NTTドコモは10日、2021年10月14日に発生した通信障害の対応状況に関する説明会を開催。担当者は、多くのユーザーに迷惑をかけたこと、社会や経済に多大な影響を与えたことを謝罪するとともに「これからもドコモのネットワークを安心してご利用いただけるよう、再発防止に努めていきます」と頭を下げました。
通信障害の概要
障害発生直後に開かれた記者会見で語られた内容と重なる部分もありますが、本日説明された10月14日の通信障害の経緯を見ていきましょう。
通信サービスの障害は10月14日に発生。17時37分から全国の約100万人のモバイル端末が圏外になるなど「まったく利用できない状況」となり、19時57分に解消されるまで、2時間20分にわたり影響が続きました。また「利用しづらい状況」は同日16時54分から15日22時00分まで、29時間6分にわたり発生。約460万人の音声通話、830万人以上のデータ通信に影響を与えました。
原因、その背景にあったもの
今回の通信サービス障害は、IoT端末の位置登録を管理する情報サーバを旧設備から新設備へ切り替える工事の過程で発生しました。このIoT端末は海外にもローミングアウトして使われているもので、その一部に位置登録できない不具合が発生。これはソフトウェア仕様の考慮漏れであったと分析しています。その後、旧設備への切り戻しを行いましたが、その手順の認識に齟齬があったため、IoT端末から大量の位置登録信号が発生してしまう事態になりました。
IoT端末から発生した大量の位置登録信号は、信号輻輳を引き起こしました。その結果、信号交換機の位置登録リソース(メモリ)を使い切り、信号交換機を共用している一般の携帯電話/スマートフォンにも影響が波及したということです。
そもそもの話になりますが、一般ユーザーの携帯電話/スマートフォンは「いま何処のエリアにいるか」という位置登録情報を介して効率的につながっています。今回の通信障害は、この手続きが完了できずに発生しました。
利用しづらい状況が長期化した背景には、2つの原因がありました。1つは、位置登録の規制を「IoT端末に限定」できずに「4G通信を行う端末全体」にしてしまったこと。もう1つは、事前準備不足によって復旧措置を早期に着手できなかったことを挙げています。
ドコモ側の情報発信の仕方にも問題がありました。同社では「利用できない状況」が解消したことを「回復」と表現しましたが、「利用しづらい状況」は解消しておらず、結果として回復に関する情報が錯綜。この点について「お客様目線で情報発信できていなかった」と謝罪しました。
再発防止に向けて
ドコモでは再発防止に向けて「切り替え工事の不具合」「携帯電話への影響拡大」「影響の長期化」「回復に関する情報錯綜」の4つの側面から、改善の取り組みを進めていくとしています。
今後については「今年の暮れから年明けにかけた次の工事に向けて、しっかり対応していきます」と説明。そのうえで、このような通信障害を二度と発生させないよう、しっかりと努めてまいります、と繰り返しました。
役員報酬を自主返上
なおドコモでは今回の通信障害に関して、代表取締役、および関係する役員が役員報酬を自主返上すると発表。井伊基之社長は月額報酬の20%を1か月、そのほかの役員は月額報酬の10%を1か月、自主返上するとしています。
補償はされる?
質疑応答には、引き続き、小林氏、音氏、引馬氏が対応しました。
影響規模の推計方法について、小林氏は以下の表のように説明。いずれも通常稼働時との差分から推計しています。なお影響規模は人数で示したものの、個人のスマートフォンとIoT端末を区別できないため、人数のなかにはIoT端末も含めているとのことです。
10月15日の記者会見では再発防止策を10月下旬に完了予定としていたところ、今回の説明会で公表された再発防止の取り組みの時期が後ろ倒しになっている点を問われると、小林氏は「今回の事象を分析していくなかで、いくつもの課題が明らかになりました。そこで改めてスケジューリングし、再発防止に努めることになりました」と回答。
組織的な問題もあったのでは? との指摘には「ドコモ社内のメンバーだけでなく、社外のメンバーとも連携しながら作業していました。サーバの切り戻し手順について事前に確認していたものの、詳細なところまでは確認が不足していた。細部までしっかり確認すべきだった、意識が足りていなかった、ということです」(小林氏)としています。サーバの「切り替え」「切り戻し」に関してはシステム全体の能力を考えて分割作業を予定していたものの、社外メンバーとの間で認識に齟齬があり、実際にはかなり偏った分割方法、信号の出し方になっていたと説明。当初にドコモ社内のメンバーが想定していた方法であれば、ネットワークの処理能力としては充分に捌けたはずとの考えを示しました。
今回の障害について補償はされるのか、返金の対象になるか、ユーザーにポイントやデータ容量を付与する考えはないかを問われると、小林氏は「契約約款では、24時間サービスが停止した場合に返金の対象になると示しています。通信を滞らせてしまったのは2時間20分で、それ以外の時間は『利用しづらい状況』であるものの利用できる状態でしたので、約款の24時間以上にはあたらないと判断しています。ポイントなどで対応することも、いまのところは考えていません」と回答しました。