ソニーは3月23日、独自の立体音響技術「360 Reality Audio」の国内本格導入を発表。大滝詠一や森高千里、Little Glee Monsterなどの邦楽アーティストの楽曲を含む、4,000曲以上の360 Reality Audio対応コンテンツのストリーミング配信を今後スタートする。また、360 Reality Audioの再生可能機器を拡充し、スマートフォンやウォークマン、ヘッドホンなどで臨場感ある立体的な音場を楽しめるようにする。
360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ、以下360RA)は、オブジェクトベースの空間音響技術で実現される音楽体験。コンテンツの制作時に、ボーカル、コーラス、楽器などの音源に位置情報を付け、360度に広がる(仮想の)全球に音源を配置して動かすことで、臨場感のある音場を再現。対応製品で再生することで「音に包まれ、アーティストが目の前にいるかのような体験が楽しめる」という。
既に360RA楽曲を配信を開始している「Amazon Music HD」に加え、4月16日からは新たに「Deezer」(ディーザー)、「nugs.net」(ナグズネット)といったストリーミングサービスから、4,000曲以上の360RA対応コンテンツのストリーミング配信を開始する。
邦楽を含めた360RA楽曲の配信を強化し、ポニーキャニオンやワーナーミュージック、ソニー・ミュージックレーベルズなどの国内レーベルと連携して、邦楽コンテンツでの360 Reality Audio対応を開始する。一例として、大滝詠一「A LONG VACATION」や鬼頭明里「Colorful Closet」といった作品のほか、私立恵比寿中学やDoul、Little Glee Monster、森高千里などの人気邦楽アーティストの楽曲が配信される。ただし、nugs.netは洋楽配信のみとなる。
360RAコンテンツの再生対応機器のラインナップも拡充。既報の通り、360RA対応のソニー製ワイヤレススピーカー「SRS-RA5000」、「SRS-RA3000」を4月16日に発売するほか、新たにストリーミングウォークマン「NW-A100シリーズ」、「NW-ZX500シリーズ」が360RAの再生をサポートした。
既にiOS/Android向けの360 Reality Audio試聴専用「Artist Connection」アプリが無償提供されており、手持ちのiPhoneやXperiaといったスマートフォンとイヤホン・ヘッドホンを組み合わせて360RAのサウンドを体験できるが、ソニー製の360RA認定ヘッドホンを組み合わせると、個々の耳の形やヘッドホンの特性に最適化(個人最適化)した状態で「(360RAの)体験をアップグレードできる」としている。
具体的には、ソニーの「Headphones Connect」アプリを活用。同アプリに対応するヘッドホン/イヤホンと連携した状態で、ユーザーの耳の形状をスマホのカメラで撮影・測定し、耳の形状と使用するヘッドホン/イヤホンの特性にあわせて音を最適化するという流れだ。ちなみに、上記のストリーミングウォークマンはカメラを備えていないので、手持ちのスマホで撮った耳のデータをソニーが提供するクラウドサーバーにアップロードしたうえで、ウォークマンに連携するかたちとなる。
360RAの個人最適化ができるソニーの認定ヘッドホンは、ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」や、ネックバンドタイプのワイヤレスイヤホン「WI-1000XM2」、完全ワイヤレスイヤホン「WI-1000XM2」など計33機種で、詳細は同社サポートページで公開している。また、ソニー以外にも、ラディウスが360 Reality Audio認定ヘッドホンを2021年秋に発表することを明らかにしている。
なお、Artist Connectionアプリでは「CES 2021」に合わせて公開された、ザラ・ラーソンによる『Talk About Love』のライブパフォーマンスが用意され、映像のカメラの動きに合わせてボーカルや楽器奏者との音の遠近がダイナミックに変化し、ライブステージに上がって360度方向から音が鳴っているような感覚が楽しめる。
クリエイター向けに制作環境を整備し、技術ライセンスの提供も拡大。ソニーは既報の通り、音楽ソフトウェア開発会社のVirtual Sonicsと共同で、さまざまなDAWソフトのプラグインとして使用できる対応楽曲制作ツール「360 Reality Audio Creative Suite」を開発。Virtual Sonics子会社のAudio Futuresから4月にダウンロード発売を予定している。