米国時間の10月7日(日本時間では10月8日)、Ubisoft EntertaimentからFar Cry 6が発売される。おなじみFar Cryシリーズ最新作ということでお待ちの読者も少なくないだろうと思う。
さてそのFar Cry 6であるが、AMDのFSR(FidelityFX Super Resolution)が利用可能である。FSRは以前こちらで紹介したが、要するに超解像技術を通常のシェーダーを搭載したGPUで利用可能という技法であり、単にAMDのRadeonシリーズだけでなくNVIDIAのGeForce GTXシリーズなどNVIDIAのDLSSが利用できないビデオカードでもその恩恵に預かれるというものだ。
今回、このFar Cry 6の性能を事前に確認できる機会に恵まれたので、性能評価の結果を取り急ぎご紹介したい。ちなみに今回利用したのはプレス向けの評価版という扱いなので、製品版では多少性能差が出る可能性がある事を予めお断りしておく。
ベンチマーク方法
Far Cry 6のゲームそのもののレビューは他で沢山出てくるであろう、ということで割愛し、ベンチマーク方法について。インストール後に立ち上げると、まずSprash Screen(Photo01)が暫く表示されるが、この右下の数字が0になるとゲームスタートである。メインメニュー(Photo02)から"OPTIONS"を選び(Photo03)、まず"VIDEO"のMonitorタブ(Photo04)で解像度を選択する。次がQualityタブ(Photo05)だが、上の方でまとめてGraphics Qualityが設定できるので、こちらを使うのが便利である。ちなみにこのGraphics Quality、Low/Medium/High/Ultraの4段階だが、これがプレビューの形で表示される(Photo06)のはちょっと便利である。
Qualityタブの下の方にはDXRとFidelityFX CASの設定がある(Photo07)。こちらもOn/Offでプレビューが表示されるので判りやすい(Photo08,09)。
V-Syncの設定とか、FSRの設定などはAdvanced Settingsタブ(Photo10)にまとめられている。ここでFSRをOnにすると、FSR Modeを4種類(Photo11)から選択可能だ。
以上で設定が終わりであり、ここでF5キー(Test in Benchmark)を押すなり、メインメニューに戻ってBenchmarkを選ぶとIn-Game Benchmarkが実行される。おおよそ実行時間は60秒前後で、ベンチマークが終わると結果が表示される(Photo12)。この結果はMy Gamesの下のFar Cry 6フォルダにhtmlファイルの形で自動保存される(Photo13)。
ちなみにOCATなどのフレームレート取得ツールを噛ませるとベンチマークが正常に動作しない。幸いにもhtmlファイルの中に、フレームレートの生の変動値が保存されている(htmlファイルの最後の方に"const data = [.....]"として格納されている)ので、これを利用して(1秒単位の荒いものではあるが)フレームレート変動も取得できるので、一応確認には利用できる格好だ。
ちなみに今回、Radeon RXシリーズに提供ドライバでは問題が無かったが、GeForce RTXシリーズは最新ドライバ(Version 472.12)を利用しても、画面右上にこんなダイアログ(Photo14)が表示されっぱなしであった。おそらくFar Cry 6の発売に合わせてNVIDIAも対応ドライバをリリースすると思われるが、原稿執筆時点ではβドライバサイトでも対応版は上がっていないので、このまま実施している。まぁ事前Previewということでご容赦いただきたい。
ベンチマーク結果
表1に今回のテスト環境を示す。今回、タイミング的にはギリWindows 11が「間に合わなくもない」状況ではあったが、テストそのものは10月5日以前に完了してしまった関係で、Windows 10のままとさせていただいた。
■表1 | ||
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CPU | Ryzen 7 5800X | |
M/B | ASRock X570 Pro4 | |
BIOS | P5.10 | |
Memory | Micron 16ATF2G64AZ-3G2E1(DDR4-3200 16GB CL22)×2 | |
Video | ・ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC ・NVIDIA GeForce RTX 3080 Founder Edition |
・BIOSTAR Radeon RX 6600 XT ・AMD Radeon RX 6800 XT Reference |
Driver | GeForce GameReady Driver 472.12 DCH WHQL | Radeon Software 21.10.1 Sep27 Non WHQL |
Storage | ・Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot) ・WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 21H1 Build 19043.1237 |
ビデオカードはRadeon RX 6600 XTとRadeon RX 6800 XTに加え、GeForce RTX 3060とGeForce RTX 3080を用意した。Radeon RX 6800 XTとGeForce RTX 3080が描画品質最高の構成で、Radeon RX 6600 XTとGeForce RTX 3060がエントリ向けにやや描画品質を落とした構成でそれぞれテストを行っている。具体的には
・Radeon RX 6800 XTとGeForce RTX 3080
Graphics Quality : Ultra
HD Texture : On
FSR : なし or UltraQuality
・Radeon RX 6600 XTとGeForce RTX 3060
Graphics Quality : High
HD Texture : Off
FSR : なし or Quality
としている。
解像度は何時もの通り2K(1920×1080pixel)/2.5K(2560×1440pixel)/3K(3200×1800pixel)/4K(3840×2160pixel)とし、Anti-AliasingはいずれもTAA、DXR ReflectionsとDXR ShadowingはOn、FidelityFX CASはOffを共通設定としている。
さて、まずはGeForce RTX 3080とRadeon RX 6800 XTについて。グラフ1~3が平均/最大/最小フレームレートである。平均フレームレート(グラフ1)から判る通り、FSRなしだと2Kは完全にCPUがボトルネックになっている格好。ただそこから緩やかに性能が下がっているあたりは、2.5KあたりでCPU性能とGPU性能が釣り合い、その先はGPUボトルネックになっている印象だ。これがFSRを有効にすると、3Kあたりまで完全にフラットになっており、4Kでやや落ち込むといった感じであり、このクラスのGPUを使えば4Kで解像度最大にしても十分プレイ可能であることが再確認出来た格好だ。FSRもUltra Qualityであれば全く描画が劣化した印象は感じられない。
最大フレームレート(グラフ2)はまぁこんなもんだろうという感じ。最小フレームレート(グラフ3)が暴れているのは、時々スパイク状にフレームレートが悪化する事があるためである。もっとも1秒の間ずーっとフレームレートが下がるというよりは、本当に1フレームだけ妙に悪化するという感じではあるのだが、それを確認するにはOCATの様に全フレームを取得するツールの併用が不可避なので、今回はどうしようもない。
グラフ4~7が、各解像度におけるフレームレート変動である。もう2K(グラフ4)とか2.5K(グラフ5)はCPUのボトルネックもあってか、FSRの有無での性能差はまるでみられないのはまぁ想像した通り。3K(グラフ7)あたりから、FSRの有無で性能差が明確に出てきており、4Kではかなり明確に差が出ている。ただ時間で言えば55秒前後(シーンで言えばトラックが撃破され、戦車が近づいてくるあたり)からあまり性能差がなくなりつつあるのは、この辺りが一番負荷が高く、FSRの貢献も少なくなるということだろうか?
次はGeForce RTX 3060とRadeon RX 6600 XTの対決である。このクラスだと絶対的な描画性能が不足しており、Qualityをやや下げ、HD Textureを利用しない様にしても、やや性能には不足がある。グラフ8が平均フレームレートだが、FSRなしだと見事な直線になっている。とはいえ2Kなら80fps程度、2.5Kでも63~64fpsを確保しているから、2K~2.5Kならそこそこ実用になるのは事実だ。これがFSRを使うと、それでも4Kはギリギリではあるが、3Kあたりまでは割と現実的に利用できる性能に引きあがるのは、やはり意味があることである。
最大フレートレート(グラフ9)はまぁ順当な結果であるが、FSRなしだと4Kは40fpsそこそこなのが、FSRありだと70fps近くまで跳ね上がるあたりも、この効果が判る。今回はQualityモードでの設定だが、Balancedまで上げれば(画質は落ちるが)4Kも現実的にプレイできる範囲に入りそうだ。逆に最小フレームレート(グラフ10)は、特にRadeon RX 6600 XTのFSR有効時のバラつきが大きいのが気になるところであるが、ラフに言って「こんなもん」であろう。
グラフ11~14が各解像度におけるフレームレート変動である。傾向で一番判りやすいのは2K(グラフ11)だと思うが、冒頭10秒くらいでFSRを有効にすると、フレームレートがやや高めとなり、これがグラフ8の平均フレームレートのFSR有効/無効の差を大きく見せている感がある。ただその先は大体20fps弱のブースト、という感じである。この20fps前後のブースト、というのは2.5K(グラフ12)~4K(グラフ14)でも共通といったところだ。4Kに関して言えば、FSRを利用すれば一応60fps前後を維持できているようには見えるが、欲を言えばもう少しマージンが欲しいところで、その意味でもFSRはBalancedモードに設定した方が良いかもしれない。もっともBalancedにして4Kでプレイするのと、Qualityのまま2.5Kでプレイするの、どちらが快適か? と言われたらQualityで2.5Kの方という気がする。
ということで
簡単にFar Cry 6の性能を確認してみた。概して言えば前作のFar Cry 5から大きく負荷が上がった、というほどのことはなく、DXRを有効にしても現在のRadeon RX 6000シリーズとかGeForce RTX 3000シリーズなら十分プレイできるものとなる。
この考察を書いている真っ最中に、AMDからはWindow 11とFar Cry 6に正式対応し、他にBattlefield 2042のOpen BetaやNaraka: Bladepointに対応、更にPUBGのDX12モードで性能を11%引き上げたというRadeon Software Adrenalin 21.10.1がリリースされた。NVIDIAの方は、現状のVersion 472.12が既にWindows 11対応という事もあってまだFar Cry 6対応版はリリースされていないが、これも記事公開時には何かしら登場しているのではないかと思う。そんなわけでFar Cry 6をお待ちの読者は安心してプレイしてほしい。
それにしても、である。今回AMDが試用版を提供してくれた理由はおそらく「Far Cry 6はFSRで性能が上がる」ことのアピールであると思うし、それは実際に確認できたことではあるのだが、FSRがNVIDIAのGPUでも問題なく使えるがゆえに、GeForce RTX 3060 vs Radeon RX 6600 XTの比較で言えば、グラフに見るように「GeForce RTX 3060の方がむしろ性能が上がる」という結果になったのは、なんともロックである。
グラフ11~14で言えば、グラフ11は同等として良いだろうが、グラフ12~14で言えば「FSR有効時は」明らかにGeForce RTX 3060が優位に立っている。FSR無効時はどっちもどっち、という事を考えると、余計にもこのGeForce RTX 3060のFSRとの相性の良さが引き立つ格好になってしまったのはどうしたものか。まぁその意味では、DLSSよりもFSRが普及した方が、より広い範囲のユーザーにメリットがある、という事になるのかもしれない。