名古屋市立大学(名市大)は10月11日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)採択テーマとして国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟にて2019年7月に実施された、コロイド微粒子の会合・凝集に関する実験結果として、地上に届けられたサンプルから、地上では作製が困難な高比重の「チタニア粒子」(二酸化チタン粒子)のクラスターなどが形成されたことを確認したと発表した。
同成果は、名市大大学院 薬学研究科 コロイド・高分子物性学分野の山中淳平教授、同・奥薗透准教授、同・豊玉彰子准教授、名市大 研究科 精密有機反応学分野の樋口恒彦教授、豪州・中性子科学技術機構のJitendra Mata博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、10月11日に開催された「The 8th Asian Particle Technology Symposium」で発表され、また10月13日から15日にかけて開催される「日本マイクログラビティ応用学会 第33回学術講演会」でも発表される予定だという。
コロイド粒子は適切な条件を選ぶと、分散液中で自発的に集合して、さまざまな秩序構造を形成することが知られており、多数の粒子が形成する規則配列構造(コロイド結晶)については、半世紀以上にわたって研究が行われてきた。また近年では、結晶成長の初期過程や、細胞内でのタンパク質複合体の形成まで、自然界に広く観察される物質である数個から10個程度の少数の粒子系が作る、クラスターの研究も活発となっているという。
コロイドクラスターは光学分野の材料として期待されるが、光学応用には高屈折率の材料であることが求められ、高屈折率材料は通常は高比重であるため、地上では沈降の影響が大きく、正確な実験ができないという課題があった。
JAXA宇宙実験プロジェクト「微小重力を用いた多成分会合コロイド系の相挙動の研究」(略称:Colloidal Clusters)は、大きさが約1μm程度のコロイド粒子が水中で自発的に集合して形成するクラスターについて、ISSの微小重力環境で研究するというもので、実際の実験では、正と負に帯電させたコロイド粒子が各々分散した液を混合させて行われたという。
これらの液には、紫外線が照射されると液体が「ゲル」になる化合物があらかじめ溶かされており、クラスターの形成後に紫外線が照射され、試料の固定が行われた後、地上に移送され、サンプルの観察が行われたところ、さまざまなクラスターが形成されたことが確認されたという。
確認されたうちの1つが、約3という地上では形成が不可能な高い比重を持つチタニア粒子のクラスターだという。チタニア粒子は地上では沈殿してしまうため形成困難で、このようなクラスターが形成できるのは微小重力環境のISSならではだという。
研究チームによると、今回得られた成果は、フォトニック結晶やコロイド粒子を利用したセンサー作製のための基礎データとして、今後の活用が期待されるという。なお、今回形成されたクラスターの中には、四面体型のコロイドクラスターがさらに集合して形成する「ダイヤモンド格子」構造など、光を閉じ込める材料として期待されるクラスターなども確認されているとする。