米AMDは日本時間の6月1日、今年もオンライン開催となったCOMPUTEX 2021における基調講演にタイミングを合わせ、リテール向けのRyzen 5000Gとビジネス向けRyzen Pro 5000G、それとMobile向けのRadeon RX 6000Mシリーズを発表した。ということで、これをまとめてご紹介したい。

リテール向けRyzen 5000G

先月、OEM向けに出荷が開始されたデスクトップ向けRyzen 5000Gシリーズ6製品であるが、このうちRyzen 5 5600GとRyzen 7 5700Gの2製品についてリテール向けパッケージでの発売も行われることになった(Photo01)。価格はそれぞれ$259、$359となっており、競合製品(例えばRyzen 7 5700GならCore i7-11700あたり)と比較するとちょっと高値(Core i7-11700は推奨小売価格が$323.00~$333.00とされる)ではあるが、性能/消費電力比とか性能/コストの高さで十分勝負になる、という判断らしい。実際Core i7-11700との比較(Photo03)では非常に良好な数字を示している。特にGPUに関して言えば、Rocket Lakeの内蔵GPUはゲームをプレイできるレベルではないだけに、大きな差がある、というのがAMDの主張だ。

  • AMD、リテール向けRyzen 5000Gやビジネス向けRyzen Pro 5000G、モバイル向けNAVI 2などを一挙発表

    Photo01: スペックそのものはOEM向けと全く同一。ただRyzen 3グレードやTDP 35WのGEシリーズのラインナップが無いのはちょっと残念。

  • Photo02: 発売日はどちらも8月5日である。

  • Photo03: もっともRyzen 5000Gシリーズの内蔵GPUの性能は、Ryzen 4000Gシリーズの性能+α程度と考えるべきで、過度の期待は禁物であるが。

デスクトップ向けRyzen Pro 5000G

ついでビジネス向け。昨今はノートPCの普及が進んでいるとはいえ、ビジネス向けデスクトップも一定のシェアがある(Photo04)というのが同社の説明であり、ここに向けて製品も次第に増え、シェアも段々増加している(Photo05)ということで、決して軽視している訳ではないと強調した。

さて肝心の製品であるが、スペックそのものはOEM向けと同じくRyzen 3/5/7向けにそれぞれTDP 65WのGと35WのGEを投入する形だ(Photo06)。性能としては、Ryzen 7 Pro 4750Gとの比較(Photo07)やCore i7-11700Kとの比較(Photo08,09)なども示されたが、一番主張したかったことはこちら(Photo10)だろうと想像される。

HPはElideDeskとProDeskのラインナップに(Photo11)、LenovoもThinkCentreのラインナップに(Photo12)それぞれRyzen Pro 5000Gシリーズを導入することも今回明らかにされた。

  • Photo04: COVID-19の影響で2020年は台数が減った(モバイル向けに流れた)ものの、今後はこの4500万台前後の出荷量が毎年続く、とする。

  • Photo05: ただマーケットシェアを絶対的な数値ではなく、2017年との比率で示すあたりは、絶対的なシェアそのものはまだ相当低いものと思われる。

  • Photo06: モデルナンバーが50ずつ加算されているのはAMD Pro機能を有効にしている分と思われる。

  • Photo07: これはCPU CoreがZen 2→Zen 3になった事が大きい。

  • Photo08: こちらはCypress Cove vs Zen 3だから、IPCという点では大きな違いはないとは言える(Passmarkはあまり当てにならない気が...)

  • Photo09: PCMark 10のApplication Testの結果が無いあたりは、あまり良い結果ではなかったのだろうと想像される。

  • Photo10: ビジネスPCの場合、性能よりも省電力性の方が価値が高そうではある。もっともこれが問題になるのは、数千台~数万台規模の導入であろうが。

  • Photo11: 最近はこうしたSFF(Small Form Factor)のマシンが随分増えてきたように思う。

  • Photo12: 右のM75q Gen2は、仕方ないのでモニターの右にちょっと顔を出してますという格好になっているのが面白い。

モバイル向けRadeon 6000Mシリーズ

やっと、という感じであるがGaming Note向けのNAVI 2がラインナップされることになった。ハイエンドはNAVI 22を利用したRadeon RX 6800M(Photo13)で、40CU/2300MHz駆動で、GDDR6を12GB搭載する。GeForce RTX 2070との比較(Photo14)では1.4~1.7倍のフレームレートを実現できるとし、1440pで主要タイトルがMax Settingのまま120fps超えを達成(Photo15)、GeForce RTX 3070/3080 Laptopとも十分に競合出来る(Photo16)とする。

その下のグレードが、同じくNAVI 22を利用しつつ36CUとし、Infinity Cacheを80MBに抑えたRadeon RX 6700M(Photo17)であるが、こちらは出荷時期がやや後送りになるようだ。"EPIC 1440P Gaming"というあたり、メインストリーム向けらしい価格で投入され、GeForce RTX 3070 Laptopあたりが丁度競合になる感じであろう。

さて、その下のエントリ向けに、NAVI 23を初搭載したのがRadeon RX 6600Mである(Photo18)。NAVI 22(Photo19)とNAVI 23(Photo20)は物理的にレイアウトが異なるし、Infinity Cache向けと思しき領域が明確にかなり少なくなっている。同じTSMCの7nmを使っている事を考えると、かなりダイサイズは小型化したようだ。

こちらは1080pがターゲットであり、1440p以上ではInfinityCache不足で深刻なメモリ帯域不足から相当フレームレートが落ちるだろうが、逆に1080pどまりであれば結構高い性能が出せるとしており(Photo21)、GeForce RTX 3060 Laptopと比較しても遜色ない性能が発揮できるとしている(Photo22)。

このRadeon RX 6800MとRadeon RX 6600Mは同日より出荷開始となっている。恐らくCOMPUTEXで各社からこれを搭載したGaming Noteのお披露目が行われるのではないかと思う(Photo23)。

  • Photo13: さすがに消費電力的や発熱的にNAVI 21は無理だろうと思うので、妥当な選択だとは思う。

  • Photo14: なんでRTX 2000シリーズなのだろう?

  • Photo15: 2.5Kあたりがターゲットということだろうか?

  • Photo16: 比較機材がROG Strixベースであることを考えると、こちらも1440pでの比較な気がする(脚注にこのあたりの詳細が掲載されていない)。

  • Photo17: メモリも10GBに抑えられた。

  • Photo18: Infinity Cacheがわずか32MBまで減らされている。その分ダイサイズはかなり小さくなっていると思われ、コスト的にはかなり有利そうだ。

  • Photo19: NAVI 22のダイ。周囲に20組/40個並ぶCUを取り囲むように、Infinity Cacheのエリアが結構広く存在する。

  • Photo20: NAVI 23。CUそのものは32個(うち4つを無効化して28CUで利用している様だ)で大きくは違わないが、InfinityCacheの領域が大幅に減っているのが判る。

  • Photo21: Max SettingでBorderlands 3とかDirt 5など70fps超えは、悪い数字ではない。

  • Photo22: とは言え、差はそれほど大きくないが。

  • Photo23: 今回は消費電力などの話は無し。このあたりはいずれ説明があると思うが。

FidelityFX Super Resolution(FSR)

NVIDIAのDLSSの対抗策としてAMDが開発してきたのがこちら。違いは機械学習を使わない事で、なのでNVIDIAの様にTensor Coreを搭載しないGPUでも高速化が可能という謳い文句になっている。具体的に4K+Ray Tracingという環境でGodFallを実施した場合の性能がこちら(Photo24)で大幅に向上する、としている。なんとこの技法、別にAMDのハードウェアでなくても利用できる(Photo25)という話であった。勿論DLSS同様に、こちらもゲーム側での対応は必要になるが、既に10のゲームスタジオやゲームエンジンが対応を進めているとする(Photo26)。このFSR、6月22日に利用可能になるという話であった(Photo27)。

  • Photo24: Quality設定で性能ブースト率は変わってくるが、Ultra Qualityでも78fpsというのはなかなか凄い。

  • Photo25: GeForce GTX 1060でも27fps→38fpsに性能が向上するとする。RT Coreは搭載していないので、当然これはRay Tracing Offである。

  • Photo26: Image Qualityの4の意味が今一つ不明である。"for Quality Settings"(FourをForに置き換え)のつもりだろうか?

  • Photo27: これは多分6月22日にFSR対応Radeon Driverがダウンロード可能になるという意味だろうが、問題は対応ゲームは? というあたりだろうか。