KDDIは5月14日、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)決算説明会を開催しました。それによれば増収増益の決算で、売上高、営業利益ともにNTTドコモ、ソフトバンクを上回っています。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、金融・決済、法人の分野で収益を伸ばすことで、今後とも持続的成長を維持していく考えを示しました。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

連結業績

2021年3月期の連結業績は、売上高が5兆3,126億円(前年同期比1.4%増)、営業利益は1兆374億円(同1.2%増)でした。高橋社長は「激変する環境下において成長領域がけん引し、増収増益を達成できた」と評価しています。

  • 2021年3月期の連結業績

売上高の内訳を見てみると、低廉な料金プランの導入によりauの通信ARPAの収入は減収のトレンドが継続中。一方で、ライフデザイン領域とビジネスセグメントの成長領域が大きく増収しており、トータルで増収を実現しています。

  • 売上高の内訳。通信料金の値下げ影響を、成長領域の売上高で打ち返した

これを受けた2022年3月期の連結業績予想は、売上高が5兆3,500億円、営業利益は1兆500億円となる見込み。高橋社長は「通信料金の値下げ、競争環境の激化、新型コロナウイルスによる生活様式の変化を事業機会と捉え、持続的成長を目指していきます」としました。

  • 2022年3月期の連結業績予想。成長領域のさらなる拡大、コスト削減の推進、安定的なキャッシュフロー創出により株主還元を強化していく

業績好調の理由は?

メディアの質問に、高橋社長が回答しました。

売上高、営業利益が競合他社を上回ったことについて(NTTドコモは売上高が4兆7,252億円、営業利益が9,132億円。ソフトバンクは売上高が5兆2,055億円、営業利益が9,708億円)聞かれると、「おかげさまで売上高、営業利益ともに良いポジションになりました。通信に対する値下げ要請が強く、通信は減収しましたが、ライフデザイン領域やビジネスセグメントを伸ばして早めに補えました。持続的成長を視野に入れて経営を続けてきた結果だと思います」と回答しました。

  • ライフデザイン領域、ビジネスセグメントの成長がカギ

来期の携帯電話料金の値下げ影響については「どの程度、お客様還元になるかということです。22年3月期のID数とARPUからざっと計算しますと、IDが3,180万、ARPUも4,400円から4,200円まで下がりましたので、600億~700億円がお客様還元(値下げ影響)になるとの認識です」。

100万契約が見えてきた「povo」について

オンライン専用プラン「povo」の進捗について聞かれると、「結構順調に来ています。なんとなく100万契約が見えてきました。最初の段階では、auのお客様がpovoに移行する比率が高かった。一部、他のキャリアからも来ていただいています。プロモーションを通じて、povoの認知率もようやく6~7割に上がってきたところ。今後の伸びにも期待しています」。

ちなみに、NTTドコモの「ahamo」は有償ながらショップでサポートを行うことを発表しました。これについては「povoは、いまのところ店頭サポートの対象には入っていません。市場環境やニーズを鑑みて検討したい」と回答しました。

povoは「トッピング」(追加オプション)が特徴です。この利用率について聞かれると「利用者の数は非公表ですが、『データ使い放題24時間』などが好評です。次に投入するトッピングも絶賛検討中です。かわいいキャラクターがいまして、LINEスタンプも配信されました。通信料金以外の特徴を持つトッピングを提供できたら」と話していました。

  • povoのトッピングについて

5G端末の販売が好調、240万台に到達

5G端末の累計販売台数が早期に240万台に到達できた理由について聞かれると「販売する端末をすべて5G対応にしたことが功を奏して、当初の予定よりも良い数字が出せました」と回答。22年3月末には累計700万台超を目指していると説明し、「5G SA(スタンドアローン)時代も見据えています。法人でも、本格的に5Gの利用を促進していきます。エリアも拡大しますし、5Gの有効性がますます高まっていくのでは」と説明。5Gのエリア展開にともない、5G端末の販売数も伸ばしていけると期待を寄せました。

  • 5G端末の累計販売台数が240万台に到達

これに関連して、今期の設備投資6,300億円の根拠と内訳について聞かれると、「昨期よりも微増しています。セールスの11%前後を設備投資に充てるようコントロールするのが、グローバルでも標準のようです。内訳は非開示ですが、ほぼ5Gに充てています」と説明しました。なお、5G SAについては2021年度の後半にサービスを開始すべく準備を進めているとのことです。

  • 5Gのエリア構築について

楽天エリアの進捗は?

次はローミング収入について。第4のMNO事業者として業界に参入した楽天モバイルですが、これまで自前のネットワークが行き届かないエリアはKDDIのネットワークを借りて運用してきました。両社の契約では、楽天モバイルの自前エリアにおける人口カバー率が70%を上回った時点で(両社の協議を以て)各都道府県のローミング提供の継続・終了を決定するとしています。

この進捗について聞かれると、高橋社長は「もともとの想定よりも、楽天さんがエリア拡大を早めています。順次、ローミングを終了したエリアがあるということです。ただ一部、70%を超えても楽天さんのご要望に応じてローミングを残しているエリアもある。楽天さんがエリアをカバーしているのに、うちのネットワークを使っていただいている部分もあり、思った以上にローミングを使っていただいている。収入面では、稼働数が想定よりも若干増えています。収入計画としては、そんなに狂っていません。いずれにしても楽天さんとは5年間で契約していますし、うちも慈善事業でお貸ししているわけではありません。ビジネス条件がありますので、彼らが一方的に早く終了するがゆえに、我々の収入が大幅に減っていく、ということにはならないとご理解いただければ」と解説しました。

3G回線の巻き取り、UQ統合の効果は?

3G回線の巻き取りについては「加速させていきます。サービス終了まであと1年を切りましたが、コンシューマ、法人も順調に推移しています。コロナで若干、遅れた部分もありますが、機種変更の数も元に戻りつつありますし、予定通り進めていけるのでは」との見方を示しました。

UQ mobileを統合した効果について聞かれると「昨秋、UQ mobileを統合しましたが、正直に言って、やってよかったと思いました。UQの社員も弊社に入り、精力的に業務にあたっていますし、運用コストの効率化も図れた。auユーザーのなかにも、UQのシンプルさに期待している方もおられる」。

  • au、UQ mobile、povoのマルチブランド戦略

UQ mobileを取り扱う店舗については、「直営店とau Styleで200店舗、auショップで1,600店舗、UQスポットが240店舗ありますので、いま全国の2,000店舗でUQ mobileが申し込める状態です。au、UQ mobile、それぞれに良さがありますので、用途に応じて選んでいただければ」と話しました。