日本マイクロソフトは、10月11日~14日の4日間、オンライン上のデジタルイベント「Microsoft Japan Digital Days」を開催している。2日目には、同社代表取締役 社長の吉田 仁志氏が登壇。「“Revitalize Japan” 日本社会の再活性化に向けたデジタル トランスフォーメーション(DX)」をテーマに講演を行った。

  • 日本マイクロソフト 代表取締役 社長 吉田仁志氏

    日本マイクロソフト 代表取締役 社長 吉田仁志氏

同氏は冒頭、自身が履いているハンドボール 用のスマートシューズを紹介。このシューズにはセンサーが内蔵され、Azure上にデータが蓄積されていくという。この仕組みは、神戸デジタル・ラボとアシックスが共同開発したもので、工場での安全な動線の分析にも使われているという。今後は配送や子供の健康増進にも利用されるということだ。

  • 吉田氏が紹介したアシックスのハンドボール用シューズ

吉田氏はこの事例について、「これは、データを活用することで、新たなビジネスが生まれ、予測不能な危機的な状況や課題に対しても、柔軟性を持った組織、ビジネスモデルをつくっている例だ。変革に必要なのは、新たなビジネスモデルだ。デジタルトランスフォーメーションは経済や社会にとっての近々の課題だ。総務省の情報通信白書 2012年度版によると、日本でデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる企業の割合は、わずか13%に過ぎないという衝撃的な結果が明らかになった。日本のデジタルトランスフォーメーションは待ったなしといえる」と語り、DXの必要性を訴えた。

そして、同氏はDXにおいて重要なポイントを3つ挙げた。

1つ目は断捨離で、本当になくす、人に託す、技術に託すことだという。2つ目が儲かる仕組みづくりで、イノベーションを起こしやすくすること。3つ目が素早い決断だという。

「社会や市場の変化に遅れることなく、素早く変革し続けること。レジリエンシー(resiliency:回復力)を身につけることが重要で、ビジネスモデルをいかに変え続けられるかがキーとなる」(吉田氏)

そして、DXを成功させる要素として、「ビジョンと戦略」、「組織文化」、「独自性」、「人材」を挙げ、「変革への第一歩として、まず、組織が向かう方向を明確にして、実現するアプローチを定める必要がある。組織文化は企業にとって最大の強みともなるが、最大の弱みともなる。社員全員で共通の価値観を持つこと、アイデアやアプローチの多様性を受け入れ、常にチャレンジし続ける企業文化が変革をドライブする。また、他社との差別化ポイントや自社の市場価値を見出して、独自のポジションをつくることが重要だ。そして、スキルを習得するだけでなく、デジタルを使いこなせる人材を育成することが大切だ」と語った。

  • DXのポイントを語る吉田氏

今年度のマイクロソフトは「“Revitalize Japan” 日本社会の再活性化」を最優先課題として取り組んでおり、吉田氏は「マイクロソフトは日本社会を再活性化するために、全社を挙げて社会のデジタル化、デジタルトランスフォーメーションを支援する」と述べた。

同氏はRevitalize Japanについて、大企業、中堅中小企業、公共のそれぞれのセグメントでの取り組みを説明した。

大企業向けでは、自動車、製造、小売のDXをサポートすることで、それぞれの産業の成功事例をつくり、業界全体のDXの活性化につなげるという。

中堅中小企業では、リモートワーク環境の整備、クラウド化、安全なビジネス環境の構築を支援するという。

「中堅中小企業のクラウド利用は5年間で10倍に伸ばす必要がある」(吉田氏)

公共ではグローバル企業である特徴を生かし、世界各国の成功事例や知見をもとに、日本のDXを支援するとした。

同氏はRevitalize JapanのエンジンとなるのがMicrosoft Cloudで、増えていくデータを処理するために世界中にデータセンターがあり、ハイブリッドワークにTeamsが不可欠なインフラになっているとした。また、セキュリティに毎年10億ドル以上を投資しており、今後5年で200億ドルを投資していくとし、昨年、300億件の電子メール攻撃、310億件の認証攻撃を阻止したとアピールした。

そして最後に同氏は、「デジタルトランスフォーメーションといえばマイクロソフト、マイクロソフトといえばデジタルトランスフォーメーション。そう思ってもらえるように努めていく」と語り、講演を締めくくった。