていました。

「コロナ禍において給食向けに考えていた牛乳を廃棄しなければならないという危機がありました。そのとき、家庭用牛乳の需要を伸ばせばカバーできるという話になり、プラスワンプロジェクトの一環として、係長が牛の着ぐるみを着て「牛乳を飲んでくださいね」と呼びかけました。その結果、家庭用の牛乳の消費が2割上がり、生乳の廃棄を回避することに成功しました」

動画発信を通して着々と成果を上げているBUZZ MAFF。安川氏は「YouTubeと言ってもYouTubeの中だけで完結するものだとは思っていない」と話します。

「プラスワンプロジェクトも、まずはTwitterで広がりました。日本の場合、テレビへの露出も重要です。テレビで取り上げられることでTwitterもさらに盛り上がり、YouTubeのチャンネル登録者数も目に見えて増加します。真摯になって、自分たちの言葉で語りかけているからこそ、画面から想いが伝わるのだと思います」(安川氏)

プラスワンプロジェクトの他にも、農村を良くするプロデューサーになるための「農村プロデューサー養成講座」も取り上げました。安川氏は、「これは毎年やっていますが、あまり成果が出ていませんでした。そこで動画施策を取り入れたところ、Webの閲覧数が5倍になりました。BUZZ MAFFでの動画発信以外、例年やっていることと何一つ変えていないので、動画発信の可能性を感じました」とのことです。

  • BUZZ MAFFの「プラスワンプロジェクト」の動画。牛乳乳製品課の職員と牧場で働く“酪農ガール”がトークを繰り広げている

世界を動かす動画発信を目指す

BUZZ MAFFの今後の展望について、安川氏にうかがったところ、次のような答えが返ってきました。

「究極の目標は『日本の農林水産物の良さや農山漁村の良さを世界に発信しよう』ということなので、今後は英語を使った配信も検討しています。一方で、農村プロデューサー育成やプラスワンプロジェクトなど実際の政策とひもづいた発信は国を動かすことにつながります。面白いことをやるだけではなく、国民の皆様に還元できるような目に見える成果をあげていきたいと思っています」

外注をせずに動画発信を行うBUZZ MAFFですが、外注をする場合のポイントについても話していただきました。

「言いにくいのですが、外注は逃げです。発注側が『ツボは心得ているんだけど、時間がないからやってね』ということであれば外注をしてもうまくいきますが、それ以外はうまくいきません。

YouTube発信のような華やかなPRは、『PRごっこ』や『広報ごっこ』をやりたい人が集まりがちです。PRや広報もマーケティングの立派な手段の一つという強い意識を持ってやらないと、どうしても簡単なほうに流れてしまう。派手なほうに流れていくと、外注してタレントを起用することになると思いますが、絶対失敗します。主導する人は意識を高く持つことが大切です。

また、自分たちできちんと設計図を持っていないと、いろいろなものを売りつけられて失敗します。設計図をしっかり持った上で、足りないピースを補う。BUZZ MAFFの場合、著作権の確認など自分たちでもできることを第三者の目線も使ってダブルチェックしているからこそ、お堅い霞が関で発信できているのです。自分たちだけではなく、外の人が手伝ってくれるからこそ実現できることを見つけ、パートナーとして二人三脚で事業をしていくのがいいと思います」(安川氏)

今後さらなる進化を遂げるであろう農林水産省公式YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」の更なる進化から目が離せない。

著者プロフィール


ブライトコーブ株式会社 シニアマーケティングマネージャー 佐野通子

ネットワークインフラ、SaaS等の業界でBtoBマーケティングを約20年経験。マーケティング活動全般をマネージメントするオールラウンダーとして活動。その間、日系のITベンダーにおいて初のユーザー&パートナーカンファレンスを成功させる。また、直近の財務管理SaaSソリューションのグローバル企業においては、関連企業のCFOと連携しPRやマーケティング活動での実績を上げる。その後、数社のグローバル企業でのフィールドマーケティングでの実績を積み2021年8月ブライトコーブ入社。