少し前まで、オーブントースターといえば電熱ヒーターで食材を加熱するだけの単純な調理家電でした。しかし、近年の高級食パンブームとともに「より美味しく焼ける」高機能トースターが注目されています。

2月1日発売のパナソニックのオーブントースター「ビストロ NT-D700」も、そんな高機能プレミアムオーブントースターです。価格はオープンですが、実勢推定市場価格は25,000円前後(税別)と、トースターとしてはなかなか強気な価格帯。NT-D700は普通のトースターとどこが違うのか、じっくり試してみました。

  • シンプルでスタイリッシュなデザインになったパナソニックの高機能オーブントースター「ビストロ NT-D700」

高機能トースターの多くは「食パンを美味しく焼くための特別な機能」を搭載しています。たとえば、高級トースターの先駆けとなった「BALMUDA The Toaster」は水蒸気を使ってもっちりサクサクの食感を再現していますし、三菱電機の「ブレッドオーブン」は密閉庫内でパンの水分を逃がしません。同じように、パナソニックのビストロ NT-D700は一般的な遠赤外線ヒーター×2本のほか、「近赤外線ヒーター」×1本を搭載しているのが特徴的です。しかも、7,200通りものトーストプログラムによって、食パンにあわせて3本のヒーターを最適にコントロールします。

  • 本体サイズは幅34.1×奥行き32.8×高さ26.9cm、重さは約4.3kg。庫内サイズは幅26.0×奥行き25.0×高さ9.5cm。一般的な2枚焼きトースターより奥行きがかなり広いデザイン。ピザなど大きめの食材も焼けます

  • 庫内天井部の写真。黄色っぽい遠赤外線ヒーターのほか、透明な管の近赤外線ヒーターがあります。遠赤外線ヒーターが表面をサクッと香ばしく焼き、近赤外線ヒーターは食材の中まで熱々に仕上げます

  • 近赤外線ヒーター運転時は管が明るく光るため、庫内に入れた食材の状態がよく見えます。近赤外線ヒーター運転のタイミングは選択するメニューによって変わります

こうした機能のほか、ビストロ NT-D700を試用して便利に感じたのが、加熱方法や加熱時間を自動的にコントロールする「自動メニュー」の優秀さ。一般的なトースターは加熱温度を低・中・高などから選択し、加熱時間を自分で選ぶ製品がほとんど。

一方でビストロ NT-D700は、「うすぎりトースト」「フランスパン」「フライあたため」など、加熱したい食材と焼き色の濃さ(5段階)を選択すれば、トースターが火力と加熱時間を自動的に設定してくれます。トーストは加熱時間をちょっと間違えると黒焦げになることがありますが、ビストロ NT-D700なら忙しい朝でもそんな失敗がまずないのです。

【動画】ダイヤルで食材と焼き色を選択して「スタート」ボタンで加熱開始。自動メニューはパンだけでも、うすぎりトースト・あつぎりトースト・アレンジトースト・冷凍うすぎりトースト・冷凍あつぎりトースト・そうざいパン・フランスパン・クロワッサン・冷凍クロワッサンの9種類。そのほか、チルドピザ・冷凍ピザ・フライ温め・パックもち・焼きいも・じっくり焼きいもという6種類の自動メニューが。温度と加熱時間を選べる手動メニューもあります
(音声が流れます。ご注意ください)

食パンをトーストした実力は?

まずは、一般的な6枚切り食パンを「うすぎりトースト」メニューで。ここでチェックしたいのは焼き色のムラ。トースターは電熱ヒーターで食パンを焼く構造上、ヒーターの下部分だけ強く焼ける製品も多いのですが、ビストロ NT-D700は2枚とも全体的にムラなくキレイに焼けています。

  • 6枚切り食パンを2枚、「うすぎりトースト」の焼き色「3(標準)」でトーストします

  • 写真上は食パンの表、写真下は裏の焼き上がり。2枚とも、驚くほどムラのない焼き上がり。トースターによっては、左右両端や裏側の焼きが甘い製品も多いのですが、ビストロ NT-D700は裏までしっかり焼けているのが◎

試食してみると、表面はサクサクとしており、中はもっちりと水分が残っているのがわかります。トースト調理の実力はなかなかのもの。

  • 付属の焼き網を使った「アレンジトースト」メニューなど、パンだけでもさまざまなバリエーションの自動調理メニューを搭載しています

高級パンブームならではの悩みを専用メニューで解決

この数年は高級食パンブームとともに、パン本来の味が楽しめる「厚切り」食パンが人気ですが、厚切り食パンは冷凍保存するとトーストが難しいという難点がありました。冷凍した厚切りパンを中心まで温まるように加熱すると外側が焦げ、焼き色を重視するとパン中心が冷たいままになりがち。

そこでビストロ NT-D700は、冷凍食パン用の自動メニュー「冷凍うすぎりトースト」「冷凍あつぎりトースト」を用意しました。これら冷凍食パン用メニューでは、加熱の前段階に焦げない温度でパンの中心を解凍する工程があり、「焦げずに中心までアツアツ」に調理できます。

  • 「あつぎりトースト」メニューを使って、冷凍した4枚切り食パンを加熱したところ。中心温度は約63℃。冷凍していないパンを「あつぎりトースト」メニューで焼くと90℃以上あったため、かなり温度差があります。実際に食べてみると、冷凍した食パンをトーストしたものは中心部だけぬるく、違和感がありました

  • 冷凍4枚切り食パンを「冷凍あつぎりトースト」で加熱。「焼き色:3」だと焼きが強すぎたので、「焼き色:2」で加熱したものです。中心温度は87℃で、中身アツアツで美味しい!

背の高いフランスパンも焦げずにしっかり加熱!

新しく追加された「フランスパン」メニューにも驚き。フランスパンは食パンよりも背が高いものが多く、一般的なトースターだと上部が焦げてしまうことがありました。ビストロ NT-D700は頻繁にヒーターをオンオフすることで、パリッとした皮と、中心までしっかり温め、そして皮を焦がさないという3つのポイントをおさえています。

  • フランスパンを庫内に入れたところ。ヒーターがかなりパンに近い位置にあり「焦げないかな?」と心配になります

  • 「フランスパン」メニューで焼き上げたフランスパン。一見するとリベイクしたとは思えないくらい、焼き色に変わりはありません。焼く前はふにゃっとしていた皮が、調理後はパリパリになっていました

驚きの美味しさになった「じっくり焼きいも」は超おすすめ

ビストロ NT-D700を購入したら、絶対に試してほしいのが焼きいも調理です。ビストロ NT-D700には普通の「焼きいも」メニューもあるのですが、「じっくり焼きいも」メニューも用意されています。トースターに焼きいも用のメニューが2種類あるというだけで、力の入れ方がわかりますね。

最初は「加熱方法を変更しただけで、本当に味が変わるんだろうか?」と半信半疑でしたが、両者の違いは一目瞭然。「じっくり焼きいも」で調理すると、甘みが飛び抜けて強くなります。とても同じサツマイモを調理したとは思えないほどの違いでした。

  • サツマイモは洗ったあとに、皮が破れないように表面にフォークで穴をあけて調理するだけ

  • 写真右側は「焼きいも」メニュー、左側は「じっくり焼きいも」メニューで焼いたサツマイモ。小さく丸いのはねっとり系サツマイモの代表格「安納芋」。細長いのはホクホク系サツマイモの「鳴門金時」

  • 左が「じっくり焼きいも」メニュー、右が「焼きいも」メニューで焼いた鳴門金時。前者のほうが甘みが強く焼けました。色が濃いのもわかるでしょうか。また、ホクホクしながらも水分量が少し多めでしっとり感があり、皮の部分が焦げて心地よい香ばしさも感じられて、多層的に深みのある味です。焼きいもメニューで焼いたサツマイモは甘みが少なく、よくも悪くも味も淡泊で「芋」という印象

  • 左が「じっくり焼きいも」メニュー、右が「焼きいも」メニューで焼いた安納芋。前者はビックリするほど強い蜜のような甘みがあり、ねっとり感も強く、濃いクリームのようなイメージ。焼きいもメニューのほうは、柔らかいけれど甘みや味が薄く感じます。食感が柔らかいぶん少々水っぽくも感じる味です

手動メニューならケーキ作りまでできる優れもの

自動メニューが優秀なビストロ NT-D700ですが、もちろん手動での加熱にも対応しています。手動モードは、120℃~260℃の温度調節と、30秒~25分までの時間指定が可能です。

  • 160℃焼き時間45分で、パウンドケーキを作ってみました

  • ヒーター位置が生地に近いためか、ケーキ上部は少々焼き色が強くなりましたが、しっかりと中心まで火が通り、中央まで膨らんでいるのがわかります。背の低い食材ならオーブンとしても優秀に使えそうです

毎日使うからこそ「失敗しない」安心感がうれしい

今まで我が家では、トースターを使用するときに「今日は6枚切り食パンが2枚だから4分くらい」「今日は冷凍保存した食パンだから30秒長めに加熱」など、経験と勘で焼き時間を決定していました。忙しい朝はなんとなくダイヤルを回してパンを焦がしてしまうことも……。

その点、ビストロ NT-D700は「メニューを選ぶ」「焼き色を5段階から選ぶ」の2アクションでベストな加熱をしてくれるので、調理の失敗がないという安心感があります。もちろん失敗しないだけではなく、トースト表面のパリッと感や内部のモチモチ感といった美味しさも、さすがプレミアムトースターと思わせるクオリティです。

  • 失敗しやすい焼きモチの調理も「パックもち」メニューで失敗ナシ! 我が家ではスーパーの揚げ物をサクサクに仕上げてくれる「フライ温め」メニューも大活躍しました

購入前に必ずチェックしておきたいのは、2枚焼きトースターとしては奥行きが長いこと(本体サイズは幅34.1×奥行き32.8×高さ26.9cm)。直径20cm強のピザが焼けるというメリットもあるのですが、置き場所に注意です。使っているトースターを買い替える場合は、事前に設置スペースのチェックを忘れないようにしましょう。