温かい日も多かった2020年の秋ですが、師走の足音も聞こえてきて、筆者が暮らす首都圏でも気温が下り坂に入り始めました。

新型コロナウイルスの感染防止対策として、「部屋の換気」は基本中の基本。とはいえ、窓を開けたときの身に染みる寒さにひるんで、夏場よりも換気がおろそかになってしまいそう…という不安もあります。

そこで、空調機器のダイキンが公開している「上手な換気の方法~住宅編~」を参考にチェックポイントを学びつつ、自宅での換気の仕方を見直してみました。

寒い季節の換気、懸念点は「寒さ」と「光熱費」

  • 冬場の窓開け換気に対する意識調査(ダイキン調べ)

    冬場の窓開け換気に対する意識調査(ダイキン調べ)

「寒い季節の換気」についてダイキンが約500人にアンケートをとったところ、「冬でも窓を開けて換気をしたい」と考えている人は、「どちらかというとしたい」人も含めて75%。手軽な感染対策とあって、多くの人が高い意識を持っているようです。

その一方、冬に窓を開けて換気を行うことにネガティブな回答をした人のうち、約8割は「冷たい空気が入ってきて寒くなる」、約4割は「暖房の電気代が高くなる」ことを理由としていました。寒い時期の光熱費は平時でも高くなりがちなので、換気で気温が下がる分、電気代の不安も大きくなるのはよくわかります。

  • 冬場に窓開け換気をしたくない理由(ダイキン調べ)

    冬場に窓開け換気をしたくない理由(ダイキン調べ)

意外と活用できていない「24時間換気システム」

先ほどのアンケートでは窓を開けて行う換気が前提でしたが、住宅の換気には窓を使うほかに、「24時間換気システム」を使う方法もあります。耳慣れない感じがしますが、壁についている四角いパーツだとか、お風呂の換気扇についているスイッチなどに見覚えはありませんか? 実はそれが24時間換気システムです。

  • 24時間換気システムの換気口やスイッチの例(ダイキン「上手な換気の方法~住宅編~」より)

    24時間換気システムの換気口やスイッチの例(ダイキン「上手な換気の方法~住宅編~」より)

2003年7月以降に建てられた建物には、換気口とそれを使った24時間換気システムの設置が建築基準法で定められています。当時問題になったシックハウス症候群を、換気の義務付けや建材の規制によって防ぐことが目的でした。

時は経ち令和2年。それを新型コロナウイルス対策の換気に活用できるのは不思議な巡り合わせです。あるものを活用しない手はありません。長年住んでいる一戸建てや古いマンションにはついていないことが多いですが、筆者の自宅(築年数の古いマンション)はリフォーム時に後から取り付けてありました。この機会にぜひチェックしてみてください。

ダイキンによると、せっかく24時間換気システムがあっても、外気が入ってきて寒いから換気口を閉じたままにしたり、スイッチをオフにしたりするケースが多いそう。換気口は開けて、24時間換気システムはいつもオンにして使うことが大切です。

冬場の換気、コツは?

では、24時間換気システムを使えたら、それをオンにしていれば大丈夫なのでしょうか? ダイキンの広報担当者に聞いてみたところ、結論から言うと、24時間換気の仕組みは推奨される換気頻度(1時間に5分よりやや短めの換気×2回)に満たない場合もあり、定期的な窓開け換気を併せて行うほうがよいとのことでした。

「24時間換気システムは、室内の空気全体を2時間に1回、換気できる風量を備えている設備です。換気効率の確保が大切ですので、24時間換気を常時稼働することを前提に、定期的な窓開け換気も組み合わせていただくと良いと考えます」(ダイキン広報)

「冬は夏と比べて室内と室外の温度差が大きく、暖かい空気が冷たいところに出ていこうとするので、窓を開けると空気が自然に流れやすくなります。そのため、『1時間に、5分より少し短めの換気を2回』を目安にしましょう」(ダイキン広報)

筆者は「換気したら部屋が冷えるから、暖房を入れる前に空気を入れ替えておこう」と思っていたのですが、実は部屋が温かいときに短めの時間で換気をするほうが効率がよいそうです。

  • 冬のほうが室内外の気温差が大きい

    冬のほうが室内外の気温差が大きい

ダイキンの担当者が解説してくれたように、暖かい空気は外に早く逃げるので、部屋を暖めてから換気を少し短めの時間で行うほうが、結果的に室温も下がりにくいのだとか。

また、寒い部屋を一気に暖めるときに多くの電気を使うため、エアコンのこまめなオンオフは節約のつもりがかえって電気代がかさむ結果になることも……。部屋にいるあいだはエアコンを一度つけたら切らずに、温度調節に気を配るほうが楽で賢い節電になりそうです。

  • エアコンはこまめにオンオフするより、つけっぱなしで温度調節するほうが効率的なことが多い

    エアコンはこまめにオンオフするより、つけっぱなしで温度調節するほうが効率的なことが多い

冬場の空気を考えるときは、温度のほかに「湿度」も重要です。快適な湿度の目安は40~60%なので、温湿度計を置いてチェックするようにすると、感染症対策はもちろんのこと、温かさを感じやすく、過ごしやすい空間を保てます。

  • 湿度と体感温度の関係

    湿度と体感温度の関係

「室内に結露が発生しやすい冬の時期は、窓開け換気が結露の抑制にも役立ちます。結露は湿度が高い空気が冷やされたときに発生します。室内の湿度が高いと、冷たい窓際や空気の対流がない押し入れの奥などでも結露が発生し、カビの原因にもなります。鍋料理の後など、上がり過ぎた湿度を窓開け換気で上手に下げてあげることも工夫のひとつです」(ダイキン広報)

調理のときなど、湿度がぐっと上がるタイミングの対策も必要ながら、やはり冬場は乾燥しやすいもの。加湿器をエアコンの風の通り道に合わせて置いておくと、エアコンの風が遠くまで蒸気を運んでくれるとのことです。逆に、避けたほうがいい置き場所は「窓際」。冷たい窓ガラスに水蒸気が結露してしまうため、せっかく稼働させても部屋の湿度が上がりません。

換気できるエアコン、あるけど今は少数派

季節を問わず冷暖房に活躍するエアコン。必ず室外機がつながっているため、一見すると外の空気と室内の空気を交換し、冷暖房を動かすことで換気にもなっているように感じるかもしれません。

ですが、実際には部屋の中の空気を吸い込み、それを冷やすか温めるかした後に部屋の中に戻しているため、「冷暖房=空気の入れ替え」ではありません。詳しい仕組みはダイキンのWebコンテンツ「空気の学校」で解説されています。

エアコンの仕組みそのものに換気の役割はありませんが、「換気機能を持つエアコン」は存在します。ただし、いま流通しているエアコンの多くには非搭載。ダイキンは換気に対する消費者の意識の高まりを受けて、これまで最上位機種のエアコンにだけ搭載していた「換気機能」を、2021年モデルからはスタンダードモデルなどにも広げ、導入しやすくしています。換気機能の有無はさておき、最近のエアコンは多機能なので、自宅のエアコンの機能を改めて確認してみると思わぬ発見があるかもしれません。

暖房を活用しつつ換気も忘れずに

冬はどうしても寒くて部屋を閉め切りがちですが、24時間換気システムがある場合は活用しつつ、窓を定期的に開けることが感染対策につながることがわかりました。

暖房機器を賢く使うコツは、ダイキンの「エアコン節電情報 冬の暖房編」、自宅での換気の注意点は「上手な換気の方法~住宅編~」にまとまっています。これまで何となくの感覚で換気・暖房をしていた筆者は読んでみて目からウロコがいくつか落ちました。ぜひ参考にしてみてください!