みなさん月々の電気代はどれくらいかかっているでしょうか? 筆者は家電ライターということもあり、月によっては4万円を超えることも……。そんな光熱費貧乏の筆者が気になっているのが、株式会社エネファントがスタートした「フリエネ」というサービス。

  • 「フリエネ」サービスを導入した最初の物件は、木造二階建ての建売住宅。見た目もモダンでなかなかオシャレ。車2台分の広い駐車場も魅力的

フリエネを導入済みの建売一戸建て住宅を購入すると、20年間、管理費として月額2,980円を支払うことで、電気代が無料になるというのです。もちろんオール電化ハウスなので、光熱費すべてあわせて月額2,980円(※)。月額料金には電気設備のメンテナンス費用も含まれています。一般的な家庭の場合、電気+ガスの料金は約25,200円/月、オール電化なら約14,200円/月とされているので、定額の2,980円/月というのはインパクト大。

※:年間7,200kWhまでの使用条件あり。超過した場合には1kWh当たり25円の追加精算となります(一般的な4人家族の1カ月の平均電気使用量は500kWhといわれています)

今回、最初の物件となる岐阜県多治見市の住宅を見学してきました。どんな設備や家電が備え付けられているのかにも興味がわきます。

こぢんまりとしながらも、家族で過ごしやすそうな家

見学したのは、土地付きの木造2階建てタイプの建売一戸建て。敷地面積は33.17坪、延べ床面積は96.72平方メートル。

一階には17畳の広いLDKを配置し、2階にはウォーキングクローゼット付きの主寝室(7.3畳)と、10.5畳の広い洋室が用意されています。10.5畳の洋室には2つのクローゼットと2枚の扉があり、中央で区切れば子ども2人に個室を与えられます。家族構成の変化も考えられた間取りですね。

  • 思わず料理をしたくなる、明るく広い対面キッチン。マイナビニュース・デジタルの林編集長も料理のシミュレーション

  • キッチン設備やリビングの照明などは基本すべてパナソニック製

  • コンロは3口のIHクッキングヒーターで、もちろんオール電化。60L容量のビルトイン食洗機まであります

この住宅を建てたハウスメーカーは愛岐木材住建という地元の企業なのですが、愛岐木材住建はパナソニックリビング中部が協力会社となっています。キッチン設備やLEDライトなどの住宅設備は基本的にパナソニックグループの製品。

さらに「見学したイメージ通りの内装で生活してもらいたい」という考えから、住宅購入時は家具や家電などもそのまま引き渡されます。「モデルハウスで見たときは素敵な住空間だったのに、自分の家具を搬入したら生活感あふれる家になってしまった!」といった心配はなさそうです。

  • 子ども部屋になりそうな10.5畳の寝室。2つのクローゼットと扉があるので、2部屋に分けることも

  • 子ども部屋にある半個室空間が作れるデスクは、パナソニックの「KOMORU(コモル)

  • 7.3畳の主寝室

  • トイレがなんと、流すだけで泡と水流でトイレ掃除をする全自動おそうじトイレ「アラウーノS II」。家電ライター大興奮です

気になるお値段ですが、土地付きで家具や家電までそろって税込2,780万円! さらに20年間光熱費(実際は管理費)が定額2,980円/月なら、土地代が比較的安いとしてもかなりお買い得なのでは……と、思ったのですが、ここからまた驚くことになるのです。

  • 玄関の郵便受けの下にはパナソニック製の大きめ宅配ボックス。配達員が伝票に認め印を押せるタイプです

そもそもこのサービス、どうやって利益を出すの?

ところでこの「フリエネ」、どうやって月額2,980円で光熱費をまかなうのか疑問……。フリエネ対応住宅は、全戸に太陽光発電システムと家庭用の大容量蓄電池、消費電力が少ないヒートポンプ式給湯器エコキュートといった設備を導入しています。このため「電気を作る」「電気を貯める」「少ない電気で生活する」の3つが可能なのです。

サービス提供元であるエネファントは、これらの電気を管理し、太陽光発電で余剰電力が発生したら電気を売って収入を確保。逆に、天気が悪く太陽光発電だけでは電気が足りなくなった場合は、電力会社から電気を買って供給します。フリエネが設置する発電パネルの月間発電量は約900kWh前後、対して一般家庭の消費電力は400kWh前後といわれているので、毎月500kWh前後の売電が可能な計算になります。

  • 住宅に設置された太陽光発電で得た電力は、その住宅で消費されますが、余った電力は売られます。これがエネファントの収益に

フリエネ事業には、家を建ててくれるハウスメーカーが不可欠。そこでエネファントは地域の工務店とタッグを組み、地域工務店からの広告費でも収入を得ているそうです。

  • エネファント代表取締役 磯﨑顕三氏。「日本でもっとも電気代の安い街(多治見市)を目指して、暮らしをていねいに創っていきたいと考えています」

  • 愛岐木材住宅 代表取締役社長 大木規史氏。「電気代が無料の住宅と聞いて、夢のような話と思いましたが、一緒に取り組めるのは幸せです。やりましょうと即答しました」

250万円の太陽光発電、150万円の蓄電池!基本設備が豪華すぎる

フリエネの住宅には基本的に「太陽光発電パネル」「蓄電池」「エコキュート」が最初から用意されています。これらの設備はかなり高額。たとえば、見学した住宅の屋根には、業界トップクラスの発電量をもつというパナソニックの「HITP252 アルファプラス」太陽光発電パネルを設置。太陽光発電のシステムだけで標準価格は約250万円です。

  • 屋根の上には太陽光パネルがズラリと24枚

発電した電気を蓄える蓄電池は、蓄電容量が5.6kWhの「【住宅用】創蓄連携システム」を採用。昼間に発電した電気を蓄えられるほか、停電時には自動的に蓄電池から電気を供給できる安心感があります。この蓄電池システムは標準価格が150万円ほど。

最後に、ヒートポンプ式の電気給湯器エコキュートは460Lタイプ。こちらは標準価格が役45万円。つまり、これら基本システムだけで合計445万円分が、実質無料なのです。こういった設備は壊れた場合に修理代金が高くなりがちですが、フリエネは20年以内なら修理代・メンテナンス代まですべて月額2,980円のうちに含まれています。

  • お風呂場横の脱衣所にあった蓄電池本体

  • お風呂入り口上部にある分電盤の横には切り替え機も。停電時は自動的に、家の電力供給源を蓄電池に切り替えます

  • 外壁に設置されているのは蓄電池のパワーステーション。左側右にはヒートポンプ式の電気給湯器エコキュートがあります

光熱費が安いだけではなく災害にも強そう!

実際の住宅を見て感じたのは「光熱費が安いだけでなく災害にも強そう」ということ。太陽光発電システムと蓄電池で停電時も電気の供給は止まりませんし、エコキュートがあれば断水しても給湯器からホースで水を取り出せます。災害が多い日本では、かなり安心できる内容ではないでしょうか。

  • リビングにある操作パネルの多さは気になりました。左からモニター付きインターフォン、床暖房、蓄電池、エコキュートの操作パネル。慣れれば問題ないと思いますが、見た目もありますし、タッチパネル液晶でスマホアプリ風に一括管理できるシステムになっているとスッキリしそうです。将来的にはそうなるかもしれません

とても魅力的な内容のフリエネでしたが、事業展開しているエネファントは岐阜県多治見市の会社。フリエネは現在、岐阜県多治見市でのみ試験的に導入されています。戸建て住宅や注文住宅の選択肢として、いずれは全国展開されてほしいものです。

見学の当日は、多治見市役所で記者会見も行われました。エネファントを中心に、地元の企業、行政が一体となってフリエネの推進を描いています。2021年度中には10棟のフリエネ導入住宅を建設する予定です。

  • 左から、パナソニック ライフソリューションズ社 上田雄介氏、愛岐木材住宅 代表取締役 大木規史氏、エネファント 代表取締役 磯﨑顕三氏、岐阜県多治市 古川雅典市長、多治見市 市議会議員 議長 嶋内九一氏