2020年、パンデミックによる大都市のロックダウンが続く米国で、映画業界もその影響を大きく受けていました。その状況を象徴する作品が、トム・ハンクス演じる米海軍艦長とUボートとの死闘を描いた映画『グレイハウンド』です。

  • 公開された週末、Apple TV+ 史上最大の視聴数を記録した『グレイハウンド』

公開延期からApple TV+ 独占配信へ

同作はイギリスのC・S・フォレスターの原作を基に、トム・ハンクスが2016年より脚本を執筆。自身が主演し2020年3月に公開される予定でしたが、パンデミックの影響で5月、6月と延期になり、最終的に7月10日、Apple TV+ にてオンラインで公開される形となりました。

  • 映像のほとんどが、狭いブリッジと甲板からの視界

物語は第二次大戦中の大西洋が舞台。当時、同盟国へ物資を届ける商船をドイツ軍の攻撃から守るため、多数の商船が集団航行し海軍艦船が護衛する護送船団が組まれていました。この作品では、1942年2月、兵員と物資を輸送する37隻の船と護衛艦4隻を率い、旗艦フレッチャー級駆逐艦USSキーリング/コールサイン「グレイハウンド」が英国リバプールを目指します。この艦長が、トム・ハンクス演じるアーネスト・クラウスです。

同作は2021年アカデミー賞の音響賞、また英国アカデミー賞の音響賞・視覚効果賞にノミネートされるなど、海上における戦闘シーンの迫力がひとつの見どころ。しかし同時に、クラウス艦長の私的なフィルムとも見ることができます。

ベテランリーダーが背負う重圧

クラウスはベテランと言っていい世代ながらこれまで昇進の機会に恵まれず、今回が戦時下における初の艦長任務。荒れる冬の大西洋沖でろくに眠れず、食事にも手が出ません。航空哨戒の限界域を離れた艦は間もなく1隻のUボートを探知し、クラウスの教科書的な戦術で見事に撃破しますが、現実にはそれで終わってくれるような敵ではありません。

  • 自分の判断が多くの命を握る重圧に苦しむ

アナログ装備の時代、あるだけの手がかりを頼りに戦況を読み、判断・命令をし続けなくては死を待つばかり。いつ攻撃するか、右によけるか左に避けるか、撃沈と認定していいのか。時には究極の選択を迫られ、それが裏目に出ることも。

自らの艦のみならず、僚艦や守るべき船団もを背負う重圧。たたき上げの部下たちの視線。仲間を失い弾薬も尽きようとする中で、しかし艦長として立ち続けるクラウスの思考を映像は丹念に追います。

  • 撮影には本物のアメリカ海軍駆逐艦を使用。メイキングも必見です

初の艦長とはいえ、軍人経験は長いクラウス。自分で判断し的確に命令する、部下のミスは責めない、常に次の対策を考えるなど、リーダーとしてのあり方は現在にも通じるものがあります。映像のほとんどがクラウスから見える範囲に限られるだけに、彼が何を見てどう考えているのか、思考を追って視聴すると一層緊迫感が味わえるはずです。

この作品を視聴するには

  • 配信サービス:Apple TV+
  • 視聴方法:iPhone、iPad、Macなどの「Apple TV」アプリ、スマートテレビ、Amazon Fire TV、Chromecast with Google TV、PlayStation、Xbox、PCブラウザ(https://tv.apple.com/jp)
  • 料金:月額600円(ファミリー共有可)

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