近畿大学(近大)、新潟大学(新大)、石川県立大学の3者は9月22日、善玉菌であるビフィズス菌を選択的に増殖させることのできる「次世代型プレバイオティクス」となり得るオリゴ糖を発見したと発表した。

同成果は、近大 生物理工学部 食品安全工学科の栗原新准教授、石川県立大 大学院 生物資源環境学研究科の平野里佳大学院生、新大 農学部 農学科食品科学プログラムの中井博之准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英国の腸内細菌や微生物を扱った学術誌「Gut Microbes」に掲載された。

「プレバイオティクス」とは、善玉菌を増殖させ、腸内環境を改善させる物質で、サプリメントや食品添加物として経口摂取されるが、大腸まで到達させる必要があるため、「ヒトには消化されない」という性質を持つ難消化性糖質が用いられている。

しかし現在のプレバイオティクスは、大腸に到達しても、目的の常在細菌が利用できるとは限らず、目的外の常在細菌に「横取り」されてしまう可能性もあるとされており、実際に今回の研究の過程でも、既存のプレバイオティクスの多くが、さまざまな常在細菌に利用される可能性が示されたという。

また、近年の腸内細菌学の進展から、さまざまな常在細菌がヒトに悪影響を与えていることも分かってきており、プレバイオティクスの開発において、そうした悪い働きをする常在細菌が増殖しないよう配慮することが求められるようになっているともいう。

そこで今回、研究チームでは、そうした課題解決を目的に、特定の善玉菌だけを増やすことができる次世代型プレバイオティクスの開発を目指したとする。

具体的には、ヒト腸内常在菌叢のうち、菌数の多い27種およびビフィズス菌・乳酸菌・病原菌を試験管内で培養し、どのプレバイオティクスがビフィズス菌を選択的に増殖させるのかを調査。その結果、11種類のガラクトオリゴ糖の中から「ガラクトシル-β1,4-ラムノース」(GalRha)というオリゴ糖を見出したとする。

また、GalRhaを含む培地において、ビフィズス菌と、難病として知られる「偽膜性腸炎」の原因菌である「ディフィシル菌」の同時培養を実施し、ディフィシル菌の増殖が抑制されることを確認したほか、ヒト糞便、ビフィズス菌、ディフィシル菌の同時培養を実施したところ、GalRhaを含む培地では、含まない培地と比較してディフィシル菌の毒素産生が抑制されることを確認したとする。

この成果は、GalRhaとビフィズス菌を組み合わせることによって、偽膜性腸炎の新たな治療法開発につながる可能性を示すものだと研究チームでは説明する。また、今回の研究と同様の手法を用いることで、ビフィズス菌だけでなく、乳酸菌、酪酸菌、アッカーマンシア菌などの善玉菌を選択的に増殖させる技術を開発することも可能だとする。

  • ビフィズス菌

    生体内におけるGalRhaとビフィズス菌によるディフィシル菌の生育抑制 (出所:プレスリリースPDF)

さらに、1型および2型糖尿病、クローン病、肥満で特徴的に減少している腸内細菌を選択的に増殖させることで、これらの疾患の治療につなげられる次世代型プレバイオティクスを開発できる可能性があるともしているほか、個人差の大きい腸内細菌叢に対応し、各人に最適なオリゴ糖を選択することで、オーダーメイドプレバイオティクスの開発も期待できるとしている。

  • ビフィズス菌

    次世代型プレバイオティクスの疾病治療への応用(腸内のイメージ) (出所:プレスリリースPDF)