毛髪事業で知られるアデランスのヘアドライヤー「N-LED Sonic KAMIGA」(以下、KAMIGA)の開発者をインタビューし、開発の裏話や使い方のコツなどをうかがいました。実機に触れたレビューもお届けします。KAMIGA(型名は「AD-HR03」)は、2017年に発売した「N-LED Sonic」(以下、Sonic)の進化モデルともいえる商品です。

  • アデランス ビューティ&ヘルス商品企画開発部 西本愛氏(左)、アデランスのヘアドライヤー「N-LED Sonic KAMIGA」を手に持つのは、ビューティ&ヘルス商品企画開発部 次長 寺岡剛氏(右)

長年の毛髪研究、その粋を結集させたヘアドライヤー

「アデランスは約15年前からLED光に注目して、大阪大学と共同で赤色LEDの研究に取り組んできました。また、シャープの独自技術であるプラズマクラスターには、うるおい効果や静電気を除去する効果があるとされています。KAMIGAは、熊手のような『かっさアタッチメント』で髪をかき分け、地肌に直接、LED光とプラズマクラスターを届けます。このコンセプトは初号機のSonicから変わっていません。最新のKAMIGAでは、かっさを大きく改良しました」

KAMIGAを手にそう語るのは、アデランス ビューティ&ヘルス商品企画開発部 次長の寺岡剛氏。Sonicはかっさの指(突起)が送風口の内側から伸びるデザインで、指の数は5本でした。KAMIGAはかっさのアタッチメントが「カミガハンド」と「カミガかっさ」の2種類になり、付け替えて利用します。カミガハンドは、指の数が倍以上の12本に増え、カミガかっさは短いシリコン突起が多数生えたデザインです。

  • カミガハンドは3つのパーツを組み立てます。もともとは3本指で1つのかっさだったため、かっさが4つということで開発当時は「クアトロかっさ」という呼び方もしていたそうです

共同開発のパートナーであるシャープとのおもな役割分担に関しては、シャープがプラズマクラスター技術やドレープフロー技術などを、アデランスがLED技術やカミガハンド、カミガかっさなどを提案し、両社で協議しながら最終仕様に落とし込んでいきました。

  • アタッチメントの「カミガハンド」を装着したKAMIGA。写真のスタンドは標準で付属します。このスタンドもアデランスのアイデアで実現しました

共同開発とはいえ、なぜ家電メーカーではないアデランスが、ドライヤーという家電を開発しているのでしょう。寺岡氏は次のように話します。

「アデランスは53年間におよぶ毛髪研究の歴史を持つトータル・ヘア・カンパニーです。毛髪にとってヘアドライヤーは重要な道具であり、シャープがプラズマクラスターのヘアドライヤーを発売したときに、スキンケア効果の高さに注目しました。毛髪と頭皮の健康にまで踏み込んでいると感じました。

実は当社では、ヘルメット型のLED搭載機器を開発しており、シャープのプラズマクラスター技術を当社の商品に取り入れたいということになりました。そのとき、シャープのドライヤーにもアデランスのLEDとかっさの技術を盛り込めるのでは? と、2017年のSonicにつながったのです」

実際、薄毛になっている人は頭皮が炎症を起こしているケースも多いとのこと。頭皮の健康は、毛髪と切っても切れない関係なのです。筆者が調べたところでは、赤色の超狭帯域LEDと毛髪との関係性について、研究発表がされているようです。アデランスのWeサイトでもさまざまな研究開発が公開されているので、目を通してみてはいかがでしょうか。

  • 「毛髪に関することだけでなく、最近は毛髪を中心とした美容全般まで視野に入れた事業展開を進めています」(寺岡氏)

  • カミガハンドとLED照射を組み合わせた「KAMIGA1」と「KAMIGA2」という2つのモードには、アデランスによる毛髪研究の粋を結集

「KAMIGA」――神がかった美髪への想いを込めた名前

KAMIGAを開発するに当たっては、かっさの改良に苦労したそうです。

「ベースのドライヤー部分はシャープさんがとても良いものを用意してくれましたので、当社はかっさの改良に取り組み、指の数、硬さ、長さなど、いろいろなタイプでテストしました。試作品は何十個にも……(笑)。頭の丸みに合わせて指が当たるように、かっさの指パーツでも丸みなどを1mm単位で調整しました」(西本氏)

  • 西本氏は自宅でもKAMIGAを使用していて、「髪を乾かす時間が以前の半分くらいに短くなりました」とのこと

「髪を洗うときや頭皮をマッサージするときのコツは、親指と小指が必ず頭皮に当たるようにして、直線的な動きではなく指を回すように動かすことです。カミガハンドは頭に当ててちょっと力を加えたときに、美容師の指の当たり方を再現できるよう、両端の指を長過ぎず、短過ぎない長さに調整しました」(寺岡氏)

こうして、KAMIGAは商品化されましたが、商品名にも使われている「KAMIGA」とはどういう意味なのでしょう。KAMIGAは漢字では「神美髪」と当て字します。神的な美髪になる想いを込めた名前で、アデランスの津村佳宏社長が名付けたそうです。

  • 筆者が自宅で試用したときも、こんな感じで頭皮を刺激するように押し当てるように使いました

KAMIGAで髪を上手に乾かすコツは?

「基本は下から上の動きです。髪の毛はつむじから、円を描くように生えています。それを逆向きに中に向かって風と熱が入るように乾かしていくと、髪の根元が自然な立ち上がりを保てます」(寺岡氏)

「KAMIGAであれば、スピーディドライモードから始めて、最後にビューティモードできっちりセットすると、まとまりが良くなります。時間がない朝などは、ビューティモードではなくセンシングドライモードで優しく乾かすのもオススメです」(西本氏)

KAMIGAの取扱説明書にも、かっさを使ったマッサージの仕方などがイラスト付きで掲載されています。

  • 取扱説明書の「スカルプエステ」のページ

KAMIGAを使ってみて実感した「毛髪への優しさ」

実際に、数週間にわたってKAMIGAを使ってみました。初めてスイッチを入れたときは、風量の豊かなことに驚きました。風の吹き出し口を工夫した「ドレープフロー」によって風が広範囲に届くので、腕を忙しく動かさずに済みます。

この風量もあってかドライヤーの音はやや大きめで、計測すると65~70dBでした。

  • ドライヤーの音は65~70dB。カン高い音はあまり出ないので、集合住宅でも真夜中でなければあまり気にせず使えそうです

KAMIGAはアタッチメントを外した状態でも使えます。左右に分かれた温風の吹き出し口と、円形に並ぶ8つのLEDが特徴的です。「HOT」から「KAMIGA2」まで、6つの小さなLEDが現在のモードを示します。中央の黒い穴は距離センサーです。

本体の重さは、電源コードを含めて約665g。重すぎると感じることはありません。小槌のようなシルエットで重量バランスも悪くない感覚。とはいえ、濡れた髪を乾かすのに時間をかけ過ぎると、さすがに腕が疲れます。これはどのドライヤーでも同じでしょう。

  • KAMIGA本体の重さ(実測値)は電源コード込みで666g。スペック表では665gですが、この程度は誤差

いろいろと試してみて、筆者がなじんだ乾かし方は、

(1)アタッチメントを装着せず、テーブルに置いた付属スタンドにKAMIGAを立てかけ、イスに座ってハンズフリーである程度乾かす。後頭部を乾かすときだけドライヤーを手に持つ。

(2)いったんKAMIGAの電源を切って、カミガハンドやカミガかっさを装着し、再び電源を入れて頭皮をマッサージしながらしっかり乾かす。

というパターンでした。

カミガハンドやカミガかっさの着脱は、片手だと少しコツが必要。慣れるまでは、KAMIGAをスタンドに置いて、両手で着脱するとラクです。これもスタンドをオススメする理由のひとつ。

  • アタッチメントの「カミガかっさ」。「カミガハンド」よりも強く頭皮を刺激したいときに使います

その都度かっさを着脱する理由は、かっさ装着時は「KAMIGA1」と「KAMIGA2」の2モードしか選べなくなるからです。髪の毛が短くて、乾かす時間もあまりかからないという人は、スピーディドライモードを使わず、最初からかっさを装着して乾かすのも良いでしょう。ただし、髪が濡れた状態でかっさを使うと、髪が絡まって抜け毛につながる可能性もあります。このためアデランスでは、髪全体をある程度乾かしてから、かっさを使うことを推奨しています。

逆に髪が長くて乾かすのに時間がかかる場合、最初からかっさを装着して乾かすと髪の根元が乾き過ぎて、髪が柔らかくなって絡まりやすくなることもあるので注意が必要です。

  • アタッチメントとして、一般的なドライヤーのような吹き出し口の「セット用ノズル」も付属

操作部は、KAMIGAを手に持ったときに親指が届く位置にまとめられています。左上が「風量」ボタン、右上が「MODE」ボタン、これらの下が「COLD」ボタン、一番下がスライド式の「電源スイッチ」です。電源スイッチの下には風量が3段階の白色ライトで表示されます。3つ表示は「TURBO(風量大)」、2つ表示は「DRY(風量中)」、1つ表示は「SET(風量小)」となります。

  • KAMIGAの操作部

正面の上部で赤や緑や青に光るのが「温度LED」で、吹き出す風の温度によって色が変わります。赤が高温、そして黄色、緑の順にぬるくなり、青は冷風(室温)です。

電源を入れると「HOT」のLEDが光り、「スピーディドライモード」になります。HOTはすばやく乾かしたいときはもちろん、髪をボリュームアップさせたいときなどに用いる基本のモードです。

  • スピーディドライモード

MODEボタンを押すたびに、モードが上から順番に切り替わります。「KAMIGA1」のLEDが光る「カミガセンシングモード」は、センシングモードの温風に、赤色と青色のLEDがビカッと光るモードです。「KAMIGA2」のLEDが光るのは「カミガ弱冷風モード」。赤色と青色のLEDが光りつつ、弱冷風を送り出します。少し長めに風を当てても髪に優しく、気持ち良く感じました。頭皮マッサージにオススメです。

  • カミガセンシングモード

「髪は顔の額縁」、これからのドライヤーは大切な髪をいたわるための道具

使っていて気になったのは、モードの数が多くて違いが把握しづらいこと。使い始めに取扱説明書を読まずに試したら、どれが何やらよく分かりませんでした。

一方、使っていてラクだったのは、髪の表面温度を一定に保つセンシングドライモードです。モードの使い分けが難しいと感じたら、最初はとりあえずこのモードだけ覚えると良し。筆者は髪を伸ばしていた時期があったので、そのころにKAMIGAがあったら重宝したに違いないと感じました。

  • カミガハンドを装着すると、MODEのLEDは「KAMIGA1」と「KAMIGA2」以外は隠れるようになっています

髪は顔の3分の1を占め、「顔の額縁」とも言われる大事なパーツ。髪で人の印象は大きく変わります。

髪の老化は25歳を過ぎたあたりから始まります。自分の薄毛に気が付いて改善しようとしても時間がかかるため(場合によっては治療も)、髪に元気のある若いうちから意識してケアしておきたいところ。特に育毛剤を使う人は、育毛剤を地肌につけて指でなじませたあと、揉み込むのにKAMIGAのかっさを使うと良さそうです。髪に対する想いの詰まったKAMIGAは、髪と頭皮をいたわりたい老若男女にぜひ試してほしい、完成度の高いドライヤーでした。