持ち帰り弁当の「HottoMotto」や定食レストランの「やよい軒」などを展開するプレナスは7月14日、運営する水田「プレナス加須ファーム」(埼玉県加須市)において、スマート農業の活動の一環としてドローンを活用した追肥作業を開始し、その様子を報道陣に公開した。
同社は6月末現在、国内に2863店舗、海外9カ国・地域に251店舗の計3114店舗の「HottoMotto」と「やよい軒」を展開している。国内の店舗には自社工場で精米した全国各地の米を納入している一方で、海外店舗には、国産米の輸出や現地での日本米調達、現地米の使用など、国ごとに異なる対応をしている現状がある。
海外の店舗には国産米を輸出することで一本化するため、2021年2月に「米作り推進事業」を新設し、埼玉県加須市に農地を12圃場(約2.5ha)借り受け、水田の整備、種子の準備を進めてきた。「品質、価格ともに競争力のある輸出米を自社で生産し、ブランド価値の向上につなげる」と、プレナス 米作り事業推進室長 佐々木哲也氏は説明した。
同社は5月にドローンを活用した田植えを成功させ、日々の水管理を遠隔で管理するクラウド型水管理システムや作付計画、作業指示、作業記録など日々のデータを可視化するシステムを導入するなど、生産性の高い稲作経営を実施している。
そして今回、ドローンを使って水田を上空から撮影し、生育具合の目安となる葉色の色むらを把握した後、必要箇所に重点的に肥料を散布する新たな取り組みを開始した。ドローンを使った葉色診断を導入することで、上空からの視点で水田の隅々の生育状況を可視化できるだけでなく、人の目よりも精度の高い形で生育状況を確認できるようになるという。また、生育状況を把握したうえでドローンによる追肥が可能となり、作業時間や追肥にかかるコストの削減にもつながる。
ドローンは葉色診断用と肥料散布用の2種類使う。まず、小型の葉色診断用ドローンを高度60メートルまでの高さまで上昇させ、水田一面を撮影する。同ドローンの操作はアプリ上で飛行範囲・高度など、細かい設定が可能で、離陸~撮影~着陸(帰還)まで自動でできる。
ドローンで撮影した写真を、スカイマティクスが提供する葉色解析クラウドサービス「いろは」にアップロードして解析し、画像データに変換する。
画像データを確認すると、黄緑~深緑で葉色の状態が表示されていた。作業者はこの黄緑の部分に重点的に肥料を散布する。これにより作業の効率化を図り、肥料の無駄遣いを軽減させる。
次に解析された画像データを確認しながら、大型のドローンを使って肥料を散布していく。
ドローンの連続稼働時間は、空撮用は最大30分で、肥料散布用のドローンは約15分。屋外での充電時間は、空撮用はカーチャージャーで約1時間、散布用は発電機で約40分。人力で作業する場合と比べ追肥の作業時間を10分の1に短縮できるという。
また、ドローンの操作で作業が完了するので、物理的な負荷もかなり軽減されているだろう。佐々木氏は、「現状では無理だが、今後は人による操縦を行うことなく、ドローンが自動でこの一連の流れをできるようにしたい」と展望を語った。
同社は今後、同事業を通じて食味と競争力のある輸出米を育て海外の店舗に供給し、将来的には、他の小売などでの販売も見込み事業を拡大していく考えだ。「海外へ日本のおいしいお米を届けていきたい」(佐々木氏)。