宇宙ビジネスのロケット・輸送分野において、近年の海外ベンチャーではとても斬新でユニークな打ち上げ方法やコスト削減策が多く見られる。

多くの読者がすぐに思いつくのは、例えば、Space XのFalcon 9の第1段部分の垂直着陸帰還やパラシュートで落下してくるフェアリングの船による回収などだろう。 この垂直着陸帰還は、Blue OriginのShepardも同様の施策に成功しているし、日本でも先日、経済産業省の有識者会議において次世代ロケットにおいてこの垂直着陸帰還の技術開発を進める旨が報告されている。

つまり、世界のロケットのトレンドとして、垂直着陸帰還によるコスト削減策は、当たり前になりつつあるのだ。

そんな中、さらに上をいく斬新なアイデアでロケットを開発しようとしているベンチャーが中国に存在する。LINKSPACEだ。今日は、このLINKSPACEについてフォーカスしたいと思う。

中国初のロケットベンチャーLINKSPACEとは?

LINKSPACEは、2014年に設立された中国のロケットベンチャー企業。本社は北京にあり、山東省でロケットの製造と試験を行い、青海省で打ち上げを実施している。

LINKSPACEの強みは、なんといってもロケットの再利用技術、垂直着陸帰還技術、コスト削減。彼らのTwitterをフォローするとロケット分野で世界をリードし、垂直着陸帰還技術を駆使しているSpace Xをリスペクトしていることがよくわかる。

彼らのロケットのラインナップは大きくSRV-1、NEWLINE-1の2種類。SRV-1は、2020年第3四半期に発売され、NEWLINE-1は2021年第4四半期に発売される予定だ。

  •  LINKSPACEのNEWLINE-1

    LINKSPACEのNEWLINE-1(出典:LINKSPACE)

まず、NEWLINE-1について少し紹介したい。NEWLINE-1は、高さ24m、直径1.8m、重量42tの2段式ロケット。燃料は不明だが、高度500km(太陽同期軌道)へ200kgのペイロードを輸送することができるようだ。

中国の動画共有サイトbilibiliにてLINKSPACEが投稿しているNEWLINE-1の動画をぜひご覧いただきたい。ロケットが打ち上げられ、第1段部分が帰還し垂直着陸する様子が動画で紹介されている。

動画を見ていると正直なところ、SpaceXのFalcon9の垂直着陸帰還シーンを見ているような錯覚を感じてしまうほどだ。このような施策によって、ホームページには、NEWLINE-1はReusable Ratio 75%以上と記載されている。

100%再利用型垂直着陸帰還ロケットSRV-1とは?

次に、100%再利用型の垂直着陸帰還ロケットSRV-1を紹介しよう。高さ15m、直径1.2m、重量8.5トンのロケット。液体酸素、メタンを燃料としている。こちらもぜひ動画をご覧いただきたい。かなり興味深いものになっていることに気づいていただけると思う。

まず、打ち上げられた後、第1段部分は分離しないで、ロケット全体がそのまま宇宙へ輸送されるのだ。多段式ロケットではない新しいタイプの構造だ。

次に、フェアリングが分離しない。驚くのはフェアリングに自動扉がついていて、その扉が開き、そこから衛星が放出されるのだ。そして、衛星を放出した後ロケットは、そのまま地上へと帰還し垂直着陸するのだ。同社のホームページによると、これにより打ち上げコストが90%削減可能という。

  •  LINSPACEのSRV-1 のフェアリングから衛星が放出される様子

    LINSPACEのSRV-1 のフェアリングから衛星が放出される様子 (出典:LINKSPACE)

いかがだっただろうか。かなり斬新なロケットが中国のベンチャーから登場した。

SRV-1が、VTVL(Vertical Take-off Vertical Landing)タイプの輸送機で、現在の最新のアイデアとコスト削減策をもったロケットであることは間違いなさそうだ。

他にも、Virgin OrbitやStratoLaunchのような飛行機の胴体下部に搭載したロケットを飛行中に打ち上げるものは、コスト安であるが、ロケット部分は使い捨てであるし、Reaction Enginesなどは完全再利用型の有翼型輸送機については、ハイブリットエンジンの開発にまだ少し時間がかかるようだ。

すでにLINKSPACEが発売しているという100%再利用型垂直着陸帰還ロケットSRV-1を世界が模倣し、将来、世界のスタンダードなロケットとなっていく可能性が十分にあるのではないだろうか。