マウスコンピューターが同社のゲーミングブランド「G-Tune」で展開中のフルタワー型ゲーミングPC、「G-Tune EP-Z」を試用する機会を得た。余裕のあるフルタワーの特大筐体に搭載されるパーツはCPU、GPUともに最新世代のもので、第10世代Intel CoreとNVIDIA RTX 30シリーズと、いずれもハイエンドクラスのものを組み合わせている。

さてハイエンドPC、コダワリ派は"自作"というイメージはまだあるが、入手性が良く保証がバッチリ、価格も納得できるレベルにあるメーカー製のBTO PCという選択肢も有力だ。自作PCの最大のメリットである自由なパーツ構成も、BTO PCであればカスタマイズで対応可能だ。本稿で試用するG-Tune EP-Zでは、CPUにCore i7-10700K(※)、GPUにGeForce RTX 3080という構成のカスタマイズモデルとなっている。最新ゲームタイトルを遊ぶ際、これが実際にどのくらいのパフォーマンスで動作するのか、試してみたい。

※なお現時点では、基本構成でCPUがIntel Core i9-10900Kに仕様変更されている

G-Tune EP-Zの基本情報

G-Tune EP-Zは標準でフルタワー型の大型筐体を採用している。大型筐体と言えば特徴としてまず拡張性をイメージするだろう。今季最新のハイエンドグラフィックスカードは、3スロット以上を専有する大型クーラー搭載モデルが多い。厚みだけでなく、カードの長さも30cmに迫る。それを余裕を持って搭載できるのは大型筐体のメリットだろう。

さらに大型筐体には冷却性能や静音性でのメリットもある。より多くの冷却ファンを搭載できるので、それを低回転で運用すればより静かにできるのは当然だ。それに内部空間が広いため、広い部屋を温めるのに時間がかかるのと同様、温度変化が緩やかだ。ハイエンドパーツは電力・発熱量も大きい。それらを適切な温度で運用することが重要となるが、その点で大型筐体は難易度が低く抑えられることになる。

  • ハイエンドパーツを搭載する上で拡張性はもちろん、冷却や静音性でもメリットのある大型筐体

CPUのIntel Core i7-10700Kは8コア16スレッドのCPUだ。ゲームにおいてはCPUよりGPU性能のほうが重要と考えられがちだが、実はCPUがボトルネックとなってGPU性能が引き出せずにフレームレートが伸び悩むとい失敗も多い。そのため、ゲームの要求スペックが高くなればなるほど、ゲーム目的でもCPU性能はおろそかにはできないのだ。

  • CPUZ

また、YouTubeやTwitchなどで、ゲームプレイと同時に配信・実況を行なうゲーマーも増えてきた。処理を分散できるCPUのマルチコア化は重要なファクターなのだ。昨今のゲームタイトルでは4コア8スレッド以上を推奨環境としているものが多く、それらに対してCore i7-10700Kの8コア16スレッドならかなり余裕がある。あるいはオフライン編集でも同様だ。エンコード処理をソフトウェアで行なおうとすればCPUはより重要となる。

  • CPUクーラー

さて、要のグラフィックスカードに搭載されるGPUは、今回はNVIDIA GeForce RTX 3080である。WQHD(2,560×1,440ドット)~4K(3,840×2,160ドット)解像度で最高画質設定を楽しむための製品と位置付けられている。現在リリースされているRTX 30シリーズ中では上から2番目で、最上位にはGeForce RTX 3090も存在するが、こちら4Kオーバーの用途を主眼に価格もパーツ単体で20万円を超えるような特別なGPUなので、通常環境のハイエンドはRTX 3080と言ってしまってよいだろう。

  • GPUZ

GPUのNVIDIA GeForce RTX 3080は基本スペックとして8,704基のCUDAコアを内蔵し、10GBのグラフィックスメモリを搭載している。CPUとは概念が少し異なるがコア数が多いほど高性能であることは同様だ。そしてGPUではプロセッサコアの世代がより重要になる。

とくにRTXシリーズではそれが顕著だ。GeForce RTXシリーズでは、CUDAコアとは別に、リアルタイムレイトレーシングの処理に特化したRTコアと呼ばれる計算機をGPUに内蔵している。レイトレーシングはゲーム世界をよりリアルに演出できる一方、その処理は非常に複雑だ。一世代前のRTX 20シリーズでもRTコアは搭載しているが、RTX 30シリーズではより性能を強化したRTコアへと世代交代している。リアルタイムレイトレーシングの設定をONにして動作させると、同じゲームタイトルでもRTX 30シリーズの方がRTX 20シリーズよりもかなり高いフレームレートで楽しめるようになった。

  • ビデオカード
    ※ビデオカードのメーカーは購入時期によって異なる可能性があります

実性能をベンチマークテストでチェック

それではまず、通常よく用いられるスタンダードなベンチマークテストのスコアから紹介していこう。お手元のPCとの比較や、ほかのレビュー記事との比較に活用してほしい。

一つ目はシステムパフォーマンスの指標となるPCMark 10。Overallは7170というスコアで、シナリオ別に見るとEssentialsが9996、Productivityが8664、Digital Content Creationが11550となった。このテストの目安として、Overallで7000を超える時点でかなりのハイエンドPCと言えるが、ホーム用途のEssentials、ビジネス用途のProductivityシナリオが高いのは当然、コンテンツ制作のDigital Content Creationも1万を超えるあたりはさまざまな用途に万能な高性能PCであることを示している。

  • PCMark 10のスコア

続いてド定番の3DMark。代表的なテストシナリオ三つを試すと、スコアはFire Strikeが29413、Time Spyが15564、Port Royalが11052だった。Fire StrikeとTime SpyはフルHDでのテストなので非常に高いスコアだ。WQHDや4Kを視野に入れるRTX 3080ではこの程度のテストでは性能が飽和状態とも言える。ただし、視点を変えれば、フルHDゲームでは60fpsを大きく超える非常に高いフレームレートで楽しめることを意味している。高フレームレートを必要とする競技性の高いゲーム、とくにeスポーツタイトルをプレイする場合でも非常に有効な性能だ。

  • 3DMarkのスコア

そしてゲームタイトル。まずはFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークを見てみたい。少し前まではFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークも非常に負荷が高いと言われていたタイトルであって、これで4K&高品質設定で快適判定を出すのはなかなか難しかった。しかし、本製品なら7507ポイントで「快適」判定。設定が標準品質であれば9011ポイントとなり、判定も「とても快適」となる。

  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークのスコア

20年秋冬タイトルで検証! 画質&フレームレートのベスト設定を探ってみた

ここからはさらに最新のゲーム、今年の秋冬タイトルを用いてフレームレートやスコアを見ていきたい。

まずはUbisoftの「ASSASSINS CREED VALHALLA」。人気のASSASSINS CREEDシリーズ最新作だ。

WQHDであれば「最高」画質設定で平均79fpsが得られており、低位1%が52fpsであるのでほとんど60fpsを下回ることなくプレイ可能だ。4Kに関してはやや重く、平均フレームレートならば「高」設定で超えたものの低位1%を見る限り「中」設定や「低」設定のほうがスムーズだ。

続いてUbisoftの「WATCH DOGS LEGION」。これもWATCH DOGSシリーズの最新作である。

WATCH DOGS LEGIONの負荷は先のASSASSINS CREED VALHALLAよりもやや軽い。G-Tune EP-Zのパフォーマンスがあれば4Kでの高画質プレイも十分に視野に入る。また、WATCH DOGS LEGIONはリアルタイムレイトレーシングとDLSSに対応しており、WQHDではこれを有効化しさらにリアルな映像を楽しめるだろう。4Kでは「超高」画質設定で平均68fps、低位1%が55fpsで、それ以下の設定であれば常時60fps超と言っても差し支えない。WQHDでは通常の画質プリセットの最大で平均83fps、低位1%67fpsと、常時60fps超を満たし、リアルタイムレイトレーシングとDLSSを有効化した状態でも画質を追求できている。リアルタイムレイトレーシングとDLSSは3段階用意されているが、もっとも負荷の高い「最大」&「品質」という設定でも低位1%が58fpsとなっていたので十分にプレイ可能だ。

最後は今冬の大注目タイトル、CD Projekt REDの「Cyberpunk 2077」。リリース前から既にかなりのハードウェア負荷を要求するタイトルになることが話題となっており、世に出たばかりのGeForce RTX 3080クラスであっても快適さと最高の画質を求めるならば解像度はWQHDあたりがターゲットとなる。とにかく非常にリッチなゲームだ。

WQHDでのテストでは、プリセット「レイトレーシング:ウルトラ」で73.3fpsが得られている。リアルタイムレイトレーシングOFFの「ウルトラ」でも79.32fpsだった。4Kでは「ウルトラ」で41.41fpsとなり画質を落としてフレームレートを稼ぐことになる。60fps以上を満たしたのは「中」設定で61.32fps、「低」設定で78.82fpsだった。

最新タイトルを味わいつくすためのベストなバランス

今回、G-Tune EP-Zのパフォーマンスを試してみたが、注目されている秋冬の最新ゲームタイトルを含めても、WQHDなら最高画質設定かつ60fps超の快適プレイが可能という結果だった。タイトルによっては、4Kでは少し画質設定の調節が必要となるといった具合だ。何よりも今回はCyberpunk 2077を快適にプレイできる設定が見つかったし、G-Tune EP-Zの性能はとてもバランスが良いと評価できる。今年の年末年始を楽しむゲーミングPCとして、オススメできるBTOパソコンだ。

ところで、自作PC用のパーツでは、ここのところ上位CPUの品薄に困らされることが増えたが、直近ではGPUも争奪戦が激しく、特にGeForce RTX 30シリーズは人気で入手しにくい状況が続いている。そこで自作PC派であっても、メーカー製BTO PCである「G-Tune EP-Z」であれば、注文時に納期を読みやすいというメリットには注目しておくべきだろう。

※なお、現時点では基本構成でCPUがIntel Core i9-10900Kに仕様変更されている。