NEDOが新設した新領域・ムーンショット部とは
新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)は、2021年4月1日に「新領域・ムーンショット部」と「ムーンショット型事業推進室」を新設するなどの体制変更と組織を公表した。
NEDOは従来、主に日本国内で新規事業起こし・新産業起こしを支援するNEDOの技術・事業戦略領域を示す部や室名を設け、その特定技術、事業領域を支援してきた。
例えば、現在は「ロボット・AI部」「IoT推進部」「材料・ナノテクノロジー部」といった日本国内を中心に新規事業起こし、新産業起こしを図っている技術・事業領域を示す名前が当該の担当部・室に付けられている。
NEDOはこれまでも新規事業起こし・新産業起こしを支援する部や室を設けて、その名称を適時最適化してきた
これに対して、今回新設した新領域・ムーンショット部は、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が日本発の破壊的イノベーション創出を図る、挑戦的な研究開発プロジェクトを推進する狙いに基づいて、内閣府が2020年(令和2年)1月に設けた「ムーンショット研究開発事業」の7つの目標の中の目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を実践する研究推進法人としてNEDOが委託された経緯から設けられたもの。
※注
内閣府はムーンショット型研究開発制度の概要と目標について、「超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な 目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究を推進する制度」と説明している。困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題などを対象とした野心的な目標と構想を国(内閣府など)が策定した制度だと説明している。 「ムーンショット」(Moonshot)という言葉は、米国の第35代大統領のジョン・F・ケネディが「月へ向かってロケットを打ち上げるアポロ計画」を語ったスピーチの中で使われた言葉という。
この目標4を達成する研究開発とその事業化を図る担当組織が新領域・ムーンショット部とムーンショット型事業推進室である。
部長を務める山田氏に聞いた新領域・ムーンショット部が目指すミッション
そこで、新領域・ムーンショット部およびムーンショット型事業推進室の部長・室長を務める山田宏之氏に、同部・同室が進める事業概要などを聞いた。
――新領域ムーンショット部・ムーンショット型事業推進室が進める事業内容を教えてください。
山田氏: 内閣府が描いた目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を目指す概念図として、地球温暖化問題の解決目標Cool Earthと環境汚染問題の解決目標Clean Earthが描かれています。
Cool Earthは地球温暖化を止め、低減する問題解決の概念を示しています。Clean Earthは海洋プラスチックごみ問題などの環境汚染問題の解決を図る問題解決の概念を示しています。その両方の問題解決を図る問題解決テーマとして窒素化合物問題の解決を図る模式図が描かれています。
目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を目指す体制の責任者であるとPD(プログラムディレクター)して、NEDOは2020年2月20日に公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)の山地憲治副理事長・研究所長を指名し就任していただいています。
PDは、ムーンショット目標4を戦略的に達成するためのポートフォリオを構築し、各具体的なプロジェクトを指揮します。2029年度までの10年間の前半の事業予算は約200億円の見通しです(注:これからの各年度に具体的に積み上げていく)。
――新領域ムーンショット部が進めている具体的な事業内容を教えてください。
山田氏:ムーンショット目標4に直接かかわる事業では、山地憲治PDを中心に、具体的な研究開発プロジェクトを募集し、2020年8月26日に合計13件の研究開発プロジェクトを選んでいます。この時は、前身のイノベーション推進部 ムーンショット型研究開発事業推進室が担当しています。
その際に選ばれた13件の研究開発プロジェクトは、「温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発」プロジェクトには7件、「窒素化合物を回収、資源転換、無害化する技術の開発」プロジェクトには2件、「生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発」には3件が採択されています。
例えば、「温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発」プロジェクトでは、産業技術総合研究所など3法人が提案した「電力利用CO2固定微生物の創出と 気相反応システムの構築による大 気CO2資源化技術の開発」が採択されています。このプロジェクトは産業技術総合研究所の加藤創一郎氏がPM(プログラムマネジャー)を担当しています。大気中に拡散したCO2を人工的に直接回収する技術のDirect Air Capture(DAC)は挑戦的な研究開発テーマです。
各プロジェクトには、それぞれPMが一人配置され、PDの下で、目標達成に向けて戦略・戦術を最適化していきます。
――新領域ムーンショット部・ムーンショット型事業推進室が目指すミッションはどういったものですか。
山田氏:新領域ムーンショット部が目指すものは、一言でいえば「イノベーション創出を担う人材育成」です。日本の新産業起こしを担う研究開発人材を支援していくことがミッションです。これについてはいずれ具体的にご説明したいと考えています。
「イノベーション創出を担う人材育成」について、常に議論し続け、挑戦し続ける人材育成を目指しています。