AMDは6月8日、Radeon ProシリーズにNAVI 2ベースのRadeon Pro W6600及びW6800を発表した。これに関して事前説明会があったので、その内容を元にご紹介したい。
今回発表の3製品(W6600が2製品ある)は、いずれもNAVI 2ベースの製品である。つまりHawdware RayTracingが可能になった最初のRadeon Proという格好だ。
まずはDesktop向け。Radeon Pro W6800はNAVI 21ベースである(Photo01)一方、Radeon Pro W6600は先だって発表されたNAVI 23をベースとしている(Photo02)。ちなみにラインナップであるが、デスクトップ向けはRadeon Pro W6800が$2,249、Radeon Pro W6600が$649になっている(Photo03)。Mobile向けもNAVI 22のRadeon RX 6700Mが後追いになっているあたり、まずNAVI 21、次いでNAVI 23、最後にNAVI 22(*1)という順番で量産が行われているようで、あるいは後追いでRadeon Pro 6700Wもいずれ追加される可能性があるかもしれない。
改めて両製品をまとめるとこんな感じ(Photo04)。Mobile版のRadeon Pro W6600Mもスペックそのものは同一で、ただしモジュールのは237平方mm、TGPは65~90Wとされている(デスクトップ向けのRadeon Pro W6600MはTGPが最大100Wとなっている)。
Radeon Pro W6800の方はまぁ、ほぼRadeon RX 6800と概ね同じ構成(Photo05,06)である。一方Radeon Pro W6600M(Photo07,08)の方は、まだRadeon RX 6600シリーズが未発売という事もあってちょっと興味深い。
さて、構成そのものはそんな訳で既存のRadeon RXシリーズと変わらない(Radeon RX 6600はまだ未発売だが)。ではRadeon Proシリーズの差別化要因は? というとこれは当然ソフトウェア側にある。以前もどこかで書いた気がする(もう過去記事を探すのが面倒なのでリンクはしない)が、Radeon Proシリーズに対応するRadeon Pro Softwareと、コンシューマ向けのRadeon Software Adrenalinの最大の違いは、アプリケーションでの認証が取れている事である。例えば3D CADで、本来接続されている筈のオブジェクトが離れて表示されたり、その逆だったりというのは、性能云々の前にアプリケーションが使えない。あるいはレンダラーなどで色がおかしいとか、分析の結果の表示が正しくないとか、そういった事があると致命傷である。それもあってRadeon Pro Softwareでは、実際のアプリケーションを利用して正しく表示できている事の認証をアプリケーション毎に取得するという、ものすごく手間のかかる作業を行っている。2018年以降で言えば、既に1,700以上のアプリケーション認証を取得しているとしている(Photo09)。Radeon Proシリーズの値段が高価なのは、こうしたアプリケーションの検証コストも加味されている(勿論コンシューマモデルと異なり、メモリ容量は32GBだし、ECCのサポートがあるという部分もあるので、ビデオカードそのものの値段も大分違うのだが)と考えれば良い。その上で今回のRadeon Pro W6000シリーズは、非常にコストパフォーマンスが良いというのが売りである。Radeon Pro VIIと比較すると、わずかな値上げで大幅な性能公上になっているとする(Photo10)ほか、競合製品と比較しても性能/価格比が優れている(Photo11)とする。
これに加えて今回新しく発表されたのが、Radeon Pro Viewport Boost(Photo12)である。要するにより高解像度でのフレームレートを高速化するというもので、イメージのロードなどにも効果的とされる。実際、Autodesk Revitではウォークスルーの際のフレームレートが2倍に高速化されたとする(Photo13)。他にも、例えばMetashapeを使っての航空写真から3Dイメージの生成が大幅に高速化された(Photo14)とし、競合と比較しても十分高速になるとする(Photo15)。あるいはLumion 11.0での性能は、Radeon Pro W5500と比較して最大3.6倍近くに高速化される(Photo16)。このLumionに関していえば、Version 10.5からの性能はRadeon Pro W6800の方が高速な他、RAM容量が効果的に作用する(Photo17)としている。
もう一つの大きな特徴はHardware RayTracingである。NAVI 2からRay Tracing Engineが搭載されたことで、これまでと比較してRayTracingが大幅に高速化されたとする(Photo18)。Photo19はQuadro RTX 5000 vs Radeon Pro W68000で60秒のレンダリング後のイメージだが、Photo18からも明らかなようにQuadro RTX 5000とレンダリング性能はほぼ同等ということで見分けがつかない。これが10秒(Photo20)だと、もう少し判りやすく差が出る。レンダリング途中でアングルを変えたりする場合に、より早く結果が反映されるので、プレビューとして便利という話であった。
AI周りで言えば、Topaz Video Enhanced AI 2.0での性能(Photo21)、及びDxO ProtoLab 4に搭載されるDeepPRIME(AIベースのノイズ削減)の処理性能(Photo22)が示されている。
という訳で、これまで大分NVIDIAにビハインドを追っていたRadeon Proシリーズであるが、Quadro RTX 5000は完全にキャッチアップできるところまで性能を上げてきた事が今回示された形だ。ちなみにもう一つ大きな変更点としてパッケージ(製品の化粧箱)の小型化が挙げられているが、これそれほど大きな話なのだろうか???(Photo23)。