AIによる画像認識技術は、日々進歩し様々な場面で活用されているが、農業分野で積極的に活用する企業のひとつがスカイマティクスだ。同社は、ドローンを使って農地を精密撮影し、画像をクラウドで管理し、AI画像認識技術を活用し、農産物の育成状況から収穫量までを解析、農業をDXするサービスを提供している。今回は、「農業は自然を扱う製造業。生産のための設計図を提供する」というコンセプトのもと開発された新サービス「IROHA(いろは)アグリメントクラウド」を10月13日から15日まで幕張メッセで開催された「第11回 農業Week」内の「第8回 国際スマート農業 EXPO」に参考展示していた。「IROHA アグリメントクラウド」とはどのようなものかレポートする。
スカイマティクスは2016年、三菱商事で衛星写真を活用するビジネスに従事していた渡邊善太郎氏が設立。いち早くドローンを活用した農業向けのリモートセンシングサービスの企画、開発、販売を行い現在他の産業分野にも進出している。同社は、ドローンや観測衛星など対象物に直接触れず観測するリモートセンシング技術とそれを活用した地理空間情報システム(GIS)、そして、AIを活用したデジタル画像解析技術の三つの強みを持つ。特に物体検出、色味解析、面積・距離の算出、マルチスペクトル解析、地形解析、SFM処理(複数のドローンで撮影した画像を一枚のマップに組み合わせる技術)などで技術を見せる。それらの技術を活用し、農地を撮影した画像データを解析し農業経営を見える化するソリューション「IROHAアグリメントクラウド」だ。
同ソリューションはクラウド上で、ドローン等で撮影した画像からAIを活用し様々な解析機能により農地の情報を抽出する葉色解析サービス「IROHA」に、経営面で農業を支援する情報一元化サービスを組み合わせたもので今回は、参考出展となる。2022年春の提供に向けて現在、準備を進めている。「IROHA」で提供される解析メニューに加えて顧客に応じたオリジナルのカスタマイズも行われ、農地別の収穫量ランキングや収穫予定日の近い農地リストなどを一覧できるダッシュボードの提供も行われるという。展示会では、雑草診断、葉色診断、欠株診断、生育診断、収量診断、NDVI(正規化植生指標)などの豊富な画像解析サービスのデモを実際に見ることができた。
これらの技術に関して同社の開発担当者は、「機械学習においては、データを持っていることが何よりも重要で、開発では実際に現場に赴き、野菜の大きさや重さ色、など、ドローンで撮影した写真と実際の現物のデータとのすりあわせを繰り返し学習させ、より正確なデータにしていく努力が必要だった」とコメント、現在も全国の農場へ出張し調査を続行中だという。成果として現在、「IROHA」では、キャベツ、レタス、ブロッコリー、水稲で技術を確立しており、今後順次、タマネギ、サツマイモと研究対象を広げる予定だ。
画像データはクラウドにアップロードされるので、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを活用し、どこからでも農地の状態の確認することが可能になる。これにより、取引先の企業や農協などの営農指導員、他関係者と情報の共有が可能になり、農産物の発注状況の確認や生産調整、病気や虫害に対するアドバイスなど情報のやり取りも効率化することができる。将来的には、農地に直接訪れることなく農地の経営も可能なリモート農業の実現も可能になるそうだ。同社は展示会に「IROHA」以外にも派生サービスである自治体向けの農業管理業務をドローンの画像解析技術で代行する「いろはMapper」や撮影した米粒画像からAIで玄米等級を判定・表示するAI米粒等級解析「らいす」などを展示していた。今後も農地経営DXのために様々なソリューションの開発を行っていくだろう。