11月16日、AIアシスタントのSiriを内蔵するアップルのスマートスピーカー「HomePod mini」が発売されます。今回はその音質をチェックしながら、ベストパフォーマンスを引き出す方法を探ってみたいと思います。

  • Siriを搭載するアップルのスマートスピーカー「HomePod mini」を一足早く試してみました。10,800円(税別)という価格も魅力の1つです

片手で持てる「HomePod mini」誕生!

元祖HomePodは、日本では2019年8月に発売されたSiri内蔵スマートスピーカーです。シリーズ第2弾のモデルとなるHomePod miniは、先に発売されたHomePodよりも格段に“ミニ”になっていました。片手で軽々と持ち上げられるほど軽くなっています。

  • タレントがレモンを手にポーズを決めている「ザ・テレビジョン」の表紙風にシャレて撮ってみました。それはともかく、片手で軽々と持てるサイズ感が最高!

バッテリーは内蔵されていないため、本体背面に固定されているケーブルとパッケージに付属する20WのUSBアダプターをつないで給電する必要があります。ケーブルの長さは約1.5mなので、壁のコンセントが近くにない場合は延長ケーブルの用意が必要でしょう。

  • 電源ケーブルはスピーカーの背面に固定されています。パッケージに同梱されているUSBアダプターで給電。ケーブルの長さは約1.5mです

HomePodシリーズを楽しむためにはiOS/iPadOSデバイス、つまりiPhone/iPad/iPod touchのいずれかのデバイスが初期設定のために必要です。後ほど紹介するSiriとの連携も便利になることから、iPhoneのユーザーには特に使い勝手と相性がよいスマートスピーカーであるといえます。

  • Wi-FiとBluetoothをオンにしてiPhoneを近づけると、HomePod miniのペアリングが自動的にスタートします。AirPodsシリーズのように簡単にセットアップができるスマートスピーカーです

どこに置いてもどんな音楽を再生しても安定したパフォーマンスを発揮

HomePod miniのコア技術のひとつに「コンピュテーショナルオーディオ」があります。アップルが独自に開発するSoC(システム化されたICチップ)である「Apple S5」チップによる豊富な演算処理のパフォーマンスがこれを実現しています。

コンピュテーショナルオーディオは、HomePod miniがどんな場所に置かれても、そしてどのようなタイプの音楽を再生した場合でも、搭載するスピーカーユニットやアンプなどハードウェアコンポーネントの実力を最大限に発揮しながら「いつもベストなサウンド」を、ユーザーが設定などを気にすることなく“おまかせ”で再現する技術です。AIアシスタントのSiriとの連携による便利で快適な音楽再生機能の数々も、またコンピュテーショナルオーディオと深い結びつきがあります。

アップルは、HomePod miniが家の中のどんな場所に置いても最高のサウンドが楽しめるように、開発の段階で幾度となくシミュレーションを重ねながら、それぞれに異なる環境でコンピュテーショナルオーディオが真価を発揮できるようにチューニングを練り上げてきました。

  • 部屋のどんな場所に置いても、どんな場所にいても、HomePod miniの「ベストなサウンド」が楽しめます

HomePod miniは、カスタムメイドのフルレンジユニットを本体内部に下向きに配置して、アコースティックウェーブガイドを通過した音がスリット状に配置されたディフューザーにより360度均等に広がる音場を再現します。2基のパッシブラジエーターが低音域を強化することにより、鮮明な定位と立体感が生まれます。

  • HomePod miniの内部構造。カスタムメイドのフルレンジユニット、低音を増強するパッシブラジエーターが搭載されています

この独自の構造によって、スピーカーを置いた部屋のどこにいても臨場感あふれる音を楽しむことができるのですが、それでもやはりスピーカーでいい音を楽しむための「オーディオの定説」に従った置き方を心がけることで、HomePod miniの実力がより鮮やかに引き出せます。

一般的に、オーディオスピーカーでバランスの良い音を楽しむためには「耳の高さに設置」することが肝要と言われています。HomePod miniの場合、先に説明した独自の構造とコンピュテーショナルオーディオの先進技術により、置き場所を決めることにあまり神経質になる必要はありませんが、いくつか注意したいこともあります。例えば、木質系材料を使った床の上に直置きしてしまうと、余計な反射音が生まれて音が歪むことがあります。できれば、しっかりとした素材のテーブルやラックの上にスペースを作って設置することをおすすめします。

とてもスタイリッシュなスピーカーなので、筆者としてはデザインがマッチする細身のフロアスタンドやテーブルトップスタンドなどが欲しい気がします。アップルから純正の「HomePod mini専用スタンド」が発売されたら即買いですね。

  • 写真はボーズのスピーカースタンドですが、こんな感じのスタイリッシュなHomePod mini専用スタンドもあると良いですね

Siriによる音楽再生も速くて正確

Siriによる音声コントロールに対応していることも、HomePod miniの大きな魅力のひとつです。HomePod miniは、内蔵する4基のマイクユニットによるマイクアレイの感度がとても高く、音声認識の精度もHomePodに引けを取らないほど良いと感じます。

実際に、Siriによる音声操作を使って音楽を聴いてみました。例えば「Hey Siri、LiSAの紅蓮華(りさのぐれんげ)を再生して」と頼めば、きびきびと検索を始めて、正しいタイトルを見つけて再生してくれました。

  • 本体の天面にタッチセンサーリモコンを搭載。長押しでSiriが起動します

音声操作に対応する音楽サービスは今のところApple Musicに限られていますが、Amazon Musicなどサードパーティのサービスプロバイダも、アップルが提供する開発ツールを使って現在HomePodシリーズへの対応を進めているそうです。

音声操作にこだわらなければ、Amazon MusicやSpotify、YouTube Musicなどの他社の音楽配信サービスも、iPhoneからAirPlayを使って聴きたい曲をHomePodシリーズにホームネットワークを経由して飛ばして聴けます。

  • Amazon MusicアプリからAirPlay経由でHomePod miniにストリーミングを飛ばして音楽を聴くこともできます

iPhoneとHomePod miniの便利な連携機能

HomePod mini、iPhone、Siriを連携させて便利に使える機能をいくつかピックアップしてみましょう。

HomePod miniのSiriに、Webによる画像検索をお願いしてみます。例えば「Hey Siri、ウェブでチベタンマスティフの画像を検索して」と頼むと、ヒットした複数の候補をiPhoneの画面に表示してくれます。スマートディスプレイのように、音声検索による結果が視覚的な情報により補われる便利な使い方です。

  • ウェブで画像検索をお願いすると、HomePod miniが検索して、結果をiPhoneの画面に表示してくれます

HomePod miniには、アップルの独自開発によるUWB(Ultra Wide Band)対応の無線チップ「U1」が内蔵されています。今後のアップデートにより、同じU1チップを内蔵するiPhone 12/iPhone 11シリーズを近づけると、HomePod miniがApple Musicで再生中の楽曲情報やおすすめの関連作品をiPhoneの画面に表示するレコメンド機能が加わるそうです。音楽を聴く機会がますます増えるでしょう。

ホームアプリからHomePod miniの設定を立ち上げて「パーソナルリクエスト」をオンにすると、ユーザーに届いているiMessageやカレンダーの予定をHomePod miniが音声で読み上げてくれます。

  • パーソナルリクエストをオフにすると、ユーザーのカレンダーやメッセージの内容がうっかり家族の操作で読み上げられることを防げます

パーソナルリクエストにはユーザーの声を識別して、一つ屋根の下に暮らす家族など複数のユーザーがそれぞれに届いているメッセージやカレンダーの予定をHomePod miniに聞けるという機能があります。ただ、本機の発売時点ではまだ英語のみに対応する機能となるため、もし家族にもあまり知られたくない情報がある場合は、ホームアプリからHomePod単位でパーソナルリクエストをオフに設定することができます。

お気に入りの音楽をすべてHomePod miniで聴き直したくなる高音質

筆者は、これまで数多くのスマートスピーカーを試してきましたが、HomePod miniのバランスが良く、クリアでにじみのないサウンドにはとても満足しています。先行発売されているHomePodに負けない迫力を、数段コンパクトになった球体デザインのスピーカーが奏でるサウンドから感じることができます。

  • HomePod miniのサイズを超えた迫力あふれるサウンドを堪能!

ノイズっぽさがなく、サウンドと静寂のコントラスト感がとても鮮明に描き分けられるスピーカーです。ボーカルやピアノ、ギターのメロディは繊細なニュアンスが立体的に再現されるので、特に音楽に意識を集中させなくても、リラックスした状態で彩り鮮やかな音楽が自然と耳から身体の奥に染みこんでいくような不思議な感覚が得られます。四六時中聴いているお気に入りの楽曲をHomePod miniで聴き直すと、今まで気が付かなかった楽器のアレンジに気が付くことができたり、ボーカルがより多彩で複雑な表情の変化を見せてくれます。

音の芯が強くしなやかなサウンドなので、スピーカーのボリュームを上げてもサウンドが破綻しません。反対に、夜中に音量を下げて聴いた場合でも、オーケストラやジャズのビッグバンドの演奏による雄大なスケール感に触れることができました。HomePod miniを導入してから、筆者はスピーカーで音楽を聴く時間が前よりも長くなったように思います。

2台のHomePod miniによるステレオ再生に対応。圧巻のスケール感

HomePod miniのサウンドは、コンピュテーショナルオーディオのおかげで、音楽のジャンルにかかわらず、真に迫るボーカル、楽器の音のリアリティと情感にも富んでいます。

2台のHomePod miniを用意すると、それぞれに左右のオーディオチャンネルを設定して、さらに立体感あふれる音場を再現できるステレオ再生が楽しめます。もちろん、Siriによる音声コントロールもそのまま使えます。2台のスピーカーのステレオペアリングは、iOSのホームアプリから数ステップの設定で完了します。ペアリングはいつでも設定・解除ができるので、ステレオ再生が不要な場合は、例えばリビングと少し離れたキッチンにスピーカーを1台ずつ置いて、料理をしながらリビングでくつろぐ家族と同じ音楽を聴くこともできます。

  • 2台のHomePod miniを用意すれば、臨場感あふれるステレオ再生を満喫することもできます!

さらにApple TV 4Kがあれば、テレビに内蔵されているスピーカーよりも迫力満点のサウンドがHomePod miniで楽しめます。先にホームアプリでHomePod miniをステレオペアにして、Apple TV 4Kの音声出力先をステレオペアに指定します。

  • Apple TV 4Kと楽しむ映画やドラマも、HomePod miniがあればさらにリッチなサウンドとともに楽しめます

最新のソフトウェアバージョン14.2にアップデートしたHomePodと、tvOS 14.2を投入したApple TV 4Kを組み合わせると、Apple TV+の映像配信サービスなどで公開されているドルビーアトモス音声の映画・ドラマなどのコンテンツが没入感あふれる立体音声とともに楽しめるようになりました。こちらの機能はHomePod miniでは対応していませんが、HomePodをお持ちの方は1台で使える機能なのでおすすめです。

HomePod miniを中心にスマートホームもさらに便利に

発売前のHomePod miniをしばらく使い込む機会を得て、筆者が発見したことを最後にまとめておきたいと思います。

筆者はHomePodも使っていますが、サイズがそれなりにあるスマートスピーカーなので、音楽を聴く時にはリビングルームのラックの上などに置いています。HomePod miniは、デスクトップの空きスペースをコンパクトに使えるうえ、小音量でも豊かなリスニング感が得られるので、仕事机の手元近くに1台を置いています。

  • HomePod miniは置き場所を取らないので、仕事机の手元を定位置ににして楽しんでいます

HomePodとの距離が近くなると、iPhoneで再生中のオーディオコンテンツをHomePodにiPhoneを近づけるだけで引き継げる「ハンドオフ」の機能がとても便利であることに改めて気が付きました。Siriの音声操作が苦手という人も、iPhoneで聴きたい楽曲を選んで、再生をスタートしてからHomePod miniに近づけると、意中の楽曲を簡単にスピーカーで再生できるのでおすすめです。筆者が試した限りでは、TuneInラジオアプリもこの機能が使えるので、音声操作だけでは選局が難しい海外のインターネットラジオのステーションを聴く時に重宝しています。

  • HomePod miniが手元近くにあると、iPhoneで聴きたい曲やラジオステーションを選んでハンドオフできる機能がとても便利です

もうひとつは、HomePodシリーズで音声メッセージが送り合える「インターコム」です。筆者の家は広くないので、離れた場所にいる家族をわざわざHomePodで呼びかけなくても…と思っていましたが、iPhoneやApple Watchから短いひとこと音声メッセージを入力して自宅にいる家族に伝えることもできるので、意外な場面で役に立ちそうです。

  • インターコムは、短い音声メッセージをHomePodやiPhone、Apple Watchへ伝えることもできる新機能です

満足のサウンド、多機能で使い勝手も良好なスマートスピーカーのHomePod miniが10,800円(税別)で買えることには、ひたすら驚くほかありません。iPhoneのユーザーならば、本機を試してみない手はないと思います。筆者も、これからHomeKitに対応するスマート家電を買いそろえていくほどに、HomePod miniの満足度がさらに高まるのではないかと期待しています。