--では、事業者は今からどのような準備をしておけばいいのでしょうか

広沢氏:まず手始めに、インボイス制度によって自分の会社にどのような影響があるのかを整理してください。課税事業者か免税事業者かによってもインボイス制度の影響は異なりますので、自分の会社がどちらに属しているのかを確認するのも準備の一つです。2021年10月に適格請求書発行事業の登録が始まりますが、実際に制度が始まるのは2023年の10月ですので、それまでに業務プロセスを含めて見直してみてください。

実は先日、適格請求書発行事業者の登録申請の開始にあたって、全国の個人事業者と従業員30名以下の小規模事業者の経営者および経理担当者を対象にして「インボイス制度に関する意識調査」を実施しました。その結果から、インボイス制度の内容を知っている方は15.8%にとどまっていることがわかりました。

  • 全体の84.1%が、インボイス制度について「全く知らない・聞いたことがない」「聞いたことはあるが内容はよくわからない」と回答した 資料:弥生

インボイス制度の内容を「知っている」、または「聞いたことがある」と回答した方のうち、この制度が2023年10月1日に開始すると知っている方は2割程度でした。同様に、2021年10月から適格請求書発行事業者の登録が開始すると知っている方も2割程度でした。

  • インボイス制度について認知している人のうちでも、2021年10月から適格請求書発行事業者の登録申請の開始されると知っているとの回答は20.3%にとどまった 資料:弥生

インボイス制度が導入されるまでの課題として最も多かったのは「自社にどのような影響があるかわからない」という回答です。こうした背景を踏まえると、まずは自社にどのような影響があるのかを確認することが大切なのではないでしょうか。

  • インボイス制度の準備課題1位は「自社にどのような影響があるか分からない」である 資料:弥生

現在、手書きやExcelで請求書の発行業務を行っている方は、インボイス制度の導入によって負担が増加することが予想されます。今のうちからソフトウェアを導入するなど、業務負荷を軽くするための工夫をしてみてください。

正直なことを言うと、2023年からソフトウェアを導入しても十分間に合うとは思います。ですが、ソフトウェアの導入に伴う業務プロセスやシステムの変更は一朝一夕でできるものではありません。今のうちから業務の中に落とし込んでいく過程が必要だと思います。また、専門のソフトウェア提供している会社であれば、制度に詳しいベンダーのサポートが受けられます。そうした心理面でのメリットも大きいと思っています。

  • 「インボイス制度をきっかけにして業務プロセスを良い方向に転換できれば、デジタル化が進むんじゃないかと思います」と語る広沢氏