パナソニックは7月20日、プレス向けに「ナノイー/ナノイーX説明会」を開催しました。ナノイーの仕組みについて改めて説明しつつ、近年は車載市場向けのナノイー/ナノイーXに注力しているとしました。合わせて、車載向けナノイー/ナノイーXのエビデンスを公開。2021年度は車載向けナノイー/ナノイーXの累計販売台数が1,000万台を達成し、2025年度には累計2,000万台を目指すとのことです。

  • 「ナノイーX」発生装置

  • プレゼンターを務めたパナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部の三人。左から、主幹の中田隆行氏、部長の中村浩二氏、主幹の山下幹弘氏

  • 2025年度に、車載向けナノイー/ナノイーXの累計販売台数として2,000万台への到達を目標としています

コロナ禍でマイカー移動が増え、車内の空気の質が気になるように

コロナ禍の影響によって、移動手段としてマイカーを選択する人が増えました。満員電車が代表的ですが、密閉された空間に一定時間、不特定多数の人と滞在することに抵抗を感じる人が多いのでしょう。

  • コロナ禍でマイカー移動が増加(MOTA調べ)

パナソニックの調査によると、空気の質が気になる場所として、33.5%の人が「自動車の車内」を挙げました。「家の中」という回答に次ぐ2番目の高さです。

  • 自動車の車内において、空気の質を気にする人が増えています(パナソニック調べ)

2007年11月、パナソニックは車載向けのナノイー装置を初出荷。以来、自動車メーカー各社と連携しながら多くの車種へ搭載を進め、現在では自動車メーカー8社の全96車種に採用されました。7月19日にトヨタが発表した新型「AQUA(アクア)」も、車載用ナノイーXを搭載しています。

  • トヨタの新型「AQUA」もナノイーを搭載

今回の説明会では、車載向けナノイーについて効果のエビデンスが公開されました。試験対象は以下の4項目。

  1. 菌抑制
  2. ウイルス抑制
  3. 付着臭(タバコ臭)の脱臭
  4. スギ花粉の抑制

トヨタ「ヴェルファイア」の車内(3カ所)にナノイー発生装置を取り付け、試験対象となる上記の4つ(菌・ウイルス・ニオイ・花粉)を付着させた試験片を設置した上で、ナノイーを1時間曝露して効果を測定しています。ヴェルファイアの容積は7立方メートルです。なお、試験で使われた菌やウイルスは、インフルエンザや新型コロナのモデルとして有用な種類のうち、人体への影響が少ないものを選んでいます。

  • ナノイーの車載向け試験を実施

試験の結果、4つの試験対象それぞれにおいて、有意の効果が認められたとのことです。

「1.菌抑制」と「2.ウイルス抑制」は、99%以上を抑制。「3.付着臭(タバコ臭)の脱臭」は臭気強度⊿(デルタ)1以上の低下。⊿1は一般人のほとんどが臭いの違いに気が付く強度とされています。「4.スギ花粉」は69%以上の抑制となりました。

4つの試験では、運転席に近いほど効果が高い(もしくは低い)わけではない点がなかなか興味深いところです。

  • ナノイーの車載向けエビデンス

パナソニックは今後も、国内外の自動車メーカー各社に車載向けナノイーデバイスの搭載を働きかけていく考えです。海外では、中国やASEAN各国、欧州各国の自動車メーカーにも広げており、車載台数のペースアップを見込んでいます。このほか、自動車以外にも鉄道といった交通機関にも働きかけていくとのことでした。

空気中を漂って有害物質に作用するナノイーの仕組み

ナノイーやナノイーXの仕組みについては、別記事『こんな時代だから知っておきたい「ナノイー」って結局なに? 除菌・脱臭は本当にできる?』でも紹介していますが、大きく以下の効果があるとしています。

  1. 主要な「カビ」の抑制
  2. 日本の主要な「花粉」の抑制
  3. 生活5大臭(タバコ・ペット・焼肉・生乾き・汗)と加齢臭を「脱臭」
  4. 「PM2.5」に含まれる有害物質の分解
  5. 浮遊・付着する「菌」の除菌や「ウイルス」の抑制
  6. 主要な「アレル物質」の抑制
  7. 肌の水分量として湿度20%アップと同等のうるおい、髪の水分量を均一にうねりを抑える
  • ナノイー/ナノイーXが持つとされる7つの効果

ナノイー/ナノイーXのメカニズムは「分解」と「変性」です。

脱臭やPM2.5の分解に作用するのが「分解」です。水に包まれたナノイーのOHラジカルは、空気中ですぐに消滅せずに浮遊して、カーテンやカーペットなど繊維の奥まで到達。ニオイの原因物質と結合して、OHラジカルがニオイの原因物質と化学反応して分解します。

一方、カビや花粉、菌・ウイルス、アレル物質に作用するのは「変性」です。たとえば菌の場合、菌の細胞壁と細胞膜を傷付けることで性質を変化させ(変性)、菌の働きを抑制します。

なお、ナノイーとナノイーXの違いを簡単にいうと、単位時間に発生するOHラジカルの量。ナノイーは4,800億個/秒、ナノイーXは48,000億個/秒、高濃度ナノイーXは96,000億個/秒となっています。

ナノイーは菌やウイルスなど質量の小さいものほど大きく作用するため、人体にはほとんど影響しません。人間の皮膚表面には常在菌も存在しますが、常在菌は手を洗って一時的に減ってもすぐに復活するように、ナノイーに触れてもすぐに復活するため、問題にはなるほど減少することはないそうです。

パナソニックは、2020年7月31日にTexcellと共同で、ナノイーX新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果の検証結果について発表しています。それによると、ナノイーXを曝露した場合は2時間で99.99%の新型コロナウイルスを抑制したとのことでした。なお、検証方法などはパナソニックのWebサイトで詳しく公開されています。