2021年1月23日、NTTドコモはeスポーツリーグの発表イベントを開催。2020年には『PUBG MOBILE』リーグの発足を発表し、参加チームの選定を行いましたが、今回は、NTTドコモが主催するeスポーツリーグのブランド名と、リーグで扱う追加タイトルを発表しました。

eスポーツリーグのブランド名は「X-MOMENT」。世界レベルの選手を日本から輩出すること、そして、eスポーツの熱狂と拡大を理念としています。過去最大クラスの賞金額と選手への給与保証の採用により、eスポーツ選手が職業として安定することを目指します。

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    発表会の様子

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    NTTドコモのeスポーツブランド「X-MOMENT」の発表と、ビジョンについて語ったNTTドコモ 常務執行役員スマートライフビジネス本部長の森 健一氏

X-MOMENTで使用されるタイトルとして、すでに発表済みの『PUBG MOBILE』に加え、『レインボーシックス シージ(R6S)』が発表されました。『PUBG MOBILE』のリーグ戦「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE(PMJL)」は2月13日に、『R6S』のリーグ戦「Rainbow Six Japan League 2021(RJL)」は3月13日に開幕戦が行われます。

2部リーグとオープン大会でチームの新陳代謝を促すPMJL

PMJLの説明では、MCに平岩康佑氏、ゲストにタレントの夏菜さん、ストリーマーのYamatoN氏が登壇、RJLの説明では、MCにOkayama氏、ゲストにお笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん、ストリーマーのけんき氏が登壇しました。

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    「PMJL」と『PUBG MOBILE』の解説をする平岩康佑キャスター(写真左)、夏菜さん(写真中央)、YamatoN氏(写真右)

PMJLは、年間2フェーズ制で行われます。フェーズ1が2月13日から5月1日、フェーズ2が7月から9月の開催予定です。試合数は、フェーズ1とフェーズ2を合わせて年間100試合。賞金総額は3億円で、各チームの所属選手全員への給与保証として年間350万円がNTTドコモより支給されます。協賛はサムスン電子ジャパン。フェーズ1の競技用端末には「Galaxy Note20 Ultra 5G SC-53A」を採用します。

フェーズ1の優勝チームは上期の世界大会への出場権、フェーズ1とフェーズ2の年間を通した総合優勝チームは下期の世界大会への出場権が与えられます。

『PUBG』は4人1組のチーム戦で、全16チームのバトルロイヤルを行います。すべてのチームがひとつの島に降り立ち、武器や装備、アイテムなどを現場で回収しつつ、ほかのチームすべてを相手にし、最後まで生き残った選手がいるチームが勝利です。

初年度PMJLに参加するチームは以下の16チーム。『PUBG MOBILE』の大会に初期から参加している老舗チームから、今回のPMJL発足に合わせ新規立ち上げをしたチームなどさまざまな顔ぶれです。

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    PMJLに参加する「AQUOS DetonattioN Violet」「AXIZ」「BC SWELL」「BLUE BEES」「CYCLOPS athlete gaming」「DeToNator」「Donus USG」「FOR7」「JUPITER」「Lag Gaming」「REJECT」「SCARZ」「Sengoku Gaming」「SunSister」「UNITE」「原宿 STREERT GAMERS」

また、二部リーグとして「PUBG MOBILE CHALLENGE LEAGUE(PMCL)」を2021年10月から11月に開催予定。全16チーム参加予定で、上位2チームは、PMJLへ昇格し、下位4チームは、誰でも参加できるオープン大会「PUBG MOBILE OPEN TOURNAMENT(PMOT)」上位4チームとの入れ替えが行われます。なお、初年度は、2021年5月から6月に開催されるPMOTの上位16チームがPMCLに出場します。

ちなみに、先日結婚を発表したゲストの夏菜さんは、旦那さんの勧めで『PUBG』をはじめたとのこと。今では夏菜さんの腕前が上がりすぎたため、旦那さんは辞めてしまったそうですが、親密になったきっかけがゲームであることから「PUBG婚ですね」と話していました。

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    「PUBG婚」だったと話す夏菜さん

新たに発表された『R6S』では、リーグとトーナメントを開催

RJLは、年間1シーズン制で2021年3月13日から9月18日に初年度のリーグを開催予定。年間56試合を行います。シーズン賞金総額は3,200万円。こちらのリーグでも、各チームの所属選手全員への給与保証として年間350万円がNTTドコモより支給されます。優勝チームには、秋に開催される世界大会「APAC North」の昇格戦出場権が与えられます。協賛はサードウェーブです。

『R6S』では、5人1チームが拠点を守る防衛側と拠点の開放を目指す攻撃側に分かれ、1チーム対1チームで戦います。使用できるキャラクター(オペレーター)は50種類以上。それぞれ使えるスキルが違うため、組み合わせによって戦いかたが大きく変わります。1試合は3分間。相手チームを全員倒すか、防衛側は時間切れになるまで防衛しきると勝利。攻撃側は拠点に囲われている人質を救出し、救出ポイントまで運べば勝利です。

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    『R6S』のゲーム内容と、RJLの大会概要を説明するOkayama氏(写真左)、河本さん(写真中央)、けんき氏(写真右)。『R6S』にどっぷりハマっている河本さんも、ゲームや試合観戦の魅力を熱弁します

RJLに参加するチームは以下のチーム。チームは過去の戦績によって選ばれました。現時点では出場する8チーム中7チームまで決まっており、最後の1チームは今後発表する予定です。

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    RJLに参加する「Crest Gaming Lst」「CYCLOPS athlete gaming」「EVA:e」「FAV gaming」「GUTS Gamig」「REJECT」「Sengoku Gaming」。もう1チームは今後発表される

また、『R6S』では、RJLのほかに2つのオープン大会を用意しています。1つは、RJLに参加している8チーム以外で行われる最大256チームのトーナメント戦「Rainbow Six Japan Open(RJO)」、もう1つはプロアマ問わず、すべてのチームが参加できる「Rainbow Six Japan Championship(RJC)」です。

RJOはトーナメント戦で、2021年4月から2021年5月と2021年6月から2021年8月の年2回開催。それぞれの大会上位2チームには、RJCのシード権とRJLの入れ替え戦の挑戦権が与えられます。賞金総額は500万円(各シーズン250万円)。

RJCは年1回のトーナメント戦で、2021年8月から10月に開催予定です。優勝チームはRJLの挑戦権を獲得できます。賞金総額は1,500万円。RJLリーグの終了後は、RJOとRJCの上位チームとRJLの下位チームの入れ替え戦が行われます。

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    『R6S』は3つの大会とリーグが用意されており、多くのチームがトップリーグへの昇格を目指せるようになっています

チーム間の選手移籍にも一定のルールが必要か

2020年に行われたNTTドコモのeスポーツ参入発表では、『リーグ・オブ・レジェンド ワイルドリフト(ワイルドリフト)』の大会も開催すると発表していましたが、新しい情報はありませんでした。元々『ワイルドリフト』はオープントーナメントの実施を予定しており、今回は年間を通じて開催されるリーグ戦の発表のため、『ワイルドリフト』の新情報がなかったとのことです。決して、『ワイルドリフト』が『R6S』に取って代わられたわけではありません。

発表全体を通して気になったのは、選手の移籍やチームの存続について。NTTドコモから支払われる選手への給与保証は、トップリーグのチームのみ。したがって、入れ替え戦により下部リーグに落ちた場合、選手の給料はチームが捻出するか、選手への年俸の支払いを辞めるかのどちらかになります。

また、選手の移籍に関しては、どちらのリーグでもチームに任せているのが現状で、ほぼ自由に行えます。そのため、トップリーグから下部リーグに落ちたチームの腕の立つ選手が、新たにトップリーグに上がったチームへ移籍するという確率が高くなりそうです。

そうなると、2部に落ちたチームは落ちた状態よりも弱い戦力で次のシーズンの返り咲きを目指さなくてはなりません。選手の移籍を止めるには、次のシーズンにトップリーグへ返り咲くまでの間、トップリーグにいたときと同じ給与を支払う必要が出てくるでしょう。

下部リーグからトップリーグにのし上がったチームも、元トップリーグの選手を移籍させた結果、チーム名は変わったのものの、メンバーが元トップリーグにいたチームと同じという状況もありえます。

入れ替え戦は、これからチームの発足を考えているオーナーや選手にとって、必要なシステムですが、リーグとチームがファンに認知されるまでは時期尚早な気がしないでもありません。また、移籍の自由度の高さは、チーム人気の安定とかけ離れてしまうので、ある程度の制限を設けたほうがいいのではないでしょうか。

とはいえ、これまでのeスポーツのイメージである賞金制トーナメントは、eスポーツの仕事としての安定性を確保できていなかったので、リーグ戦による年俸制の導入は喜ばしいこと。将来の目指す先としての「プロeスポーツ選手」の価値がより高まることはもちろん、興行としてもエンターテインメントとしても、より一層の広がりを期待できるのではないでしょうか。あとはコロナ禍が明けたところで、オフラインでの観戦ができることを楽しみにしたいところです。