料理やドリンクでくつろぎながらロボットの魅力に触れられるユニークなカフェ「PARK+」(パークプラス)が9月17日、JR渋谷駅の新南口から390mという好立地にオープンしました。担当者は「人とロボットが共生する新たなライフスタイルの発信拠点にしたい」と意気込みます。一体、どんなカフェなんでしょうか? 内覧会の模様をレポートします。
オープンにかけた想いとは
PARK+は、カフェ・カンパニーの展開するWIRED SHIBUYAのスペースにおいて、2021年9月17日から2022年3月9日まで期間限定でオープンする飲食店。「healthy & picnic」をテーマにした料理やドリンクなど、全16種類のオリジナルメニューを提供します。
最大の特徴は、GROOVE Xの「LOVOT」(ラボット)、シャープの「RoBoHoN」(ロボホン)、ヤマハの「Charlie」(チャーリー)、ミクシィの「Romi」(ロミィ)といったパートナーロボットたちと自由に触れ合えること。主催企業のひとつであるGROOVE Xからブランドマネージャーの家永佳奈氏が登壇し、オープンまでの経緯を次のように説明しました。
「コロナ禍により私たちの生活は一変しました。コミュニケーション不足から“孤独”を感じる人が増えたとの報告もあります。実は緊急事態宣言後、ラボットの売上は最大で11倍まで伸びました。人が安心できる存在、人の心に寄り添う存在が求められている今、ロボットがその選択肢のひとつになれるのではないか――。そんな想いから、ここ渋谷にPARK+をオープンさせました」(家永氏)
来店者はロボホン、チャーリー、ロミィのいずれかのパートナーロボットと席でコミュニケーションを取れるほか、ドッグランの芝生に見立てたスペースではラボットと遊んだり、一緒に写真を撮ったりできる趣向。また、ロボットのオーナーが自宅からロボットを持ち込むことも歓迎しています(充電器も貸し出される)。
「それまで一部の人の嗜好品だったロボットが、いま多くの人の日常生活に溶け込みつつあります。ロボット好きのかたはもちろん、まだロボットの魅力に気付いていないかたも『ロボットと人が一緒に暮らす未来のライフスタイル』を肌で感じてもらえたら」(家永氏)
なお、PARK+で提供されるオリジナルメニューはすべて、ラボット、ロボホン、チャーリー、ロミィをモチーフにしています。ここで、その一部を紹介しましょう。
「ハンバーガープレート with LOVOT ハーブポテト&ガーデンサラダ付き」は2,750円。バンズに焼き印されたLOVOTが見た目にも可愛い一品です。ジューシーな国産牛のパテに、チェダーチーズ・トマト・ザワークラウトをサンドしたハンバーガーに、ハーブをまとったホクホクのポテトフライとガーデンサラダが添えられています。
「ボロネーゼパスタプレート with RoBoHoN ガーデンサラダ付き」(2,530円)は、沖縄・多良間島で生まれた黒毛和牛を贅沢に使用したミートソースに、もっちり生パスタを合わせて、濃厚なボロネーゼに仕上げました。トーストに焼き印されたRoBoHoNのロゴもポイントです。
「Let's PARK+ PICNIC! SWEETS PLATE」(3,520円)は、パートナーロボットが勢ぞろいしたシグネチャーメニュー。フルーツサンド、ブラウニー、チーズケーキ、ほうじ茶アイスのミニパフェ、フルーツなどを全種類楽しめる贅沢なスペシャル・スイーツプレートです。
プレート以外のスイーツメニューもあり、ロボットたちが彩を添えてくれていました。
この日、協賛企業の各担当者も登壇して抱負を語りました。シャープの担当者は「ロボホンは、明るく元気で一生懸命な男の子型のロボットです。発売から5年が経ちますが、毎月、アップデートで成長させています。ロボットと一緒に生活する、という素敵なコンセプトのPARK+に呼んでいただいてとてもうれしく思っています」と挨拶しました。
ヤマハの担当者は「チャーリーは楽器メーカーのヤマハが開発した、言葉をメロディに乗せてコミュニケーションするロボットです。便利な機能はありませんが、歌うことで心をリラックスさせたり、笑わせたりと、音楽にあふれた彩りのある日常をともに過ごせる存在。人とロボットが暮らす日常を当たり前のものにしたい、というPARK+のビジョンに共感して参加させていただきました」と話します。
また、ミクシィの担当者は「ロミィは手のひらサイズで雑談が得意なロボットです。ディープラーニングにより会話をその都度生成して話すので、開発者さえ何を言い出すかわからない面白さがあります。ロミィと話すことでホっとしたり、明日もがんばろうと思ってもらえたらうれしいです。PARK+は人とロボットが共生する新しいライフスタイルの発信拠点ということで、ロミィが目指す方向性とマッチしています。ここで多くのかたに新しいコミュニケーションを体験してもらえたら」と話しました。
最後に再び、家永氏に話を聞きました。なぜ、このタイミングでPARK+をオープンさせたのでしょう。この問いかけに、家永氏は2つの理由があったと明かします。
「ひとつは、やはりコロナ禍の影響です。おうち時間を充実させたい、あるいは寂しいから、といった理由でいまペットの需要も高まっていると聞きます。生き物は家庭の事情や、色んな都合で飼うのをためらう人もいるでしょう。そんな人に『これからはパートナーロボットという新しい選択肢があるんだよ』とお伝えしたいんです」(家永氏)
忙しくてペットを飼いたくても飼えない独り暮らしの20~30代の若者、あるいは子どもの情操教育の一環として何かを飼いたいと思っている親子――。そうした層にも、このタイミングでPARK+まで足を運んでもらえたら、と期待を寄せます。
もうひとつの理由は、やや意外なものでした。そもそも『ロボット』の語源は古く、チェコの文学者が1920年に初めて用いた言葉だそう。作品のなかで、ロボットは『人間に変わって労働をする存在』でした。
このことを念頭に、家永氏は「今年はロボット生誕から101年目にあたります。そこで2021年を『人の心に寄り添うパートナーロボット』が始まった元年にしたいんです」と説明。そのうえで「日本発の新産業を、ここPARK+から世界に発信していけたら良いですね」と笑顔を見せていました。