デル・テクノロジーズは3月24日、中堅企業におけるIT投資規模およびデジタル トランスフォーメーション (DX)の投資動向、顕在化している課題に関する調査「IT投資動向調査2021」の分析結果を公表するとともに、これに向けた支援策を発表した。
「IT投資動向調査」は同社が毎年行っているもので、今回で5回目となる。今回の調査は2021年2月1日~2021年3月5日に、従業員数100~1000人の国内中堅企業1,500社に対して、全83項目をアンケートにより調査した。
今回は在宅・テレワークの経験、意識の変化、オフィスの床数見直しの計画、コロナ禍での取り組み、社内ルールや評価制度の変化、社内改革が定着した/しない原因、問題解決への工夫など、ニューノーマル時代に向けた動向と課題(17問)を新たな調査項目に追加した。
「IT投資動向調査2021」のハイライト
調査の結果、日本の中堅企業は、「事業変革」、「営業変革」、「働き方改革」の3つの分野でDXに対する取り組みを加速していることが判明したという。
さらに、これら3つのDXへの取り組みと、業績回復との相関関係を分析したところ、「事業変革」に取り組んだ企業の業績回復傾向が51.7%となり、未実施企業の17.1%に比べ、34.6%の差となっていたことが明らかになったという。
デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏はこの点について、「業績回復には全社横断的な取り組みがいかに重要かが明らかになった」と語った。
なお、営業変革の業績回復が未実施企業のほうが高い要因については、トライ&エラーで行っており、結果が出るまでに時間がかかっているためとした。
また今回の調査では、昨年の 「IT投資動向調査2020」では圏外だった「経営判断に必要な情報やデータの可視化」を検討 ・計画する企業が21.7%を占め、急浮上したという。
デル・テクノロジーズ 広域営業統括本部 フィールドセールス本部 西日本営業部長 木村 佳博氏はこの点について、「アナログとデジタルが混在しているデータが分散された状態からデジタルデータで標準化し集約することが、DX実施に向けた現状分析のスタートラインであることが認識された」と説明した。
そのほか、今回の調査では、75.4%の中堅企業が、経営層よりコスト削減を求められていることが分かったという。平均12.3%のコスト削減を求められており、具体的な方法として、従来の業務時間の短縮が60.3%、業務量の削減が49.2%が上位を占めたという。
ただ、対策により見込まれるコスト削減効果が平均8.2%に留まっており、さらなる取り組みの推進が求められているという。
新たな支援策
同社は今回の調査結果から、「着手すべき事業変革領域が判断できない(何から手を付けていいのかわからない」、「経営判断に必要な情報がデータ化されておらず、事業変革を始められない」、「低コストに事業変革の検討をスタートできない」の3つがDXでの大きな障壁になっていることがわかったという。
そこで同社では、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)、dTosh 、DN Technology & Innovation、中小企業診断士とDXコンサルティングエコシステムを構築し、無料オンラインDX相談会、事業計画書支援、無料DXアセスメント、定額制DXコンサルティングサービス、事業再構築補助金 無料相談窓口の開設などの支援策を提供する。
「中堅企業向け無料オンラインDX 相談会」は、「着手すべき事業変革領域が判断できない」に対する支援策で、4月から開始する。
「経営判断に必要な情報がデータ化されておらず、事業変革を始められない」に対しては、無料DXアセスメントや定額制DXコンサルティングサービスをエコシステムのパートナーから提供する。
そして、「低コストに事業変革の検討をスタートできない」の課題に対しては、中小企業庁が発表し3月から公募のアナウンスがされている 「事業再構築補助金」の支援窓口の開設する。
これは、新分野展開、業態転換、事業 ・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中堅・中小企業を支援する補助金制度で、デル・テクノロジーズでは中小企業診断士と協同で、3つのプログラムとなる 「メール相談窓口」、 「オンライン個別相談会」、 「オンライン事業計画書アドバイス」を無償で提供する経営相談所を開設するという。
ワークスタイル変革における4つの「障壁」と支援策
今回の調査では、コロナ禍でテレワーク・在宅勤務を実施した企業は69.0%に上り、2020年6月調査(63.9%)と比較すると5.1%増加したという。一方で、約3割はオフィスでの業務を継続しており、テレワーク・在宅勤務への対応だけでなく、オフィスでの働き方のトレンドが変化しており、中堅企業は利用ユーザーに合わせたオフィス環境の最適化とコスト削減も同時に検討しているという。
同社によれば、ワークスタイル変革が進められる中、これには「ワークスタイルが変化への対応が進まない」「ネットワーク環境の事業継続のボトルネックになる」「インフラ基盤の急激なクラウド化への対応が難しい」「旧OS のデバイスが塩漬けになりつつある」という4つの課題があるという。
「ワークスタイルが変化への対応が進まない」に対しては、「ワークスタイルリデザイン支援パッケージ」を提供する。このパッケージでは、Microsoft TeamsとOne Drive for Businessを利用できるMicrosoftリモートスタータープランを組み込んだモバイルPCと省スペースデスクトップのパッケージとなっている。
また、リモートの従業員のための電子署名システムのフロー連携などを支援するため、Boomiによるデータ統合を行う「Boomi 特別プラン」を提供する。
ネットワーク環境のボトルネックに対しては、「Dell EMC SD-WAN Edge powered by VMware」による広域ネットワーク (WAN)の仮想化パッケージを提供しており、これによりWANの帯域制御にてボトルネックとなったパフォーマンスを改善するという。
インフラのクラウド化への対応は、カゴヤ・ジャパンと協同で提供するオンプレミス型クラウドパッケージである「KAGOYA FLEX HCIサービス」を提供開始する。
そして、旧OSのデバイス対策に向けては、「中堅企業Windows 10駆け込み寺」と題して特別セミナーを4月より開講するほか、「PCマルチベンダーサポートプログラム」の無償支援を2025年3月31日まで延長するという。
瀧谷氏は「われわれは今回の調査結果を受け、ビジネスモデルの変革を含めデジタル変革を進め、新たな顧客体験、事業価値を高めるための変革を止めずに加速してもらうための支援を続けていきたい」と語った。