インターステラテクノロジズ(IST)は6月30日、完成した観測ロケット「MOMO6号機」(名称:TENGAロケット)をプレスに公開した。7号機(名称:ねじのロケット)に続き、今夏の打ち上げを予定している機体で、新型のMOMO v1としては2機目。6号機ではMOMO初のチャレンジとして、ペイロードの回収ミッションにも挑む。

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    公開された「MOMO6号機」。MOMOとしては初めて、単独スポンサーによる打ち上げとなる (C)IST

MOMO v1は、全長10.1m、直径50cmの超小型液体ロケット。v1は、これまでの機体(v0)での打ち上げや運用で得た知見を元に、エンジンやアビオニクスなどロケットを全面的に改良、信頼性や運用性などを強化した。v1での改良点について、詳しくは以下の過去記事を参照して欲しい。

参考:ISTのMOMO7号機は新型の「v1」にバージョンアップ、ノズルなどを大幅改良

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    MOMO v1のスペック(C)IST

会見には、6号機の単独スポンサーであるTENGAの松本光一代表取締役社長が出席。「TENGAは創業時から、一人一人が自分らしくいられて、自分が好きなことを言え、互いに認め合って一緒に喜べる、愛と自由に溢れる世界を目指してきた。これは、愛と自由の想いを宇宙から届けるロケットになる」と、意気込みを述べた。

MOMO6号機のミッションは以下の3つだ。今回、松本社長からは、開発したペイロードが初めて披露された。

  1. 1000人分の想い・願いをTENGA型メッセージPODに入れて宇宙に届ける
  2. TENGAロボがロケットに搭乗し、宇宙空間から地球へ帰還する
  3. 計測用のTENGAをロケットに搭載し、「宇宙用TENGA」の開発をスタートする

フェアリングの内部には、(3)の宇宙用TENGAが入ったケースを格納する。このケースは、CFRP製の円筒を、アルミ製のフレームで補強することで、強度と軽量化を両立させたという。天井側には高画質のカメラが設置されており、フライト中は内部の様子をリアルタイム中継で見ることができるようになっている。

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    宇宙用TENGAのケース。撮影のために、カメラやLEDを搭載する(C)IST

ケース内には、各種データを計測する宇宙用TENGAのほか、TENGAロボとドッグも格納。ちなみにこのドッグはいわゆる“ゼロGインジケータ”になっており、エンジンの燃焼が完了し、フリーフライト状態になると、透明のパイプ内をぷかぷか浮かぶ様子を見ることができるはず。この映像も楽しみなところだ。

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    ケース内の様子。宇宙船の内部をイメージしたような作りになっている (C)IST

(1)のメッセージPODと(2)の帰還用TENGAロボは、6号機用に開発した放出機構でロケットから分離する。MOMOは4号機でも紙飛行機を放出するというミッションがあったが、機体側の不具合により、実行には至らなかった。今回、宇宙空間での放出と回収に成功すれば、それぞれ国内の民間では初となる。

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    機体の側面には放出口が見える(青円内)。その左の小さな穴は撮影用だ (C)IST

放出機構は、4号機のものを大型化、さらに設計変更で信頼性も高めた。機構の全長は約49cm、重さは約700g。直径3.8cmのものを放出することが可能だ。なお帰還用TENGAロボもこの放出機構でロケット側面から分離するため、前回の会見で言及のあったフェアリングの開頭は不要になり、今回は行わない。

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    放出機構の振動試験には松本社長も立ち会った。一発でクリアしたという (C)IST

また当初、帰還用TENGAロボはパラシュートを展開して減速することが考えられていたが、パラシュートだと風で大きく流される恐れがあり、より確実に回収するため、フィルムで固め、自由落下で着水することになった。着水後にはシーマーカーにより海水が変色するので、それを目印に上空から探索し、海上で回収を行う。

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    これが帰還用TENGAロボ。沈まないようフロートも内蔵している (C)IST

ISTの堀江貴文ファウンダーは、今回の打ち上げについて、「初の機体内カメラや高画質の中継、そして放出と回収は、ISTにとっても大きなミッション。サブオービタルのロケットで、これを行っているロケットは世界でも多分無い。低予算な宇宙空間での実験やエンタメでの活用に扉を開くのでは」と期待する。

打ち上げは、今回も無観客で実施。時期については、「7号機の打ち上げ後、関係各所と調整の上、できるだけ早く行いたい」(ISTの稲川貴大代表取締役社長)とのことだ。

なお、MOMO v1の初号機となる7号機の打ち上げに向け、同社は6月28日に実機を使った燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)を実施。5秒間の燃焼が無事完了し、正常な動作を確認した。技術的な山場をクリアし、打ち上げに大きく前進したと言えるだろう。

MOMO 7号機のCFTの様子

7号機、6号機と今夏に連続で打ち上げを成功させることができれば、MOMOのビジネスに弾みが付くだろう。松本社長も、今後も宇宙用TENGAの開発を続けていくことを明言し、どこかの段階で必要性が出てくれば、「またISTにお願いして、再び宇宙で実験することはあり得ると思う」とエールを送った。

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    中央はTENGAの松本光一代表取締役社長、右はISTの稲川貴大代表取締役社長、左はISTの堀江貴文ファウンダー (C)IST