Unboxingでパッケージと実物のみを先行でご紹介したRadeon RX 6800/6800 XTであるが、やっと性能評価の掲載が解禁されたので、さっそくその性能の一端をご紹介したい。
テスト環境、Smart Memory Accessに対応
今回のテスト環境は表1に示す通りだ。まだ性能レビューをお届けできていないRyzen 9 5950Xを利用したのは色々機材繰りの関係である。このレビューの後、Ryzen 9 5950Xの性能レビューに取り掛かる予定なのでご容赦いただきたい。
■表1 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X | |
M/B | ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO | |
BIOS | Version 2402 | |
Memory | CFD W4U3200CM-16G×2 (DDR4-3200 CL22) | |
Video | GeForce RTX 3070 Founder Edition GeForce RTX 3080 Founder Edition |
Radeon RX 6800 Reference Radeon RX 6800 XT Reference |
Driver | GeForce Driver 457.30 WHQL DCH | Radeon Software 20.45.01.12-11.6 Beta |
Storaga | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 2004 Build 19041.572 |
マザーボードは先のRyzen 5000シリーズのレビューと同様にASUSのROG CROSSHAIR VIII HEROを利用した。これはRadeon RX 6000シリーズを利用できるM/B(というか対応BIOS)が限られている関係だ。
これは主にSmart Memory Accessを利用する事に関係する。通常PCI Expressデバイスの場合、そのデバイスの持つメモリのうち256MB分しかCPU側のメモリ空間にマッピング出来ないという制限があるが、Smart Memory Accessを利用することでこの制限を取っ払い、Radeon RX 6000シリーズの16GB分のメモリ全てにCPUからアクセス可能である(Photo01)。これによって性能が5%~11%程度向上する、というのがAMDの説明である(Photo02)。
ただしこのためにはRyzen 5000シリーズとX570チップセット、更にBIOSの対応が必要である。具体的にはBIOS SetupのPCIe Subsystem settingsの中で
- Enable Above 4G Decodingを有効化
- Enable Re-Size BAR Supportを有効化
の2つを行う必要がある。今回のテストではこの2つを有効化し、常にSmart Memory Accessを利用できる状態で測定を行った。なので、例えばこれを無効化したり、あるいは対応していないプラットフォーム(例えばIntel 400シリーズマザーボード)を利用すると、もう少し性能が落ちる可能性がある事に留意されたい。
GPU-ZではRadeon RX 6800(Photo03,04)/6800 XT(Photo05,06)ともに正常に認識された。ちなみにテストであるが、Radeon RX 6800シリーズはDXRT(DirectX Ray Tracing)には対応しているが、当然ながらNVIDIAのDLSSには未対応である。この結果、DXRTとDLSSの両方を前提とした、例えばV-Ray 5 Benchmarkの場合、GeForce RTX 3080は認識されても(Photo07)Radeon RX 6800シリーズは認識されなかった(Photo08)。他にもいくつかDXRTに対応したベンチマークは存在するが、今回は割と限られたテストとなっている。
なお、以下のグラフでは
- RTX 3070:GeForce RTX 3070 Founder Edition
- RTX 3080:GeForce RTX 3070 Founder Edition
- RX 6800:Radeon RX 6800 Reference
- RX 6800XT:Radeon RX 6800 XT Reference
と表記している。またDXRTを利用するシーンにおいては
- RTX 3070(RT):GeForce RTX 3070 Founder Edition。DXRT有効、DLSS無効
- RTX 3080(RT):GeForce RTX 3070 Founder Edition。DXRT有効、DLSS無効
- RX 6800(RT):Radeon RX 6800 Reference。DXRT有効
- RX 6800XT(RT):Radeon RX 6800 XT Reference。DXRT有効
となっている。解像度表記は何時ものごとく
- 2K:1920×1080pixel
- 2.5K:2560×1440pixel
- 3K:3200×1800pixel
- 4K:3840×2160pixel
とさせていただく。
◆3DMark v2.15.7078(グラフ1~6)
3DMark v2.15.7078
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
まず最初は3DMarkから。こちらも矢継ぎ早にVersion Upがあり、この原稿を書いている時点でv2.15.7088がリリースされているのだが、今回はその一つ手前のv2.15.7078で。で、恐らくv2.15.7078とv2.15.7088の差はWildlifeのupdateではないかと思う。何故か知らないが、Radeon RX 6800 XTは3DMark WildLifeを実施すると、ベンチマークが終わって結果を出す直前にクラッシュするという現象が出てスコアが取れなかった。そんなわけで、Radeon RX 6800 XTのみWildLifeのスコアは無しである。
それはともかくとして全体の傾向(グラフ1)を見ると、負荷が軽い(=FireStrikeあたりまで)ケースでは、Radeon RX 6800とGeForce RTX 3080が同スコアというすさまじいものになっている。これを超えると、Radeon RX 6800 XTとGeForce RTX 3080が大体同スコアであり、一方Radeon RX 6800は明確にGeForce RTX 3070よりも上となっている。唯一GeForce RTX 3000系が有利なのはPortRoyalのみである。
この傾向はGraphics Test(グラフ2)もそのまま、というかGraphics Testの結果がOverallにそのまま反映されている格好だ。
当然ながらPhysics/CPU Test(グラフ3)では大きな差はなく、妙にCPUの負荷が高いといった変な癖もない。Combined(グラフ4)では、Sky DiverはCPUネック。FireStrikeはPerformanceだとGeForce RTX 3000系が有利なのに、Extreme/UltraだとRadeon系が有利、という妙な傾向になっている。
さて、グラフ5は新しく追加されたDirectX Ray Tracing Feature Testの結果である。結果はフレームレートであるが、もう見て明らかなようにGeForce RTX 3000系がより高いスコアを出しているのが判る。この傾向はこの後のテストでもしばしばみられた。
最後がPCI Express Feature Test(グラフ6)で、全製品PCI Express Gen 4対応ということもあって、ほぼ同等(強いて言えば若干GeForce RTX 3000系が有利だが、差はわずか)として良いと思う。
◆SuperPosition v1.1(グラフ7~13)
SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
GeForce RTX 3000シリーズのベンチの時と同様、
- Shaders Quality:High
- Texture Quality:High
- Depth of Field:On
- Motion Blue:On
という環境で解像度を変化させながら測定すると同時に、OCAT V1.6を使ってフレームレート変動も取得してみた。
平均フレームレート(グラフ7)で見るとGeForce RTX 3080とRadeon RX 6800 XTが完全に同等。Radeon RX 6800はやや及ばないが、GeForce RTX 3070には明確な差をつけている。最大フレームレート(グラフ8)を見るとGeForce RTX 3000系がやや有利に見えるが、最小フレームレート(グラフ9)ではむしろRadeon RX 6800系が有利、という傾向も面白い。
フレームレート変動(グラフ10~13)では、4Kを除きGeForce RTX 3080とRadeon RX 6800 XTはかなり重なっているし、その4Kでも大きな差という訳ではない。一方Radeon RX 6800はGeForce RTX 3070と殆どグラフが重ならない、という高い性能を示している。
◆Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark(グラフ14~20)
Bright Memory Infinite Ray Tracing Benchmark
FYQD Personal Studio(飛燕群島個人工作室)
https://store.steampowered.com/
中国のある個人が開発しているFPSベースのベンチマーク。Bright Memory Infinite(Bright Memory Episode:2から改称)というゲームそのものはまだ絶賛開発中あるが、これのゲームエンジン(ベースはUnreal Engine 4)を利用した単独のベンチマークとしてSteamで無償配布中である。
起動するとこんな感じ(Photo09)。計測開始を押すと60秒少々のベンチマークを実施、その後結果を表示してくれる(Photo10)。ということで、DXRTを利用したSynthesis Benchmarkとして利用してみた。ちなみにRTX QualityはHigh、DLSSはOffとしている。
という事でまずは結果を見てみる(グラフ14~16)と、最高速はGeForce RTX 3080。Radeon RX 6800 XTは概ねGeForce RTX 3070程度で、Radeon RX 6800は更にその下となっている。平均/最大/最小とも概ねこの傾向は変わらない。ではフレームレート変動(グラフ17~20)は? というと、御覧の様にスパイクが酷くて判断が難しいのだが、それでも(心の眼で)スパイクを取り除いてみると、どの解像度でも上の傾向が再現出来ている事が判る。先の3DMarkのPort RoyalとかDXRT Feature Testもそうだが、DXRTに関してはRadeon RX 6800系はまだ今一歩GeForce RTX 3000系に及ばない感じである。