Lakefieldの処理能力は第10世代Coreプロセッサーにかなわず

X1 Foldが採用するCPUのLakefieldは、CoreとAtomのCPUコアを計5コア組み合わせるという特徴的な仕様となっているが、実際の性能はどの程度なのか。実際にベンチマークテストで検証してみた。

まずはPCMark 10の結果だが、第10世代Coreプロセッサー搭載PCなどと比べるとかなり低いスコアとなっている。また、CPUの純粋な処理能力を計測するCINEBENCH R23.200の結果も、それほど伸びてはいない。

第10世代Coreプロセッサーと同等のSunny Coveコアを搭載しているとはいえ、それは1コアのみであり、さすがにCoreプロセッサー同等の性能を求めるのは酷というものだろう。とはいえ、当然ながらAtomベースのPCに比べるとスコアーは大きく上回っており、そこまで非力ということもない。

実際にX1 Foldでテキスト入力やOffice系アプリの利用、Webアクセス、簡単な写真のレタッチ作業などを行ってみたが、性能不足を感じる場面はほとんどなかった。動画編集などは厳しい場面もありそうだが、ビジネス用途や比較的軽めの処理が中心であれば、処理能力に不満を感じる場面は少なそうだ。

3DMarkの結果もそれほど優れているものではない。とはいえ、X1 Foldではゲームを快適にプレイできるほどの3D描画能力が求められることはほぼないと考えられるため、こちらも大きな欠点とはならないだろう。

  • PCMark 10の結果。スコアは第10世代Coreプロセッサー搭載PCと比べるとかなり低い。ただビジネス系アプリであれば実際に使っていて性能不足を感じることはほとんどなかった

  • CINEBENCH R23.200の結果。こちらもスコアは第10世代Coreプロセッサーに及ばない

  • 3DMark 「Night Raid」と「Sky Diver」の結果。いずれも優れるスコアではないが、X1 Foldの利用シーンを考えると大きな問題はないだろう

高負荷時の動作音は、CPUクーラーのファンの動作音は排気口に耳を近づけるとかろうじて聞こえる程度の静かさで、通常利用時にはほぼ無音と言ってもいいほどに静かだ。それでいて本体はほとんど熱くならない。このあたりはLakefieldの省電力性の高さによるものとも言えるが、手に持って使う場合でも熱が気になる場面はほぼないだろう。

次に、内蔵ストレージの速度をCrystalDiskMark 7.0.0hで計測してみたところ、シーケンシャルアクセスでリード1776.33MB/s、ライト854.77MB/sを記録した。PCIe SSDとしてはエントリークラスの速度ではあるが、必要十分な速度であり不満はない。

  • 内蔵ストレージの速度は、PCIe/NVMe SSDとしてエントリークラスながら、必要十分の速度で不満は感じない

バッテリー駆動時間は、公称では最大約11.7時間とされている。今回は実機の試用期間が短かったことと、PCMark 10のバッテリーテストが正常に利用できなかった(3度試して全て正常終了せず)ため計測できなかったが、おそらく標準的な使い方であれば、全画面利用時には公称の半分ほど、画面上にキーボードを置いてミニPCとして利用する場合には、ディスプレイの消費電力が低減するため公称の2/3ほどの駆動時間が期待できるものと考えられる。実際に2時間ほどミニPCとして連続使用してみたが、バッテリーは20%ほど減っただけであった。そのことから、8時間近くは利用できるのではないだろうか。

価格がネックも自慢できる1台になる

X1 Foldは世界初の折りたたみディスプレイ搭載PCだが、不安なく折りたためるのはもちろん、開いた状態での段差のなさやペン入力にも対応するなど、世界初とは思えないほどに完成度が高い。また、開いた状態で大画面タブレットPCとして、折った状態でキーボードを置くとミニクラムシェルPCとして利用できるというように、使い勝手もしっかり練られており、魅力的な製品に仕上がっていると強く感じる。

唯一懸念と言えるのが価格だろう。日本ではキーボードやペンなどフルセットで販売されるとは言え、399,300円から、直販サイトでのEクーポン適用時でも327,426円から(12月7日現在の価格)という価格は、さすがに高いと感じてしまう。ただ、製品の魅力はこの価格を考慮しても決して色あせるものではない。少なくとも、実際に使っていて、これほど楽しく満足できる製品は他にはなく、それだけで十分価格の元がとれるだろう。他にはない圧倒的な魅力を備えるPCを探しているなら、これ以上ない製品と言っていいだろう。