スクウェア・エニックスは、ダンジョン探索RPG『ダンジョンエンカウンターズ』を、2021年10月14日に発売する。価格は3,520円。プラットフォームはPlayStation 4、Nintendo Switch、Steamで、いずれもダウンロード販売のみ。
『ダンジョンエンカウンターズ』は、ビジュアルや演出などを極限までシンプルにした、ダンジョンの地下深くへ潜っていくタイプのRPG。ゲームシステム自体を最大限楽しめるような工夫が施されているのが特徴だ。シンプルなビジュアルとはいったいどのようなものなのか。また、どんなゲーム性なのか。発売に先立って行われた試遊会での様子をお伝えする。
これが街? マス目と数字で構成されるシンプルなマップ
『ダンジョンエンカウンターズ』をプレイすると、まずグラフィックのシンプルさに驚かされる。今回の試遊は街からスタートしたのだが、武器屋や道具屋などのイラストは存在しない。基本的にマップにあるのは「マス目」と「数字」だけだ。シンプルなグラフィックとはいえ、さすがに簡易な建物のイラストくらいあるだろうと思っていたら、どこを探しても数字しか見当たらなかった。
一般的なRPGの場合、ゲームを起動すると、まず舞台の説明やキャラクター同士のコミュニケーションがあるだろう。最近であれば壮大なCGやアニメーションが流れることも少なくない。
だが、同作においてそのような演出は不要なのだ。あくまでゲームシステムを楽しむよう設計されているため、キャラクターはまるでボードゲームのようにマス目の床を移動し、すべてのイベントは「16進数」の英数字で示される。
試しに数字「00」のマスに止まってみると、「EVENT00 アカデミー」と書かれたガイドが出現。実行すると、パーティーの入れ替え画面に遷移した。つまり、「ドアを開けてアカデミーに入り、受付の人に話しかけてメンバー編成を行う」といった一連の流れから、グラフィックやアクションが省略されているイメージだ。
また、各キャラクターのエピソードは確認できるものの、キャラクターとの会話も、仲間になるまでのドラマもない。アカデミーでは、淡々と利用可能なメンバーをピックアップして最大4人の編成を組む。
アカデミーには24人がリストアップされていたが、使えないキャラクターも見かけた。パーティーに加えられないキャラクターの名前の横に書かれていたのは、階と座標、もしくは行方不明という表示。なかには「戦闘不能」や「石化」といったステータス情報が書かれているキャラクターもいた。プレイヤーがダンジョンでそれらのキャラクターを見つけることで使えるようになるらしい。
さて、パーティーをそろえたら、次は装備も手に入れておきたいところ。「武器屋は……」と探してみても、もちろんわからない。なぜなら数字で書かれているからだ。だが、手探りですべての番号を確認しなければならないほどハードなゲームではないので安心してほしい。「メインメニュー」から「イベントブック」を開けば、00からFFまで、すべてのイベントを確認できるようになっている。とはいえ、ゲームを進めていけば、同じ番号のイベントに何度も遭遇するはず。おのずと数字は覚えていくだろう。
ちなみに武器を販売している「キメラ武器店」の番号は「14」、魔法を販売している「ウィザード魔法店」は「15」だった。武器と魔法は2つずつ装備可能。それぞれに「装備コスト」が設定されているので、その合計値がキャラクターごとの「装備ポイント」内に収まるようにセットする。
武器屋と魔法屋以外にも、街には「スケルトン重装備店」「マミー服店」といったお店や、「HP回復」や「毒回復」といったイベントマスを見かけた。
ダメージ計算を考えて戦うバトルがおもしろい!
街の階段を下ったら、そこはもうダンジョン。といっても、ダンジョンに降りる際に「地底世界」と書かれたイメージビジュアルが表示される程度で、それ以降画面に写っているのは相変わらずマス目と英数字のみだ。
早速、近くの「71」マスに行ってみると、移動アビリティ「バトル番号表示」の獲得というガイドが表示された。どうやら、ダンジョン内にある戦闘イベントの番号が見えるようになるらしい。
ただし、いつでもどこでもアビリティを装備できるわけではない。アビリティの装備はイベント番号「03」で行う。「71」イベントのすぐ横に「03」のイベントがあったので、試しにバトル番号表示のアビリティを装備。すると、近くのマス目に黒い文字で「01」イベントが出現した。
せっかくなので、出現したバトル番号「01」に突撃。「ゴースト」と「ワイルドボー」が現れた。バトルはファイナルファンタジーシリーズでおなじみの「アクティブ・タイム・バトル(ATB)」だ。時間経過でATBゲージが増加し、マックスになると戦闘コマンドが表示される。
バトル画面では、敵味方ともに「防」「魔防」「HP」の数字が表示されている。HPをゼロにすれば撃破できるわけだが、物理攻撃でHPにダメージを与えるには、1度「防」の数字をゼロにしなければならない。魔法攻撃の場合は「魔防」だ。
武器や魔法には「ダメージ値固定」「ダメージ値ランダム」の2タイプ存在する。固定の場合は数値がそのまま相手に与えるダメージになるので、30の武器を装備していたら「防」の値を30削る。一方でランダムの場合は、数値を上限に、与えるダメージは完全ランダム。60のランダム武器で攻撃すると、60ダメージが出るかもしれないし、1や2といったダメージが出ることもある。当然、ランダムは運要素が強くなるが、その分、比較的安価で数値の高いものを手に入れられる傾向があるようだった。
実際敵とバトルしてみると、このあたりの数値計算におもしろい。たとえば、敵の防が30、魔防が100、HPが91の場合、一見すると物理攻撃で攻めたほうがよさそうな気もするが、味方がダメージ値固定の物理攻撃30と魔法攻撃90を装備していたとすると、魔法攻撃で攻めたほうが少ない攻撃回数でHPをゼロにできるわけだ。また、防が43だったり、HPが31だったりと、キリのいい数値ダメージだと少しだけ残るようないやらしい設定の敵も多かった。
ATBゲージを見ながら次に誰が攻撃するのか、そのキャラクターの装備は物理攻撃が強かったか魔法攻撃が強かったか覚えておく必要もある。強い武器を手に入れたからといって、何も考えずにその武器の攻撃一辺倒で戦っていると、痛い目を見るだろう。バトルでは、味方の攻撃手段や順番を考慮しつつ、一手、二手先まで行動を読み、戦術を組み立てる「思考」が重要なのだ。
なお、バトルも番号によって内容、つまり出現する敵が異なる。何度も戦っていると、バトル番号「00」で出現する敵はゴーストのみだと覚えていくが、ダンジョンには敵の情報を知るイベントマスも用意されており、情報を集めれば、どのバトル番号からどんな敵が出現するのか「メインメニュー」の「バトルブック」から確認できるようになる。
そのため、パーティーメンバーと相性の悪い敵とのバトルを避けつつ、ダンジョンを探索することも可能だ。もちろん、あえてバトル番号を表示させずに、突然敵とエンカウントする“ドキドキ感”を楽しむのもいいだろう。
マップ踏破の楽しみも。くまなく探して行方不明の仲間を連れ戻そう
ダンジョンのマップを探索する楽しみもある。『ダンジョンエンカウンターズ』では、マス目で描かれたマップの床をどれだけ踏破したかわかるようになっていて、階のすべての床を踏破したり、全体のマップ踏破床数が一定枚数以上に到達したりすると、アビリティポイントが増加。より多くのアビリティをセットできるようになる。
筆者は、RPGでダンジョンを攻略する際に、正解ルートがわかってもほかのルートに宝箱などがないかしらみつぶしに探索しないと気がすまないタイプなのだが、結局ほかのルートは行き止まりで、何もなかったというケースもよくある。しかし、『ダンジョンエンカウンターズ』の場合、何もないとしても、踏破という目的があるため、それが探索のモチベーションにつながるだろう。
試遊では、時間が限られていたにもかかわらず、下の階へ降りる階段を見つけても、すぐには進まずに、イベントを探したり、モンスターの情報を集めたりと、つい各階をじっくりと探索してしまった。
ダンジョンでは、謎解き要素の「数値問題」が出題されることも。解答によってダンジョンの座標が示されるので、実際に示された座標に行くと、武器をゲットできた。イベントブックを確認すると、ほかにもいくつか「数値問題」がリストに書かれていたので、探索要素の1つとして楽しめるだろう。
また、アカデミーで行方不明になっていたメンバーを見つけてパーティーの強化を図ることもできる。改めてメインメニューから編成を確認すると、街の00階などマップを踏破したエリアにもメンバーの座標が書かれていたので、どうやら気づかずにスルーしてしまったようだ。
なお、パーティーが全滅すると、構成メンバー全員その場所で戦闘不能状態に陥る。つまり、自分たちが“探される側”になるのだ。プレイヤーの画面は街のアカデミーに移動。戦えるメンバーを集めてパーティーを組み、そして、再度ダンジョンへ潜っていく。
個人的にはこのシステムもおもしろいと感じた。戦闘不能になった場所が座標で示されるのも、マス目だからこそできる演出かもしれない。また、全滅してしまうと、当然メンバーを救出するというタスクが増えるものの、別のキャラクターを使うきっかけにもなるだろう。
ただ一方で、試遊をプレイした限りではキャラクターの個性がイマイチわからなかった。ゲームを進めることでそのあたりが明確になるのか、気になるところである。
シンプルなグラフィックながら「考えるバトル」と「探索するダンジョン」のシステムがおもしろい『ダンジョンエンカウンターズ』。次世代ゲーム機の登場によりグラフィックにスポットライトがあたりがちな昨今において、ゲームシステムを突き詰めて考えられた同作は、RPGの原点とも呼べる体験を提供してくれることだろう。ゲームで「思考」したり、「探索」したりすることが好きなプレイヤーにはイチオシだ。
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CHARACTER DESIGN: Ryoma Ito