セコムは6月10日、AIや5Gを活用した新しいセキュリティロボット「cocobo」(ココボ)を発表しました。2021年6月から国内のさまざまな施設で試験運用を開始する予定です。都内で開催した記者説明会では、不審者を光と煙で威嚇するデモなどがメディアに公開されました。

  • セコムが、AIや5Gを活用したセキュリティロボット「cocobo」(ココボ)を発表した

cocoboの概要

セコムでは、2019年6月より自律走行型巡回監視ロボットの「セコムロボットX2」のサービス運用をスタートさせており、すでに成田空港などで導入が進んでいます。今回のcocoboは、その後継機という位置づけ。従来モデルでは、巡回中に不審物を発見すると画像を撮影し、遠隔地の警備員がそれを確認していました。cocoboではAIが独自に判断し、必要に応じて防災センターに通報する仕組みに進化しています。

  • 本体は幅1.2m×厚さ0.7m×高さ1.25mと、それなりの大きさ。重さは約160kg。カメラやLiDARなどのさまざまなセンサー類が所狭しと並んでいる

会場では、巡回ルートを自律走行するデモがメディアに公開されました。屋外の悪路も走行でき、雨や風などの厳しい条件下でも運用できるというcocobo。なるほど、廊下に設置された高さ5cmの段差やスロープ程度なら、難なくスイスイ乗り越えて進んでいきます。設定すれば、エレベーターを使ってほかのフロアも巡回できるといいます。これ1台だけでも広いエリアをカバーできそうですね。もちろん、オフィスの広い企業であれば、複数台を同時に走行させる使い方も可能。最大時速6kmで、連続走行時間は3時間となっています。

  • デモでは、部屋の中に放置されたスーツケースを発見。アラートで知らせたが、所有者がスーツケースに近寄るとアラートが解除された

特殊なアームを装着することで、ゴミ箱の中に熱源がないか、自動販売機の下など狭いところに危険物がないか、といった点検をすることも可能に。マジックハンドを取り付ければ、扉が施錠されているかどうか、ドアノブを回して調べることもできます。

  • 交換アタッチメントとしてアームを装着できる。用途にあわせた複数のアームが用意される

地下の駐車場に移動して行われたデモでは、ドアのカギをピッキングで開けようとしている不審者を発見。cocoboはライトを当てながら「誰だ。何をしている」と警告し、不審者が近寄る素振りを見せると、遠隔操作で煙を勢いよく噴射して威嚇を行いました。

  • 不審者を検知すると、遠隔操作で煙を噴射して威嚇する機能を備える

不審者がcocoboに近寄ろうとすると、すごい音とともに煙が噴射され、不審者は思わずひるむ

担当者は「cocoboを単体でレンタルするのではなく、常駐警備員との組み合わせで、施設警備のひとつとして提供していく考えです。1人につき月数十万円という人件費よりもリーズナブルにご提案できるのが魅力。競合する警備会社さんとのコラボも視野に入れています。柔軟に対応していけたら」と説明します。

  • cocoboのシステム構成

  • cocoboのスペック表

発表会に登壇したセコム 常務執行役員の上田理氏は、cocobo発表の背景について「警備ニーズが高まっています。一方で、ロボットの存在が社会に浸透してきました。開発環境が良くなり、AI、5G、クラウド、センシングといった先端テクノロジーによる可能性が拡がりました。人間の代替としてだけでなく、ロボットだからこそできる警備も出てきました」と説明。cocoboは2021年6月より先行運用を開始し、量産化をスタート。2021年内には正式にリリースする予定です。

デザインを手掛けたのは、家族用ロボット「LOVOT」のデザイナーとしても知られるznug designの根津孝太氏。同氏は「威圧しない、けれど威厳がある、という難しいコンセプトに挑戦しました」と話します。曲線的で柔らかい印象を与えることで威圧せず、低重心で安定感があるフォルムで威厳を表現した、とのことでした。

  • 左からセコム 常務執行役員 企画開発担当の上田理氏と、znug designの根津孝太氏