よりよい未来社会のあり方を科学者と市民がともに考える国内最大級の科学イベント「サイエンスアゴラ2021」が3日、開幕した。科学技術振興機構(JST)が主催。16回目の今年は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、昨年に続きオンライン形式となった。7日まで5日間の会期中、「Dialogue for Life(ダイアログ・フォー・ライフ、Dialogueは対話の意)」をテーマに、あらゆる人々が知恵を持ち寄り、「総合知」を通じて科学技術の役割や社会の未来像を描くことを目指す。

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    サイエンスアゴラ2021の口火を切った「見どころ紹介」(オンライン画面から)

アゴラは所属や年代、国籍を超えて人々が対話する場を作ろうと2006年から毎年開催。日本科学未来館(東京都江東区)などを拠点としてきたが、昨年に続きオンラインに。遠隔地からも参加でき、地域や世代を超えた参加が見込まれる。先月10、11日に先行して開催した「プレアゴラ」と合わせ、全体で100件超もの企画を実施する。

3日は午前の「サイエンスアゴラ2021見どころ紹介」でスタート。イベントの概要説明に続き、サイエンスアゴラ推進委員会委員らがイベントへの期待や、お薦め企画を思い思いに語った。

席上、委員長を務める東京国際工科専門職大学の駒井章治教授は今年のテーマ「Dialogue for Life」の決定に至る、昨年末からの経緯を紹介した。開催時期のコロナ禍の状況が分からず悩ましい中、一時は人々を元気づける「リバイブ(revive=生き返る、復活する)」などの案も挙がったという。しかし「苦しんでいらっしゃる方がいる中で、あまりにも楽観的なのはどうか。今一度、生命や生活について話し合う時期になっているのでは」との考えに至ったという。

午後には「アゴラ市民会議『科学技術と想像力は互いを高め合うか』」など21企画が開催された。優れた研究を行う若手女性研究者や、女性研究者を積極的に支援する機関を表彰する第3回「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」が発表され、ジュン アシダ賞とJST理事長賞に計3人の研究者と1大学が輝いた。

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    「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」表彰式に続き、受賞者らが登壇して開かれたトークセッション=3日、都内

4日以降も、誰もが恩恵を受けているはずの動物実験について、歴史や現状、関係者の心的負担に触れながら考えを深める「どうぶつたちの眠れない夜にスペシャル 実験動物編」(5日)や、持続可能な自然との共生をテーマに、海と山で暮らす人々との対話を通じて暮らしを見つめ直す「海・山・人がつむぐ自然との共生:3.11を越えた未来へ」(7日)など、多彩な企画が続く。

企画には、開催日時が決まっており参加に事前登録が必要なものと、いつでも見られるオンデマンド配信の2通りがある。事前登録制の企画の多くは今年のテーマを反映し、参加者が気軽に発言できるよう対話の時間を設ける。

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