「個人情報の“ダダ漏れ”は許さない」「ユーザーの個人情報でお金儲けをするのは許されない」と、プライバシー重視の取り組みを続けるアップル。2020年にリリースした新OSでは、カメラやマイクを利用するとオレンジや緑のインジケーターが画面に表示される仕組みや、位置情報を正確なものではなく大まかな情報にとどめる機能、アプリがクリップボードにアクセスすると通知が表示される機能を搭載するなど、いくつかの新機能を追加しました。
この冬、アップルが新たに追加するのが、App Storeで配信されるアプリがどのような個人情報を取得するか、どのような目的で情報を利用するかといったプライバシーの方針を分かりやすくまとめた「プライバシーラベル」の追加です。
食品の成分表記のように、アプリの気になる部分を分かりやすく表示
スマートフォン用アプリのなかには、最初の起動時に「利用規約」や「プライバシーポリシー」が表示されるものがあります。難しい内容の文章が小さな文字でズラズラと表示される、例のアレです。ほぼ100%の人が内容を読まずに下まで一気にスクロールして「同意する」にチェックを入れていると思いますが、実は利用規約にはアプリがどのように動作するかなどの大事な情報が記載されています。
悪意のあるアプリなら、利用規約の途中に小さい字で「写真やアドレス帳のデータ、位置情報などの個人情報をサーバーに送信し、自社サービスや広告などに利用します」などと書いておき、ユーザーから「勝手に情報を送るな」とクレームが寄せられても「あなたは利用規約に同意したでしょ」と突っぱねるかもしれません。
このように「大事なことが書かれている利用規約を読まないでプライバシーを危険にさらす問題」に対して、プライバシー保護の強化を続けるアップルが今回開始したのが、「アプリが取り扱うプライバシーに関する情報を分かりやすくまとめたプライバシーラベルの追加」です。
プライバシーラベルは、ユーザーがApp Storeでアプリをダウンロードする前に、アプリのプライバシー方針を確認できるようにするもの。表示も、難解な文章でズラズラと表示するのではなく、アイコンを交えた簡潔な表示で分かりやすく工夫しているのがポイント。食品のパッケージに記載されている栄養成分表示で「カロリーや炭水化物はどれぐらいかな」「合成保存料や合成着色料は使われていないか」と知りたい情報を素早くチェックできるように、プライバシーまわりの大事な情報をサッとチェックできるようになります。
プライバシーパネルでは、アプリがどのような個人データを収集するのか、収集したデータをどのような目的で利用するのか、といった情報が3つのカテゴリーに分けて記載されています。少しの時間で確認できるので、「購入」のボタンをタップする前にチェックするようにしましょう。
もし、カメラで撮影した写真に楽しいアレンジを加えるアプリなのに、ユーザーの名前やアドレス帳の参照、ユーザーの位置情報の参照、Webサイトの検索履歴の参照など、写真の加工とはまったく関係ない項目が記載されていたら、「このアプリはちょっと怪しい」とダウンロードをやめる判断材料になります。
プライバシーパネルに表示される情報は、アプリを提供するデベロッパーに対して同じ質問に答えてもらったものを掲載しています。回答はあくまで自己申告となりますが、アップルによると不正確な情報が含まれていた場合はデベロッパーに連絡して是正してもらう体制を整えているといいます。
アプリのプライバシー方針の透明性を高める今回の取り組みは、iPhoneやiPad、Apple TV、Macの各App Storeで実施されます。12月15日以降、各アプリでプライバシーパネルの表記が追加されていく予定なので、新規アプリの導入や手持ちのアプリのアップデートの際にチェックしてみてください。