PCゲーム『League of Legends(LoL)』にハマったのがきっかけで、約3年前からゲーム実況動画の配信をスタートし、今では、俳優、タレントという肩書に加えて、人気配信者としても知られるようになったケイン・コスギさん。2020年5月から始めた動画配信プラットフォーム「ミルダム」でのゲーム実況にも多くのファンが集まり、盛り上がりを見せている。
今回はそんなケインさんに、配信をスタートしてからの約3年間を振り返ってもらいつつ、eスポーツやゲーム配信の魅力、そして、配信者としての目標についてお話を伺った。
テレビの仕事にも影響を与えたゲーム動画配信
ケイン・コスギさんというと、アクションものや刑事ものの映画、ドラマで活躍する姿をはじめ、「筋肉番付」や「SASUKE」といったスポーツ・バラエティで超人的な運動能力を披露する姿が印象的だ。「ちょっぴりシャイで、笑顔が爽やかなスポーツマン」というイメージのケインさんが、軽妙なトークとともにPCゲームをプレイし、ゲームの合間に腕立て伏せや腹筋をして見せて、ネット民を沸かせているというのは、正直意外だった。
「スポーツやアウトドアが好きそうと言われるんですけど、本当は子どものころからゲームが大好きで、休みの日は全然家から出ないんですよね(笑)。数年前に家族とマレーシアのリゾート地へ旅行したときも、海に入らずにゲームばっかりしてました」
そう笑顔で語るケインさん。インドアエピソードもケインさんの口から聞くと、爽やかに響くから不思議である。
ゲーム配信をはじめたのは、自分のプレイにアドバイスをもらって早く腕前を上げたい、オンラインの友達を増やしたいという思いからだった。当初は配信のたびにかなり緊張していたという。
「もともとシャイというか、あまり喋らないタイプだったんですが、配信中は見てくれている人を楽しませるためにいろいろ話さないといけないと思って。だから、1〜2日前からトークのネタノートに書いて準備したり、1回の配信でアメリカンジョークを必ず1~2回言うルールを作ったりしました。あと、途中でトイレに行くと失礼だから、朝から水分を控えてトイレに行かないようにしたり(笑)」
ゲーム動画配信にもストイックに取り組んだケインさん。配信を続けていくうちに成長していったのは、ゲームの腕前だけではなかった。
「リスナーの皆さんがすごく優しいので、今では仲の良い友達と話している感覚というか、ほとんど素の状態で配信できるようになりました。そうすると、テレビのお仕事もバラエティ路線のものが増えて、新しいジャンルにも挑戦できるようになったんです。それまではスポーツ番組に出たり、俳優としてシリアスな役柄を演じたりすることが多かったので、素の自分を出せるようになったのは配信のおかげですね」
たしかに、ゲーム配信中のケインさんはものすごく生き生きしている。個人的には、テレビ東京系列のeスポーツバラエティ「有吉ぃぃeeeee!」のYouTube出張版「卓志ぃぃeeeee!」で、お笑いコンビ「アンガールズ」の田中さんとLoLをプレイする動画がイチオシだ。初心者の田中さんにプレイ方法を教えながら、優しく励ましたり、ナイスプレイを称えたりする姿を見ていると、誰しもがケインさんにゲームを教えてもらいたくなってしまうはず。少なくとも筆者はそう感じた。
ゲーム動画配信の醍醐味は、世界中のゲーム好きと友達になれること
ゲームを通じて世界中の人とリアルタイムでコミュニケーションがとれる。これがゲーム配信の一番の魅力だとケインさんは語る。
「リアルタイムで会話をしながら一緒にゲームをすると、子どものころに友達と遊んでいたような空気に浸れて、ホッとするんですよね。仕事から帰ってきたときに、本当の自分に戻ってリラックスできる感覚というか……。一度、十数年ぶりに再会した高校時代の友人と、『同じゲームにハマってるんだ!』と盛り上がって、その後オンラインで一緒にプレイしたことがありました。学生時代と変わらずに遊べたのも、ゲームのおかげだったと思います」
一緒にゲームをプレイして盛り上がることで、一体感が生まれて仲良くなる――。そんな子ども時代の思い出がよみがえる。しかも、ゲーム動画配信なら国境を超えて気の合う仲間と出会うことができるのだ。
2020年には、そんなゲーム動画配信の魅力を改めて実感する出来事があった。
「2020年10月に仕事で海外に行ったのですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、入国後14日間はホテルで自己隔離をすることになったんです。普段からインドア派なので、2週間くらい平気だと思ってましたが、朝起きて2〜3時間トレーニングをしてごはんを食べると、そこからやることが本当になくなってしまいました(笑)。お昼に2〜3時間お風呂に入ったりしていましたが、辛かったですね。そこで、自分を救ってくれたのが配信です。毎日の配信でリスナーのみなさんと会話するのが唯一の楽しみで、心の支えでした。『ゲーム配信』というものが、自分の中でなくてはならないものだと改めて実感しましたね」
新型コロナウイルスの感染症拡大によって増えた自宅での時間を、ゲームに使った人も多いだろう。もしかすると、ケインさんも以前よりさらにゲームをする時間が増えたのではないかと思って伺ってみると――。
「もともと時間さえあればゲームをやっていたので、そこはあまり変わらなかったかも……(笑)」
配信をハッピーな場にして、リスナーを楽しませたい
ゲーム配信が生活の一部となっているケインさんに、「ゲーム動画配信の心得」について聞いてみた。
「一番に心がけているのが、リスナーの皆さんにハッピーな気持ちになってもらいたい、ということですね。そのために、ゲームに負けても勝っても腕立て伏せや腹筋をしたり、ミスしたときに始球式で派手に失敗した動画を流したり、ちょっとでも楽しんでもらえるように工夫をしています。あと、自分が視聴者のときに、配信者さんから返事をもらえるとうれしいので、チャットでコメントをくれた人にはきちんと返事をする、ということも心がけています」
そういったケインさんの心遣いもあってか、配信の場にはいつも温かい空気が流れているという。
「これまでの配信では、きついコメントをもらうこともありましたが、ミルダムさんの配信ではそういうことは一切ありません。初参加のリスナーさんが『はじめまして』ってコメントしたら、ほかのリスナーさんが『ようこそ〜』って話しかけたりして。僕の配信中に一緒にプレイしたのをきっかけに、リスナーさん同士が仲良くなって、みんなで仲良く遊んでいることもあるみたいです。その話を聞いたときは、配信者としてすごくうれしかったですね」
自身の配信を通じてリスナー同士が仲良くなり、ゲームファンのコミュニティが広がっていくことが一番の喜びなのだと、ケインさんは顔をほころばせる。ゲーム配信がそんな優しい世界だとは知らなかった。
「リスナーさんに楽しんでもらうため、チャレンジ企画配信をすることもあります。一番大変だったのは、2021年のニューイヤーイベントでの13時間連続配信。2021年に引っ掛けて、『Apex Legends』で21キルするまで配信することにしたんですけど、思ったより時間がかかってしまって、最後の2〜3時間くらいはほとんど記憶がありませんでした(笑)。普段トレーニングで鍛えているのに、もうフラフラ……。競技ゲームのことをeスポーツとも呼びますが、必要な集中力や動体視力はフィジカルスポーツ以上かもしれません。最後は、一緒にプレイしていたリスナーさんが必死でサポートしてくれたおかげで、なんとか目標を達成することができました。あのときのみんなの優しい気持ちは忘れられないですね」
また、2020年で印象的だった企画が、“永遠のライバル”池谷直樹さんとのコラボレーションだった。因縁(?)のゲーム『筋肉番付』で16年ぶりの対決が実現。「筋肉番付」時代の裏話も飛び出すなど、配信は大いに盛り上がった。
「これはミルダムさんの企画があったからこそ実現した対決でした。池谷さんゲームとかやるんですか!? っていう驚きや、フィジカルで対決していた2人がゲームで真剣勝負するおもしろさがある、本当に楽しい配信でした。企画力の大事さを実感して、もっといろんな人とコラボレーションしてみたいと思うようにもなりました」
この配信、2人の掛け合いが本当に楽しいので、ゲームに興味がない人にも全力でレコメンドしたい。モンスターボックス13段で失敗するケイン・コスギさんと池谷直樹さんを見られるのは、多分この動画だけ!
夢はいつか娘と一緒にゲームをプレイすること
自分にとってのゲーム配信の大切さを改めて実感したり、企画配信に挑戦したりと、配信者として充実した時間を過ごしているケインさん。これからどんな活躍を見せてくれるのか、今後の目標やチャレンジしたいことについて聞いてみた。
「まずゲーマーとしては、いろいろなゲームに挑戦してみたいし、ランクも上げたいし、目標はたくさんあります。最近、FPS『Apex Legends』にハマっているので、ApexとLoLでプラチナランクを目指したいですね。配信者としての目標は、ゲーム動画配信を通じて知り合った人たちと会うこと。一緒にプレイした配信者さんや、いつも見てくれているリスナーさんたちにも会ってみたいと思っています。2020年はコロナの影響でオフラインイベントが開催できませんでしたが、2021年は何かイベントを主催して、みんなでゲームを楽しめたらうれしいですね」
さらにもうひとつ、ケインさんには大きな夢があるのだという。
「今、娘が1歳半なんですけど、いつか一緒にゲームができたらと思って、実はすでに娘用のPCとキーボードとゲーミングチェアを用意しているんです。僕の大好きなLoLを一緒にプレイして、娘にサポート役をしてもらえたら、生涯の夢が叶ったと言っていいですね」
娘さんもゲーム好きに育ってくれたら、ケインさんとの親子ゲーム配信が見られるかもしれない。ケインさんと娘さんの親子プレイ、絶対にかわいい予感しかしないのだが……? にわかもにわかであるが、今回の取材ですっかり「ゲーム配信者ケイン・コスギ」のファンとなってしまった筆者にも、「その配信を観る」という大きな夢ができた。