サムスン電子の完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds Pro」は、Proと付く通り「Buds」シリーズの最上位モデル。新しいハイエンドスマートフォン「Galaxy S21」シリーズ(au・NTTドコモ)の予約キャンペーンでプレゼントされるというのも毎回恒例ですが、単品ではおおむね2万円前後で販売されており、なかなかの高級モデル。今回、ノイズキャンセリング周りを重点的にチェックしてみました。

  • 完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds Pro」

    Galaxy Buds Proの本体カラーは、ファントムバイオレット、ファントムブラック、ファントムシルバーの3色。試用したのはファントムブラック

コンパクトで長寿命の完全ワイヤレスイヤホン

Galaxy Buds Proは、コンパクトな本体とケースがセットになった完全ワイヤレスイヤホン。空豆型の「Galaxy Buds Live」は耳の穴の周辺を埋めるようにはめ込むという感じでしたが、Buds Proはイヤーチップを耳の中に差し込む、従来のBudsスタイル。全体の形状は小さく、耳からの出っ張りは少ないので装着時も目立ちません。

イヤホン部分(片側)のサイズは幅19.5×高さ20.5×厚さ20.8mm、重さは6.3gです。BluetoothバージョンはBluetooth 5.0、コーデックはAACとSBC、サムスン独自のScalable Codecをサポートしています。充電ケースのサイズは幅50.0×奥行き50.2×高さ27.8、重さは44.9gです。

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    Galaxy Buds Proの充電ケース。コンパクトで持ち運びは容易

イヤーチップは大中小と3種類あるので、ピッタリ合うものを選べばいいのですが、密着感は強く、激しく動いても落ちる心配はなさそうです。逆に言えば多少の圧迫感はあります。

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    ケース内に収納したGalaxy Buds Pro

耳にすっぽり収まるため本体はコンパクト。それ伴ってケースも小型です。USB Type-Cに加えてワイヤレス充電に対応し、スマホからの給電に対応したGalaxyスマホや他社製スマホなら、スマホ背面からのGalaxy Buds Proへの充電も可能です。

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    充電ケースにはUSB Type-C端子を搭載

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    電力供給をサポートしたスマホをはじめ、Qi対応の充電器を使ってワイヤレス充電が可能

バッテリー駆動時間は最大約8時間。合間合間に充電ケースで充電すれば最大約28時間、音楽を聞けます。実際、普通に使うぶんには1日でバッテリー切れになることはないでしょう。ただし、これは後述するANC(アクティブノイズキャンセリング)をオフにした場合。正直、ANCをオフにして常時使うメリットはあまりないと思いますので、その場合は連続5時間。充電ケースとの併用で最大約18時間となります。

レビュー中に1時間強のリモート会議を2連続(計2時間強、ANCオン)してみましたが、バッテリーは半分ほど残っており、想定通りのバッテリー駆動時間となりそうです。5分間で約1時間分の充電が可能ということなので、会議の合間にちょっと充電するだけでも安心できそうです。

長時間の国際フライトではやや物足りない連続使用時間ですが、機内で食事や寝る時間を使って充電すれば十分でしょう。とはいえ、今や出かける機会がなくなってしまったので、当面はバッテリーの問題はなさそうです。

作業に集中できるノイキャン機能

最大の特徴ともいえるのが、強力なインテリジェントANC(アクティブノイズキャンセリング)機能です。カナル型Budsシリーズでは初搭載ということですが、「周囲の雑音を最大99%まで抑える」としています。「インテリジェント」ということで、騒音が大きい環境ではキャンセルレベルを強めに、静かな環境では弱めに、環境に合わせて自動で最適化してくれます。

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    メッシュ部分はマイク。さらにこの反対側にもマイクがあります

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    内側にもインナーマイク

Galaxy Buds Proを利用するには、スマホのGalaxy Wearableアプリが必要。もちろんGalaxy端末以外でも使えます。アプリには、ANCの設定、音声検出のオンオフ、タッチ操作のカスタマイズ、イコライザーの設定などが用意されています。

ANCの設定では、ANCオンオフ、および周囲の音の取り込みという3つの切り替えが可能で、ANCの適用レベルは高・小の2段階です。基本的には「高」で問題ありませんが、呼びかけられたら反応したい場合は「小」にしておくとよいでしょう。

今回、国内線の飛行機内、電車内、屋外、カフェ、テレビの音が流れる室内など、いろいろなシーンで使ってみましたが、効果はかなり明確。完全に無音となるほどではありませんが、音楽を聴いている限りは、外音がほとんど気にならないレベルです。

  • 耳にすっぽり収まるサイズ感

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    Galaxy Wearableアプリにおけるノイズコントロール。ANCのオン・オフ、周囲の音の取り込みの3種類から選択可能。ANC強度の設定は2段階

例えば、室内の換気扇の下でANCをオンにしたところ、完全に換気扇の音が消えました。話しかけられるとわずかに声は聞こえますので、呼びかけに反応はできる、というレベルです。カフェなど、背景のガヤガヤ音はすっかりきれいにキャンセルされます。音楽を流さなくても、集中したいときに装着する使い方も便利でしょう。

外音取り込みモードも搭載。マイクを使って外音を取り込むので、周囲の音がよく聞こえるようになります。音の取り込みレベルも切り替えられ、聞こえてくる音も自然。圧迫感が気にならなければ、常時装着していても支障がない印象です。

ホワイトノイズがやや耳障りではありますが、周囲の音は自然に聞こえるので違和感は少なくなっています。取り込みレベルを最大にすると、周囲の雑音も最大限に聞こえるので会話はしやすくなりますが、それならイヤホンを外したほうがいいかなという感覚でした。

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    外音取り込みをオンにすると、取り込みレベルも設定できます。最小でも問題ありませんが、最大にすると周囲の音が少し大きく聞こえるようになります

Galaxy Buds Proのタッチ操作は、長押しのみカスタマイズ可能。左右それぞれで長押し時の設定を切り替えられ、ノイズコントロールの切り替えや音声コマンド、Spotify、音量アップ・ダウンなどを割り当てられます。

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    Galaxy Wearableアプリでの設定画面。長押しに設定する機能だけは選択できます

ANCと外音取り込みを連携させる「音声検出機能」

音声検出機能も重宝します。自分が話し始めるとANCから外音取り込みへと切り替えることで、他人との会話を自然に継続する機能です。聴いていた音楽の音量も下がるので、問題なく会話できるようになります。

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    音声検出機能の設定。音声が検出できなくなってから外音取り込みを維持する時間を設定します

音声検出機能を試したところ、「アイウエオを話したらエのあたり」でANCがオフになりました。声の大きさではなく話し方がポイントのようで、失敗すると反応しないこともありましたが、話し始めると比較的すぐに切り替わります。

自分が気付かないタイミングで話しかけられるとANCの効果で対応が遅れそうですが、店で注文するときなど、会話のタイミングが分かる場面では問題ありません。音楽の停止、ANCの切り替えといった手間もかかりません。ちなみに、ANCオフの状態でも音声検出は働くので、話し始めれば音楽の音量を下げられるというメリットもあります。

デフォルトでは10秒程度で元のモードに戻ります。相手が話している途中でも急にANCがオンになって音楽の音量が上がります。こちらがずっと話し続ければそのまま継続するのですが、自分が10秒間黙るとオフになってしまうので、やはり長時間話すような状況には適していません。コーヒー店でコーヒーを注文して店員が値段をいう――くらいの状況で使うと便利そうです。

音声入力(テキスト化)や360度オーディオなどの機能も豊富

マイク機能も重視しているとのこと。3つの内蔵マイクとボイスピックアップ装置を備えて、クリアな音声で通話ができるとしています。確かに、周囲の騒音は抑えられるようで、風が強い中でも相手に風切り音はあまり伝わらないようです。ただ、話し始めに雑音が入り、やや音声はこもったようになる感じ。普通に通話する場合とどちらがいいかは微妙ですが、マスクをした状態でも通話品質は変わらない印象で、特に声を張る必要もありません。スマートフォンがマスクの外側に触れずに通話という意味で、現在の状況にも適しています。

もう一つ気になって試したのは音声入力です。 Windows 10(Windows Insider Preview版)のパソコンとペアリングしてGoogleドキュメントで音声入力を使ったところ、かなり精度よく認識されました。多少は小声でしゃべっても認識してくれるため、音声認識用のマイクとしても十分使えそうです。Windows 10ではANCを自動でオフにする機能が動作しなかったため、むしろより利便性が高い使い方ができました。Androidスマホで音声入力しようとすると自動的にANCオフになるので、個室で集中して音声入力したいときには不向きかもしれません。

  • 完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds Pro」

    Windows Insider Previewに搭載されている音声入力機能は日本語対応。Galaxy Buds Proを使った音声入力はなかなか正確で実用的でした

ほか、Dolby Atmosをベースにした360度オーディオにも対応していますが、サムスン製スマホの独自UI「One UI」がバージョン3.1以上でないと使えないようです。手元のGalaxy S20 5G(au版)にはOne UI 3.1が未提供だったので、今回はテストしていません。360度オーディオはAmazon Music HDが対応しているので、楽しい音楽体験が得られそうです。

複数のGalaxy端末にペアリングしている場合、ひとつのGalaxy端末から別のGalaxy端末にシームレスに接続を切り替える機能もあります。例えば、タブレットに接続して映画を観ているときスマホに着信があったら、Galaxy Buds Proの接続先が自動的にスマホへと切り替わって電話に出られる――という機能のようなのですが、こちらもOne UI 3.1からの対応とのことで、今回は試していません。

サウンド面に関しては、11mmのウーファー、6.5mmのツイーターを搭載し、AKGがチューニングしています。特筆すべき高音質とまでは言いませんが、低音から高音にかけてのバランスがよく、全体を通して伸びやかに音が広がります。高音がやや強めな気もするので、イコライザーで低音を強調すれば、映画などの臨場感も高まるでしょう。オーケストラやビッグバンドのような楽器が多い楽曲でも、楽器それぞれの音を分かりやすく聴けます。ロックからクラシックまで幅広い音楽をバランスよく再生してくれます。

イコライザーを「ダイナミック」にすると、最近の低音が強めなポップ系の音楽もインパクトが出ます。イコライザーは個別に調整することができないので、自分の好きなチューニングを見つけるといいでしょう。

防水性能も見逃せません。IPX7に対応しており、「最大30分間、最大で1mの淡水に沈める」というテスト条件としています。海やプールでの使用は非推奨ですが、少なくとも入浴やシャワーぐらいなら問題なさそうです。

充実した機能で利便性の高いワイヤレスイヤホン

Galaxy Wearableアプリには、開発中の機能を試せる「ラボ」もあり、ここにはゲームモードが用意されています。遅延を最小化して、ゲームのような画面とサウンドの同期が重要なアプリでユーザー体験を高めるものです。YouTubeなどで動画を視聴するぶんには、ゲームモードがオフでも特に遅延を感じずにリップシンクも問題ない印象でしたが、とりあえず常時オンでもよさそうです。

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    「ラボ」のゲームモード

また、Galaxy Wearableアプリは、複数端末でペアリングしている場合にも威力を発揮します。スマホにGalaxy Buds Proを接続している状態で、別のスマホやタブレットでGalaxy Wearableアプリを起動すると、後からアプリを起動した端末へと自動で接続が切り替わります。複数の端末でGalaxy Buds Proを使う場合、特に便利でしょう。

Galaxy Buds Proは、完全ワイヤレスイヤホンとしては高レベルのANC、マイク性能を備えており、アプリを含めて使い勝手のよい製品です。完全ワイヤレスイヤホンとしては高価な部類ですが、欠点らしい欠点もなく、音質面でも使いやすさの面でも十分以上の性能を備えています。