エアコンでおなじみのダイキン工業が、ポータブルエアコン「Carrime」(キャリミー)の第2世代モデルを発表しました。昨年登場した初代Carrimeは、エアコンらしからぬスリムなデザインや、工事不要でどこでも使える点が話題を呼びましたが、実際に使ってみると「駆動音がうるさい割に風が冷たくない」「排熱用のダクトが手に入らない」といった欠点があり、満足度は決して高くありませんでした。約1年の時を経て登場した新生Carrime、ユーザーの声を反映して1から作り直したこともあり、アウトドアレジャーやテレワークに満足して使える仕上がりになったと感じます。

  • おしゃれでコンパクトなデザインはそのままに、内部を刷新して新たに登場したダイキン工業のポータブルエアコン「Carrime」。初代モデルに対して寄せられた不満をしっかり改良してきたと感じさせる。価格は66,000円で、すでに販売中。今回はクラウドファンディングで支援者を募る形式ではなく、同社の「DAIKIN LAUNCH X」や一部の家電量販店で販売している

初代モデルは使い勝手が悪く、未完成の印象が強かった

昨今、家電メーカー各社が相次いで投入しているポータブルエアコン。電源さえ確保できれば工事なしですぐに使える利便性が好感され、エアコンのない部屋やガレージ、キャンプや車中泊で使いたい…という人からの熱い視線を集めています。

エアコンなどの空調機器を専門に手がけるダイキン工業が2019年11月にクラウドファンディングで初めて投入したポータブルエアコンが「Carrime」(購入者への発送は2020年6月)。キッチンカウンターやデスクの足元など人の近くに置き、体に冷風を当てて涼しさをもたらす“持ち運べる卓上エアコン”という新しいコンセプトの製品として登場しました。この手のポータブルエアコンでは珍しいおしゃれなデザインや、ライバルよりも小型軽量で手軽に持ち運びできるボディが話題となり、早い段階で完売になるほどの人気を集めました。

しかし、レビュー記事「ダイキンの卓上エアコン『Carrime』 使って分かった“○と×”」でリポートした通り、いろいろな欠点が散見されて使い勝手はいまひつで、どこか未完成といった印象が拭えませんでした。おもな不満点は以下の通りで、これらが改良されたかどうかが新生Carrimeの評価を左右するといえます。

  • 部屋が暑いと、出てくる風があまり冷たくならない
  • 運転時の駆動音や風切り音が大きい、風量を最小にしてもうるさい
  • 運転で生じる熱を遠くに逃がすためのダクトホースが付属せず、オプションとしても用意されないので入手が困難
  • 温度調節やタイマーの機能がなく、スマートフォン経由で操作するといったイマドキの機能もない
  • ドレン水の排水タンクが小さく、まめに捨てないといけないので手間がかかる

冷却性能を高めつつ、就寝時も使える静かな運転が可能に

改めて登場した新生Carrime、見た目やデザインは初代モデルを色濃く継承していますが、内蔵のメカ類はイチから設計し直され、中身は完全に別物になっているそう。初代モデルの購入者などから意見や要望を募り、その点を中心に改良を加えたといいます。

  • 新生Carrime。デザイン面の特徴にもなっている縦ストライプのリブや最上部に生えた本革製の取っ手など、外観は初代モデルを色濃く継承するも、本体サイズはひとまわり大きくなり、重量は初代よりも2kgアップして風格が増した。素材は天然石のような模様が新たに施された

  • 背面。前面・背面ともに開口部は大きくなっているが、左右対称になったことで見た目はよくなった

  • こちらは初代Carrime。新生Carrimeと比べると、全体にスリムにまとまっていた

使ってみてまず感じたのが、確実に「冷たい」と感じる風が出てくるようになったこと。Carrimeの商品企画を担当したダイキン工業の野口愛子さんによると、熱交換に用いる熱交換器の面積を初代モデルの約2.2倍(容積では約3倍)に拡大し、さらに冷媒の量も約1.9倍に増やしたことで、周囲よりも10度低い冷たい空気を効率よく作れるようにしたといいます(従来モデルは7度低い冷風)。しっかりと冷やされた風が出てくるまでの時間も、従来より短くなったように感じます。

「冷たい風が出る」以上に好印象だったのが、風量と騒音の改善です。風量は4段階で、最大にすると冷気が勢いよく吹き出しますが、騒音は従来よりもだいぶ抑えられた印象を受けます。特に評価したいのが、風量を最小にすると騒音を抑えつつ確実に冷たい風が出ること。就寝時も気にならないレベルで、車中泊やキャンプなどで使えると感じました。野口さんによると、風量を4段階の1(最小)や2に設定した際は仕事や作業の集中力をそがない騒音に抑えるべく設計したそう。これらの改良は、内蔵ファンを従来の小型ファンから大型のシロッコファンに変更したことが効いたといいます。

  • 冷気が吹き出す最上部には、左右の風向きを調整できる外付けルーバーが新たに付属。便利だが、装着すると見た目がかなりダサくなる

これらの改良を施したことで、本体は初代モデルよりもいくぶん大きく重くなっています。ただ、「持ち運べるエアコン」というコンセプトは崩したくなかったので、十分な冷却効率や低騒音を確保しつつ持ち運びが可能な大きさや重さをキープする、というバランス調整に苦労したそうです。

ちなみに、初代Carrimeの重さは約6kg。これは、鋳物の深型両手鍋にスープをたっぷり作った時の重さを意識し、「女性が日常生活で持ち運ぶ重たいものの重量に収めたい」という思いから6kgに仕上げたそう。新生Carrimeの重量は約8kgに増えていますが、家族4~5人分の濡れた洗濯物の重さを意識して8kgに収めたといいます。

ただ、8kgの新生Carrimeは実際なかなかの重さで、キッチンカウンターなど高い場所に持ち上げるのは骨が折れると感じました。野口さんも「8kgはやはり重いので、これで満足してはいけないと思っています」と重さを認め、冷却性能を維持しつつさらなる軽量化を図る意欲を見せます。

取り回しのよいダクトホースがついに標準で付属

新生Carrimeでもっとも待ち望んでいた改良ポイントの1つが、運転で生じる熱を遠くに逃がすためのダクトホースが標準で付属するようになったことです。

一般的なエアコンと同じ熱交換式のCarrimeは、運転時に前方から涼しい風が出てくる代わりに、後方の排気口からは奪った熱を含む温風が排出されます。そのため、排気をドアの外など離れた場所に追いやるのが涼しさを保つポイントとなります。しかし、初代Carrimeは排気を導くダクトホースなどのパーツが付属しないばかりか、純正オプションとしても用意されず、適合するものを探して入手するのが困難でした。

今回のCarrimeでは、ようやく専用のダクトホースが標準で付属するようになりました。ダクトホース自体も素材が柔らかくて取り回しやすいうえ、蛇腹を伸ばすと相当長くなる伸縮式を採用するなど、いい素材を用いていると感じました。ダクトの両端はラバー素材になっていて、アタッチメントに装着しやすかったりケガの心配がない点も評価できます。

  • ようやく標準で付属するようになったダクトホース。柔軟に曲がるうえに延ばすとかなり長くなるなど、質の高い部材を使っていると感じさせる。両端にラバーの部品が装着されているのも良心的だ

  • 本体に装着したところ。ダクトの先を扉や窓の外に出せば、排熱で部屋の温度が上がってしまうのを防げる

野口さんによると、初代Carrimeではやはり排熱ダクトにまつわる要望が多かったといい、同社の業務用スポットエアコン「クリスプ」や、他社の布団乾燥機などで使われている伸縮ダクトを参考に、取り回しのよさを重視して選定したとのことです。

タイマー機能が加わるも、操作部や機能はシンプル路線を継承

初代Carrimeは、電源スイッチを入れるだけで使えるシンプルな操作を特徴としていましたが、一般的なエアコンが備える温度調節やタイマーの機能がないうえ、スマートフォンからの操作機能もなく、操作まわりの使い勝手はシンプルすぎて物足りないと感じる部分もありました。

新生Carrimeでは、新たに1/2/4時間のタイマー機能を追加しました。ただ、温度調節やスマホ連携機能は相変わらずなく、基本的にシンプル路線を継承しています。野口さんによると、Carrimeは使う人の近くに置いて設置するというコンセプトで、手が届く距離に本体が設置されているためスマホ連携は不要、との判断で見送りにしたといいます。ただ、キッチンでは手が濡れたり汚れたりしている場合が多く、音声でも操作できるとよいと感じました。

  • 3つのボタンとLEDだけというシンプルな操作部。ドレン水の満水状況や運転状況などはLEDで示されるが、スマホからも状況が確認できると便利だったと感じる

もうひと工夫欲しかったドレン水の排水機構

改良が加えられたもののもう一歩だと感じたのが、運転時に発生するドレン水の排水処理です。今回、ドレン水の貯水タンクの構造を改良し、新たに付属の排水ホースを接続して外部に排水できるようになりました。一般的なエアコンと同様の排水機構になり、タンクの水を捨てる手間なく連続して運転できるようになるのは頼もしいと感じます。車中泊の際は、ドアを少し開けておけば排熱とともに外に排出できます。

  • 新たに付属するようになったドレン水の排水ホース。貯水タンクの内部にある排水口に接続すればよい。こちらのホースは若干固めで、やや取り回しづらい

  • 車中泊などでクルマで使う場合、ドアをちょっと開けて排気ダクトともに排水ホースの先端を外に出せば、貯水タンクの水を捨てる手間から解放される

ただし、貯水タンクの位置が従来と同じ本体下部なので、床よりも低い場所にしか排水できず、室内に床置きした場合は掃き出し窓が近くにあって外に排水できる環境でなければ使えないのが残念なところ。排水口が20cm程度の高い位置にあれば、適当な容器を置いてドレン水をためられるので、掃き出し窓が近くにない環境でも使い勝手が高まると感じます。

野口さんによると、ドレン水が発生する熱交換器の位置の都合でこの仕様になっており、排水口を高くすればそれだけエアコン本体も大きくなってしまう、としています。ただ、他社のポータブルエアコンは30~40cmほどの高い場所に排水口を設けている製品もあり、今後の改良に期待したいところです。

ちなみに、内蔵の貯水タンクの容量は初代Carrimeとほとんど変わらないので、貯水タンクを利用する場合はタンクの水を捨てる手間がそこそこ頻繁に発生します。タンクはデザイン優先の影響で取っ手などが付いておらず、取り外しは若干面倒なのが気になりました。

  • 貯水タンクは従来とほぼ同じ形状。容量が少ないだけでなく、取り外しにくいのも気になる

他社製品よりも小型軽量で、屋外レジャーやテレワークで重宝しそう

初代モデルに寄せられた不満や意見を取り入れて「しっかり冷やす」「騒音を軽減」「排気は遠くに追いやる」という快適性能を改善した新生Carrime。ドレン水の排水まわりやスマート家電的な機能に課題を残していますが、実用性はグッと高まって未完成という印象はなくなりました。本体重量は初代モデルよりも増したとはいえ、20kgクラスが標準的な他社のポータブルエアコンと比べれば重さは半分以下で機動力は断然優れ、競合製品にはない魅力を備えていると感じます。

価格は66,000円と安くはありませんが、キャンプや車中泊、空調のないガレージやベランダでの作業が快適になるほか、寒がりな家族のいるなかで快適にテレワークをこなしたい暑がりなビジネスパーソンにもヒットしそうだと感じました。

  • ワンボックス車内にCarrimeを設置したところ、車内でも騒音を抑えながら涼しい快適な環境が保たれた。アイドリング禁止の場所でクルマのエアコンが使えない場合に重宝する

  • 一般的なクルマでも、AC100V出力を備えるポータブル電源を用意すればCarrimeが使える。ハイブリッド車やEVなど標準でACコンセントを備えるクルマもあるが、長時間の利用は別途ポータブル電源があると安心できる

  • 今回、Carrimeと合わせて試用したのは、BLUETTI Japanのポータブル電源「BLUETTI EB70」。一般的なリチウムイオンバッテリーよりも安定性や安全性の高いリン酸鉄リチウムバッテリーを採用しているのが特徴で、衝撃や劣化などで発熱や発火に至る心配が少ない点が評価できる。使用時の騒音も小さく、車中泊にも向く。容量は716Whで、出力は700W。実売価格は78,800円