JVCケンウッドは、ビクターブランド初の“木の振動板”を使った完全ワイヤレスイヤホン「HA-FW1000T」を11月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格は39,600円前後を見込む。

  • HA-FW1000T

最大の特徴は木の振動板を使っていることだが、ハイレゾではないAACなどのBluetoothコーデックで伝送したときも、イヤホン側でハイレゾ相当に拡張する高音質技術「K2テクノロジー」を内蔵しているのも大きなポイントだ。

  • 付属の充電ケースに収めたところ

ビクターではこれまで、木の振動板をドライバーに採用した有線イヤホン「WOODシリーズ」を展開しているが、その完全ワイヤレスバージョンとして新たに「HA-FW1000T」を開発。既存のTWS(完全ワイヤレスイヤホン)の音質に満足できていない、ハイクラスな音質を求める層や、木の振動板のサウンドを好む人をターゲットに展開する。

さらに、JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントが運営するビクタースタジオのエンジニアが音質チューニングに参加し、JVCケンウッドが培ってきた音響設計技術に、音楽制作現場に携わるスタジオエンジニアの知見を加えることで「プロが認めた音」に仕上げた。

HA-FW1000Tの主な特徴

ビクターでは原音探求という理念を掲げ、長年にわたりこだわりのオーディオ機器に「木」を採用してきた。理想的な振動板の素材について、同社は「音の伝わり方が速く、余分な振動を吸収するもの」と説明している。レスポンスの速さは楽曲の細かい音まで表現でき、内部損失の大きさは素材そのものの音がなくなって澄んだ音になるというメリットがある。

同社のウッドドームカーボン振動板は、レスポンスは低いものの適度な内部損失を持つPETをベースに、金属に近いレスポンスの無垢のカバ材を組み合わせて、高いレスポンスと大きな内部損失を獲得。さらにカーボンコーティングを施し、澄んだ音色を奏でられるようにしているのが特徴だ。

  • イヤホン本体のタッチセンサーにあたるプレートに、ビクターブランドの象徴である「犬のマーク」をあしらった。透かして見ると、木の目のデザインがわずかに見える

HA-FW1000Tで採用しているウッドドームカーボン振動板は、有線のハイクラスイヤホンと同等の新開発のもの。ドライバーの口径は11mmで、ワンランク上のクオリティで高音質化を追求した。また、有線のハイクラスモデルと同等のステンレス製ドライバーケースを組み合わせて音の雑味を排除する作りになっている。音作りについては、2018年発売のフラッグシップイヤホン「HA-FW10000」と同じ方向性を目指したという。

小型サイズながら、ドライバーユニットの背面に音響のための空間(チャンバー)も確保。「低域から高域まで余裕のある再現力で、有線ハイクラスモデルの空間表現に近づけた」という。音質を優先し、イヤホン本体は雨や水しぶきに強いIPX4相当の生活防水仕様とした。

  • 外から直接は見えないが、この中に木の振動板を採用したダイナミック型ドライバーを搭載する

Bluetoothコーデックは、SBC/AAC/aptXに加えて、aptX Adaptiveもサポート。スマートフォン側が対応している場合は、aptX Adaptiveの最高品質である96kHz/24bit伝送に対応する。

ハイレゾ音質で伝送できないSBCやAACなどのBluetoothコーデックでは、サウンドを最高96kHz/24bitのハイレゾ相当まで拡張して原音に近づけるという、ビクター独自の高音質化技術「K2テクノロジー」が利用できる。この技術を完全ワイヤレスイヤホンで搭載するのはHA-FW1000Tが初めて。

ユーザーがK2技術をオン/オフすることもできる。なお、上記のaptX Adaptiveの96kHz/24bit伝送時は、K2は自動でオフになる。

接続面では、クアルコムの左右同時伝送技術「TrueWireless Stereo Plus」に対応。Bluetooth 5.1とPower Class 1に準拠するとともに、高性能LDSアンテナも採用して安定したワイヤレス接続を追求した。

  • iPhone 12 miniと並べて置いたところ。K2技術をオンにして坂本真綾「お望み通り」を聴くと、曲の後半で楽器の音が入り乱れる箇所が、AACコーデックでもごちゃつかず、非常にクリアに聴こえた

イヤホンのハウジングプレートに軽く触れて操作できる、タッチコントロールを採用。100段階で1dB単位で好みの音量に変えられるボリューム調整や、再生/一時停止、曲送り/曲戻し、電源のオン/オフ、着信応答、Bluetoothのペアリングなどの操作のほか、上記のK2のオン/オフも行える。音によるフィードバックによって確実な操作をアシスト。タッチの誤操作防止も実現した。なお、イヤホン操作用の専用アプリは用意していない。

ノイズキャンセリング(NC)機能は、フィードバック方式とフィードフォワード方式を組み合わせたハイブリッドタイプで、クアルコムのアダプティブNC技術を採用。イヤーピースの密着度を常に検出して、ズレてもNCレベルを自動補正することでノイズ低減効果を高めている。また、イヤホンを着けたままでも会話できる「タッチ&トーク」(外音取り込み)機能を搭載しており、ワンタッチで音量を下げるとともにマイクで外音を取り込む。

通話機能に関しては、マスクを着けたまま通話する人が増えたことを受け、「マスクモード」を搭載した。同機能をオンにすると、自分側のこもった声をクリアに補正し、通話相手に届けてくれるというものだ。ほかにも、クアルコムのcVcノイズキャンセリングテクノロジーと、MEMSマイクを採用して通話のノイズを低減。スマホなどを操作せず、イヤホン側で通話マイクをオン/オフできる。

連続再生時間はイヤホン本体のみで約9時間(NC・K2オフ、AAC再生時)。充電ケースによるフル充電(約18時間)を合わせて最大27時間となる。安定した装着感のために、耳に沿ったカーブを持たせたデザインを採用。耳と面で保持する形状を採用した。

付属のイヤーピースは新開発の「スパイラルドットPro」。イヤーピース内壁に設けたディンプルで、音質劣化の原因となるイヤーピース内の反射音を拡散させ、音のにごりを抑制する仕組みは同じだが、さらに新たなスパイラル状の凸形状を追加。全体のフォルムも調整して装着性と密閉度も高めており、より繊細な音の再現性も高めたとする。耳に最適なフィット感を得られるよう、5つのサイズ(S、MS、M、ML、L)を付属する。

  • 付属のイヤーピースは、イヤーピース内壁に設けたディンプルで音の濁りを抑制する、独自の新開発「スパイラルドットPro」を採用

  • 充電ケース上部にもビクターの「犬のマーク」を刻印

  • ケース背面に充電用のUSB Type-C端子を備える。なお、ワイヤレス充電には非対応