アジリティ(Agility)ーー俊敏性を指す言葉だが、IT分野ではそのままカタカナで使われていることも多い。ITではシステムが変化に瞬時に対応できるという文脈で使われるが、変化の激しい現代、心理面でのアジリティのスキルを開発することが重要だという。英国のファッションやキャリアの情報サイトStylistが、「Mental agility: why developing this skill could make a big difference in your career」という記事を掲載している。

キャリアで成功するために必要なことと聞かれたら、「コミュ力」「チームワーク」などが挙がるだろう。だが記事はこれら「中核となるスキル」に加え、ニューノーマルの世界では「メンタルアジリティ」が重要になるという。

では「メンタルアジリティ」とは何か?組織心理学者、Gemma Leigh Roberts氏によると、「何か物事が起こった時に柔軟な方法で対応し、異なるアイディアの間を迅速に動くことができる能力」だという。そのようなスキルがあれば、予期できない事態に変化を受け入れ、最善の方法を見出して先に進むことができるというのだ。

例えば新型コロナーーおそらく誰にとっても不測の事態だったが、迷ったり、戸惑ったりする時間が長すぎると適応に遅れてしまう。事前に予定されたプロセスでは無いものが入り込んでくるとマニュアルでの対応ができなくなる。いわば答えの無い世界だが、ここで圧倒されてしまうと柔軟な対応や適切な対応から遠ざかる可能性がある。

だが、メンタルアジリティとは、全てに答えがあるという状況を作るということではない。「自分が進みたい方向に向かって新しい方法を見出すことができるという自信」とRoberts氏はコメントしている。問題解決能力と異なる点も留意している。問題解決能力は文字通り、問題を解決することだが、問題が常に出てくる状況そのものを乗り切ることがメンタルアジリティだという。ではメンタルアジリティはどうやって獲得できるのだろう?記事では次の4ステップを伝授している。

1.できるだけ多くのアプローチを書き出す
まずは"問題解決のための土台"が必要。Roberts氏はまず、既存の枠にとらわれずに考えてみることを推奨している。紙とペンを用意して、できるだけたくさんのアプローチを書き出してみよう。時間は30分。これにより、問題解決の能力が養われ、選択肢をより明確に捉えられるようになるという。

2.メンタルのエネルギーを守る
車は燃料なしには走らない。人間も同じで、メンタルのエネルギーをしっかりチャージしよう。Roberts氏は、毎朝体を動かし、ランチタイムに短く昼寝をとること、夜はしっかりリラックして読書したりTVや映画を観ることを薦めている。

3.過去を振り返る
これまで難しい局面で自分がどのように対応したのかを振り返ることも重要だという。うまくやれたこと、何を改善できるのか? 自分の反応で、チャンスがあるならやり直したいと思うものはあるだろうか?これについても、紙に書き出しておくことを推奨している。

4.見直して調整する
メンタルアジリティは一晩で劇的に変わるものではない。長期的にスキルを開発するためには、週単位で課題に対してどのように対応したのかを振り返るといい、とRobert氏。うまくできたと思うこと、うまくできなかったこと、将来どうしたいかを書いてみよう。

4つのステップにおいて紙とペンを使うことで、視覚化でき、マインドアジリティに対する意識が高くなるそうだ。

視覚以外にも他の刺激をともに用いるほうが学びは効果的であるということはよく言われていることだ。紙のノートとペンを使ってアナログに自身のメモリーセットとして活用している方も多いし、GTD(Getting Things Done)やライフハック好きの筆者もページを拡張できるタフさが醍醐味であるモレスキンノートを思い余って(ガイドブックを参考に)、ナイフでひたすらくり抜いてスマートフォンケースにしていた時期もある。スケジュールを中心としたデジタルとは別のツールとしての役割を与えられる。特にテレワーク時などは、デジタルに固定化されやすい。意識的に別のツールを活用するのがよさそうだ。

しかし高価な紙やノートをそのままラフや練習に使うのは気が引ける。マインドマップソフトでまずは慣れることが良さそうだ。クラウドで利用するものからOSSのソフト、高機能な有償ソフトまで多くの種類が存在する。中心に題名を据えて、上下左右に自在に思考をメモで伸ばしていく。答えの無いテーマがいつのまにか樹形図で広がりひとつの情報マップへと変わっていくから不思議なものだ。デジタルのマインドマップソフトで練習し、うまくできたものを大切なアナログノートに残してストックしていく。そんな使い方も良いのではないだろうか。

  • OSSのマインドマッピングツールFreeMind

    OSSのマインドマッピングツールFreeMind